13.さすがにもう驚きませんよ?
ミセスブラウンに手伝ってもらい、ドレスを着る。
胸元と背中が大きく開いたデザイン。
ホルターネックになっているからドレスが落ちる心配は無さそうだけど、ちょっとセクシーすぎるんじゃない?
レースで作られたホルターネックは繊細で小さく可愛らしい花でできていて、綺麗だけど何となく心細い。
君セナの新入生歓迎ダンスパーティは他のキャラとの遭遇イベントがあり、違うクラスの攻略対象者や生徒会副会長、先生が出てくる。
好感度を貯めていれば、アレフ様との会話イベントもある。
リリアーナは画面にもストーリーにでも出ないし、どんなドレスを着ていたかも語られてはいなかった。
まさか、こんなに胸元が開いたドレスだなんて。
ドレスはアレフ様の瞳の色を意識して作ったのだろう、ラピスラズリのような青いAライン。
同じく青いオーガンジーが幾重にも重なり、クルっと回るとふわっとドレスの裾が広がる。
所々、スワロフスキーのようなビジューが付けられていて、キラキラと光った。
もしかしたら本物の宝石かもしれない。
ドレスと同じ色の手袋とハイヒール。
私の瞳の色のエメラルドのネックレスとピアス。
セクシーに思えたドレスはスタイルの良いリリアーナが着ると、様になっていた。
アレフ様の瞳の色をしたドレスを着て、他の方と踊るなんてできない。
私はどうしてもアレフ様とダンスを踊りたい。
「とても、お似合いでございます」
「ありがとう、ミセスブラウン。シャネルエ様、ブルガリエ様、とても素敵なドレスをお仕立ていただきありがとうございます」
私がお辞儀をすると、まんざらでもないように2人は、
「そうね。さすが私たちよね、ブルガリエ」
「当然よ。ねぇ、シャネルエ」
2人は私の姿より、ドレスの出来栄えに満足しているようにも見えた。
「じゃ、私たち行くわね。さ、行きましょう、ブルガリエ」
「ええ。ごきげんよう、人間」
最後に笑って言うと、黒い鞄を持って窓から飛んで行ってしまった。
「ぅえ? ご、ごきげんよう!」
聞こえたのかな?
窓に駆け寄ると、すぐに2人の姿は小さくなって見えなくなった。
後ろから、ミセスブラウンの嘆き声が聞こえる。
「ミセスブラウン。さっきの小さい子たちは何だったの? 人間人間って言ってたけど」
「まぁ、お忘れですか? マジカルシュシュのオーナー兼デザイナーの双子の妖精族ですよ」
お忘れって言うか、記憶にないし。
ん?
妖精?
「今、妖精って言った?」
ミセスブラウンはきょとんとして。
「妖精と言いましたが、それが何か?」
「妖精がいるの?!」
昨日から何度見ただろうか、ミセスブラウンが呆れた顔で言う。
「先程、いらしたじゃないですか」
「そ、そうよね」
ぶすっとふてくされたような顔をした10歳くらいの少女たち。
背中に羽は付いていなかったから、子供としか見えない2人。
最後に見せた笑顔はとても可愛らしかったけど、妖精だったのか。
君セナには登場しない人物だ。
そもそも妖精自体、存在しない。
やはり、ここは君セナの世界じゃないのだろうか?
鏡に映る自分を見る。
私なのに自分では無い、自分の姿。
ゲームで堂々としていた姿とも違う。
ラピスラズリのドレスを身に纏い、綺麗だが憂いを帯びた表情は弱弱しく儚げに映っていた。
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