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エクリプス  作者: 元蔵
第1章 全身全霊をかけてあなたに恋します
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ぷろろーぐ

 必死に勉強をして志望校に合格した私たちに、自然からのプレゼントがあるらしい。

 ようやく桜の蕾も膨らみ、友達もできて高校生活に慣れ始めた今日、数百年に一度あるかないかと言われる皆既日食が起こるんだって。

 別に、私たちにだけって訳じゃないじゃない、と思ったのは内緒。

 その時間は全ての学年で皆既日食を見ようと言う校長の鶴の一声で自習になったのだから。

 授業が無いのは、嬉しいよね。



「ねぇ。和香? 」


「うん」



 私、杉本和香は太陽を見たまま言う。



「太陽、全然変わんないね」


「ホントだねぇ。退屈だわ」



 太陽はようやく半分くらい隠れてきた所だ。



「TVみたいに早送りしてくれればいいのに」


「あれくらいの速さだったら感動するよね」



 ずっと見ていると変化しているのか疑問に思えてくる。

 笑いながら教室を見渡すと、ほとんどの生徒が近くの席同士で話をしていて、太陽を見ているものはほぼ、いなかった。

 隣に座る男子たちは3人でゲームをしているし。



「ふむ。私たちもゲームでもしますか。ねぇ、上原。それワールド何?」


「5だけど、石川もMSGやってるのか?」


「マジ?同じなんだけど!私たちも一緒に行っていい?」



 舞は携帯を取り出すと、さっそくゲームを起動させている。



「おう、いいよな?このクエ、すぐ終わらすぞ」


「OK」


「先にフレ登録しようぜ」


「ああ、それいいな」



 なんだろう?

 すごく盛り上がっちゃってるよ。



「ちょっと、スゴイ。みんなゼスプリ装備じゃない。課金したの?」


「いや、アップデートに合わせてチケット集めてたんだ。出たのはラッキーだったよ」



 舞が上原の携帯画面を見ながら話しているためか、上原は舞が画面を見やすいように少し携帯を舞の方に近付けている。

 その状態で器用に操作しているみたい。


 Magic Swordマジックソードゲート Gate、略してMSGは携帯でできるMMORPGだ。

 一昨日、舞に誘われて私も始めたんだけど、まだ操作方法に慣れず、クエストが全然進まなかったのよね。

 舞に連れて行かれたらクリアできるけれど、ストーリーとか飛ばして、戦闘になったら舞がスパパーンと敵を倒して終わり。


 面白いとはあまり思えなかった。


 MSGよりも先に始めてた乙女ゲーム、君に送る小夜曲~セレナーデ~にハマっていたからって言うのもあるんだけど。

 私もやるのかな?

 みんなが話している武器やスキルの名前が何を指しているかもわかんないよ。

 私一人、蚊帳の外だなぁ。

 そういえば日食はどうなったんだろう?

 教室が大分暗くなった気がして、窓の外を見る。



 すると、丁度、太陽がスッポリと月に隠れるところだった。


 うわぁ。

 皆既日食って本当に真っ暗になるんだね。

 誰もわからなくなるくらい暗く、シーンと静まり返って、真っ暗な時間がとても長く感じる。



「石川の装備してる武器もスゲーな。コレで課金無しかよ」


「レインボーワンドか。いいなぁ」


「俺は杉本が持ってると言う、ゴールデンキングロッドが早く見てみたいな」



 舞たちの話の内容から、私もやることが決定事項なのね。



「和香。和香もMSG用意して。昨日の所、上原たちと一緒に行くよ」



 すぐ近くにいるハズなのに、舞の声がどこか遠くから聞こえるよう。



「ねぇ。今、丁度太陽が隠れてるよ」



 窓の外、太陽があった場所を見続けながら言った私の言葉は彼女たちに届いていたのかどうか。

 少しずつ太陽の姿が現れる。

 その眩しさに、目を閉じた私には確認することはできなかった。


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