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遠足ですよ! 1

「由乃ちゃん。今度はあれ乗るですの!」奈菜ちゃんの指す先には、ギャラクシーマウンテンという室内型のジェットコースターがあった。

「さっ、さっき、ビッグスパークマウンテンに乗ったばかりじゃない。さすがに2回連続ジェットコースターはしんどいよ」別に恐くなんてないんだからね! ツンデレ気味に言っておくよ。


 

 4月も中旬に也、僕の学校ではオリエンテーションという建前の遠足がある。

 この時期にあるのは、新しいクラスに早く馴染ませるのが目的だろう。 

 そんな、学校側の思惑がどうであれ、都内近郊にある遊園地、夢のねずみ王国に遊びに来れるのだから生徒的にはラッキーとしか言いようが無い。

 現在は、奈菜ちゃん、玲、京香さんの4人で回っている最中だ。

「それだったらさ、空いているソロモンの海賊にしないか? 3人で座れそうだしな!」

 玲が僕が逡巡したのを機に代案を示してくれた。

 その話にすぐ京香さんが食いつく。

「何さり気なく私を除け者にしてるのよ! 私、由乃さん、奈菜さんの3人で座って、玲は私達が楽しむ様を後ろから恨めしそうに見てればいいんじゃない?」

「出たよ。だから京香は千利休って言われるんだ。恐い恐い」

「はぁ? なんでそんな戦国時代の偉人の名が出てくるのよ!」

 うーん。京香さんは気付かないか。僕は理解してしまったけど。

 千利休、茶道、サドっていう例えだよね。

「京香ちゃんは、お茶が好きなのですの?」

 奈菜ちゃんも判らないのかぁ。

「うわ、2人共この高度な例えに気付かないかぁ。由乃はどうなんだ?」

「あ、うん。言いたいことは判るんだけど、内容は言わないほうがいいかなぁと思うよ」

「さすがアタシの嫁だ。2人とはオツムの出来が違うよな」

「むぅー。奈菜は馬鹿じゃないですの!」

「そうよね。由乃さんは天然だから気付くのよ!」

 酷い言われような気がする。

「天然いいじゃないか。なんか由乃っぽいだろ? こう抜けてる感じが思わず襲いたくなるんだよな!」

 更に悪化した気がする。

「由乃ちゃんは天然じゃないですの! ほわわーんですの!」

 ……最悪を通り越して、意味不明になったよ! 

「それなんだ? さっぱり判らないんだが……」

「さすがに私も無理だわ」

「むむ、うさぴょんと京香ちゃんはまだまだですの。天然に2を掛けて、優しさと可愛さを足したのが、ほわわんですの!」

 結局、天然なんじゃん! このままだと不味いな。元々玲が変なこと言った為にこうなったんだ。最初に戻すことにしよう。

「はいはい、わたしのことはいいからね。玲が言った千利休というのはね。茶道、サドウ、サドとなって、京香さんがサドって意味なんだよ」

「あああ、由乃の裏切り者。なんでばらすんだよ!」

 そりゃ、僕の悪口を言うからだよ!

「玲の考えそうなことよね……無駄に身長ばっかり伸びるから脳の発達が悪いのかしら」

 京香さんがヤレヤレと呆れたように首を振っている。

「アタシのナイスバディに嫉妬か? しょせん海抜0メートルの胸だからな、気持ちは判らんでもないぞ?」

「はぁ? 私の何処が胸が無いって言うのよ。少なくても奈菜さんよりはあるわ!」

「奈菜は、京香ちゃんよりはあると思うですの!」

 乙女の意地を掛けた戦いとでもいうのだろうか? 聖戦が始まりそうな雰囲気がある。

 それを止めたのが玲の言葉だった。

「虚しい争いだな。ベル○ンの壁とジェ○コの壁、どっちでも大差ないだろうに。せめて由乃ぐらいの揉みたくなるような胸になってから言えよ」

「なんですって!」

「酷いですの!]         

 2人は同時に玲を非難した後、僕の胸をジーッと見ている。

 ちょっと恐い……思わず胸を腕で組むように隠してしまう。

「わっ、わたしは小さい方だと思うよ。奈菜ちゃん達と同類だって!」

「それは、勝利者の余裕か、し、ら?」

「由乃ちゃん。ちょっと胸触らせるですの!」

 2人の目が据わってます。僕悪いこと言ってないよね? むしろ、謙虚な対応じゃないだろうか!

「ええと、ソロモンの海賊だっけ? さっさと行こうか!」

「おお、由乃積極的だな! やっとアタシの良さに気付いたのか!」

 玲の腕を取って、36計逃げるがなんとやらを実行すことにした。

 この際、玲が変なこと言ってるけど気にしない。

 今の奈菜ちゃんと京香さんよりは玲の方が安全な気がするしね。

「待つですの!」「逃げるなぁ!」背後からは、2人の声が聞こえていた。


 

 ソロモンの海賊は、大きなボートのような座席に乗り、水上を決められたコースに沿いながら走っていくアトラクションである。

 座席も初め危惧したより大きく、京香さん、玲、僕、奈菜ちゃんの順に座ってもまだ余裕がある程で、それが数列続いて一つのボートの中に納まっていた。

「もうすぐ始まるですの♪」はしゃぐ奈菜ちゃん。

「でも、これって普通に左右で動く人形とかを見るものだろ。ちょっと暇なんじゃね」

「あんたが言いだしっぺでしょうが」ポカリと京香さんが玲の頭を叩く。

「京香って本当に暴力性だよな。そんなに、女王様って言われたいのか? 変態は恐いわ」

「なんですって!」

「京香さーん。周り、周り」

 僕の忠告に京香さんは慌てて辺りを見回すと口を噤んで顔を赤くして俯いてしまった。

 他の人達から笑われてるのに気付いたようだ。玲が絡むといつも京香さんはこうなるね。

「奈菜は、こういうのも好きですの。色々お話しをしながら進むのも楽しいですの」

「ああ、そう考えればいいのか。ジェットコースターだと余裕ないしな」

「わたしもコッチの方が好きだよ」別にジェットコースターが恐いからじゃないんだからね! 繰り返して言っておくよ!


