友達が増えました
放課後になり、長い一日の試験から開放される。
僕の出来は、結構自信がある。
この見栄王にぬかりはないのだ。
此処で出した点で、クラスの評価に大いに差がでることは間違いない。
頑張らないと駄目でしょ。
かといって、別に学年1位を目指している訳ではない。
欲を言えば5位内に入れれば御の字だろう。
学年1位でスポーツ万能、容姿もよくて、性格も良い?
そんなの完璧過ぎて気持ち悪いでしょ? ある程度隙がある方が親しみやすさが出るってものなのさ。
ちなみに僕は昔から空手をやっていたので、スポーツは得意な方だ。
なんせ、母さん譲りの女顔だったからね。からかってくる奴は後を絶えなかった。
言って駄目ならということで、行動で示すのに格闘技が丁度良かったのだ。
さて、とりあえず帰るかと思っていると、玲に呼び止められた。
「おーい、由乃。折角だし、今からどこか遊びいこうぜ?」
この後は確かに暇だけど、玲と2人というのは危険な気がする。
「うん、別に構わないけど、2人で行くの?」
「由乃がどうしてもって言うなら、アタシは全然構わないが、一応、奈菜と京香も行く予定」
奈菜ちゃんは判るけど、京香って……思い出した。
今日一日、名前と顔を覚えていただけのことはある。
本庄 京香さん。
眼鏡を掛けた優等生という感じで、玲とあまり付き合いがなさそうな娘だ。しかし、ここであまり考えるのは良そう。玲で懲りたよ!
「奈菜ちゃんと、本庄さんもだね。了解」
「わたしまだ本庄さんと親しくないし、折角だし紹介して貰えないかな?」
「ああ、そうなんだ。ちょっと待って」
玲はそう言って後方の席に向かって歩いて行くと、本庄さんの腕を引っ張って戻ってきた。
何も話した気配がなかったのは何故だろう?
「ちょっと玲なんなのよ。いきなり!」
やっぱり、そうなるよね。
「由乃が京香を紹介してくれっていうからさ、連れてきた」
「はぁ? なんで先にそういう事言わないの! あなた本当に脳が腐ってるわよね」
「お前失礼なこというな。アタシの由乃が誤解したらどうするんだ!」
アタシのじゃないよぉ。心の中で反論してみる。
「もう、いいわ。玲と話してると先に進まないから」
本庄さんが、玲から視線を僕に向けた。
「あ、ごめんなささい。本庄さん。今から一緒に遊びに行くって言うので、紹介して欲しいなぁってわたしが頼んだの」
「いえいえ、上杉さんが気にすることはないわ。玲って昔っからこうなのよ。それと、玲だけ名前で、私が苗字というのは負けた気がするから、私も名前の京香って呼んでくれると嬉しいわ」
「京香さんだね。それならわたしのことも由乃って呼んで。それと、昔からって2人はそんなに長くからの知り合いなの?」
京香さんが深い溜息を吐いた。
「ほんと、腐れ縁って感じで小学校からずっとなのよ。これのお守りは疲れるのよね」
「なるほど、幼馴染なんだ」
「こればっかりは神様の悪意を感じるわ」
「ちょっと京香、”これ”とか酷くね? 京香が苛められてるの何度助けてやったと思ってるんだ。その恩を忘れたというのか?」
「あーもー。そんなこと今言わないでよ!」
赤くなって反論する京香さんを見ると、本当に親しいのが判る。
幼馴染かぁ、宏隆の奴どうしてるかな?
僕にも、幼馴染と言える親友がいた。しかし、由乃となったのだから、そんな歴史が残ってる訳がない。
この世界にも存在するけど、ただの御近所さんというだけだった。
何故か由乃の初恋の相手でもある。
きっと、波長が合うんだろな。じゃなかったら男女で同じ相手に好意を持つとは思えないし。
この後、この会話が聞こえたのだろう、男子にも一緒に行きたいと嘆願される。
しかし、玲の「はぁ? 野郎なんてお断りに決まってるだろうが!」という声で瞬殺された。
一応僕はフォローを入れたよ。
「ごめんね。又今度いこうね」みたいな感じで。
男子の好感度を捨てるわけにはいかないしね。
たった一言で男子の機嫌が直ったのは、さすがこの見た目って奴だね。
美少女お得だ。




