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輝と由乃

 何故そこまでヒロインに拘るか、大きな理由わけと小さな理由わけがある。

 それは、僕の秘密にも関係していることだ。

 この話をするなら、僕の生い立ちから説明するのが早いだろう。



 僕には双子の妹が居た。

 居たというのは、生まれた時、僕だけしか生存していなかったからだ。  

 6月にちなんで、僕がユピテルの輝、妹がユノの由乃と名付けられる筈だった。

 そのことは、僕の中でずっと負い目に感じていた。

 同じ時間、母さんのお腹の中で過ごしたのに、僕だけが助かったのだ……

 由乃に申し訳ない気持ちが沸いても当然だろう。

 更に不幸は重なるもので、母さんも8歳になる頃には亡くなってしまった。

 元々体が丈夫ではなかったし、医者には20歳まで生きれるかどうかという状況だったらしい。

 無くなった時の享年が30歳。

 母さんの母である、僕のお祖母さんからは、輝と僕の父さん、上杉ウエスギ 睦月ムツキのお陰で長生き出来たと泣きながら感謝された。

 僕は何もしてなかったと思う。でもそう言ってくれるお祖母さんに釣られて泣いてしまった記憶がある。

 そして、此処まではそういうモノだったと考えて欲しい。



 今から一ヶ月程前のこと。



 ――いつも通りの生活をし、布団に入って暫く熟睡している時だった。

 頭の中に直接映像を刷り込まれるような感覚がしたのだ。

 夢というよりは、より現実リアルに近い感じだった気がする。

 そして、その夢の中には何故か僕が存在しない。

 代わりといってはなんだが、死んだ筈の由乃が登場した。

 その内容は、由乃の生い立ちをダイジェストにしたような話だ。

 双子だけあって、顔立ちは似ていた。

 僕から筋肉を取って、縮めて女の子らしくした感じだろうか。

 記憶の中の母さんにソックリとも言える。

 その夢の内容は濃く、由乃の感情までトレースしたみたいに僕の気持ちにも干渉してくる。

 由乃の歴史でも、やはり母さんは8歳の頃に亡くなっていた。

 そのシーンを見たときは、僕も涙を流していたと思う。

 心の奥底に強く残っていたモノが、呼び起こされたのかもしれない。

 小学校、中学校と時間は流れ、高校に入学する前まで来た。

 何故かそこから、時計の針が止まったみたいに進まない。

 そして、プツッっと映像が途切れ、夢? は終わってしまったのだ。

 そのまま、意識を失うかのように思考がシャットダウンされた。


 

 ――朝になり、目が覚めたら知らない部屋に居た。



 いや、それは語弊があるかもしれない。

 知っている部屋だが、見慣れないモノが多過ぎるのだ。

 鏡台に洋服ダンス。部屋の色彩が全体的にパステル調の明るい色になっている。

 そう、それは夢で見ていた由乃の部屋そのものと言えた。

 嫌な予感がする。

 というよりも、既に脳は理解していると言っても過言ではない。

 先程チラリと写った姿が全てを語っていたのだから。

 その時は、見て見ないフリをしたようなものだった。

「まぁ、あれだ! 寝よう!」

 入学試験後の疲れに違いない。

 ストレスの可能性もある……

 いや、まだ夢の中ってこともあるだろう。 

 うん。

 再び、ベットの中に潜り込む。



 数分後。

「寝れるか!」

 こんな状況で、素直に寝れる訳が無い。

 顔や、体を触ってみると、確かな実感を伴なっている。

 何が起きたのか、さっぱり判らない。

 しかし、一つ言えることは、由乃になったということだけはハッキリしていた。


 

 ――という感じで、それから現在まで元の体に戻れていません!

 理由も原因も謎のまま。しかし、由乃の生きてきた記憶はある。

 生活するには何も不自由は無かった。

 いや、男だったときよりも快適になった気さえする。

 あの父さん。僕と由乃では扱いが違うのだ。

 それは、小遣いを例にすると判りやすいかもしれない。

 僕の小遣いが月@000円、それに対し、由乃の小遣いは@@000円である。

 どう見ても桁が違う! アカラサマ過ぎないかと思う。

 とまぁ、愚痴はそこまでにしておく。

 まだ、本題について話してないのだから。

 何故、学園のヒロインになりたいか。

 それは、由乃の夢だからである。

 亡くなった母さん、上杉ウエスギ 弥生ヤヨイは、白桜学園付属高校に在籍中、

全女子憧れのフレイヤに、3年連続選出された栄誉の持ち主なのだ。


 

 フレイヤとは10月にある生徒会選挙と同日に行われる、全生徒投票で決まる学園一の女生徒に与えられる称号だ。

 同内容で男子にはフレイという称号が与えられる。


 

 母さんの娘なら、同じ高校に入学し、自分もと思っても仕方ないだろう。

 だが由乃は、僕と違い大人しい性格で、目立つのが苦手ときた。

 折角美少女に生まれたのに、なるべく隠すようにしていたぐらいだから。

 まぁ、この件に関しては父さんも悪いところがあると思う。

 娘が地味な格好してた方が、余計な虫がつかないと喜んでたぐらいだし。

 でも、そんな妹がフレイヤになるのは不可能に近い。

 そこで、由乃になったのだから、兄がその儚い夢を叶えてやろうという訳さ。

 元に戻れた時、由乃が喜んだら最高でしょ?

 ちなみに、僕はそんなことこれっぽっちも思ってなかったよ。

 だって、男だもん。別の高校に入学する予定だったぐらいだし。

 ここまでが小さな理由の方。

 大きい理由は、ようは僕は見栄王なのだ。

 キャーとか素敵みたいに、誉めらりたりすることが大好きなのである。

 なんていうの快感? みたいな感じ?

 つまり、由乃の夢と実益が合った、と言えるかもしれない。

 と言う訳で目指せ学園のヒロイン。フレイヤという訳なのだ!

 そっちの方が小さいだろ! みたいなこと言う人は嫌いです。

 

 

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