 

 乗客がある程度揃ったところで、ボートがスタートした。

 速度はそこそこ在り、自転車をのんびり漕ぐぐらいのスピードは出て居ると思う。

 効果音と共に、ソロモンの海賊の歴史とお宝等が順次掲示されていく。

 それをあーだこーだ話しながら順調に進んでいた。

 此処までの部分で問題があったとすれば、玲が、「あのお宝取れないかな?」とか言い出したぐらいだろう。それは容赦なく一蹴したけどね。実際取ろうとしたら水の中にダイブしただろうから。

 ソロモンの海賊の内容も段々と物騒になってきて、戦闘シーンが始まり大砲や剣戟の音が内部に響いていた。反響する仕組みが緊張感を煽るようになってるみたいだ。

 そして、遂に海賊が敗れてしまう。それに伴ない平和な風景にソロモンの海が変化した。

 此処まで来ると、もう終わりは近いのだろう。

 そう考えながら真っ暗な洞窟を潜った時だった。

 急にガタンと音がして、ボートが落下したのだ。

 え! 身体が少し舞い上がった。 

「きゃーーーー!」無意識に隣の人物にしがみついていた。

 落下時間は短く、10秒も無かった気がする。

 だが油断していたところに、これは耐えれなかったのだ。

 明るくなった今の状態は、僕に抱きつかれている、玲。先程の悲鳴の犯人を捜している、奈菜ちゃんと京香さん。それを後ろから見ている他のお客さんになっていた。

 さり気なく玲から身体を離し、「こほん」咳払いをする。

「いやー。結構短かったねぇ。あははははは」乾いた笑いが出てしまう。

「由乃? 恐かったらもっと抱きついててもいいんだぞ?」玲の鼻息が荒い。

「由乃ちゃんから凄い悲鳴が聞こえたですの。今の恐かったですの?」

「ぐふふ、由乃さんってこういうの苦手だったのね」

「み、みんなどうしたの? き、急に変だよ?」

「いやー、由乃の弱点を見つけたなぁ」

「どうせなら奈菜に抱きついて欲しいですの!」

「勿論私でも良いわよ~」

 くぅ! 不覚だぁ。

 そうだよ、恐いんだよ!

 だって、ジェットコースターとか落下系の乗り物なんて乗ったこと無かったんだから!

 僕が遊園地に連れて来てもらったのなんて、母さんが生きていた時だけ。

 その後は一度も行ってないしね。あの当時なんて子供過ぎてジェットコースターは入場不可だったんだよ。由乃は何度か来てたみたいだけど、僕は無いの!

 恐くて当然なんだよ。くそー。ビックスパークマウンテンをなんとか我慢して上手く誤魔化せたと思ってたのに、ソロモンの海賊めぇ! 最後にこんなドッキリを仕組むなんて、製作した奴連れてこいって感じだ!

「ぷるぷる震えてた由乃、可愛かったよなぁ」

「震えてないから!」

「なんていうの? ウサギみたいな感じ?」

「う、羨ましいですの!」

「まぁ、そんな慌てなくても大丈夫よ。まだねずみ王国には、2つのジェットコースターがあるでしょ? そこで由乃さんの恐がる姿は好きなだけみれるじゃない」

 やっぱり京香さんってサドだ!

「別にこ、恐くないよ? でも今日はジェットコースターは乗り疲れたかな。うん」

 もう乗りたくありません。勘弁してください。

 あんなの何が楽しいんだ! 拷問の間違いじゃないの?

「あ、とりあえず降りるですの」奈菜ちゃんの言うように、ボートが終着地点に到着した。

 た、助かった! なんとかこれで話が流れたよ……

 奈菜ちゃんが手摺に捕まって、ボートから出口の岸に上がる。

 その後に、僕、玲、京香さんと続く。

 そのまま道なりに外に出ると太陽が眩しく感じた。

 室内型アトラクションの後は、この差が顕著にでるよね。

 やれやれと思った瞬間、玲と奈菜ちゃんに両腕を掴まれた。

「な、何?」危険アンテナがすごい勢いで反応してるんだけど。

「次行く処、どっちのジェットコースターがいいですの?」

 どっちも嫌だよ! というよりまだ続いてたの!

「そ、その前に、お昼も近いしご飯にしない?」

「そうかぁ?」玲が僕の腕を掴んだまま、器用に片手でスマフォを見て確認している。

「ああ、11時40分かぁ。確かに飯食うのもありか」

 危なかった……   

「それなら、食べてから行くことにしましょうか? 由乃さん逃げようなんて無駄よ」京香さん見逃してよ……ううう。

 僕は男の子、こんなことじゃ負けない……

 今女じゃんとか言う人は、ブラッディ○クライドです!

2部構成です!


たぶん……

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