プロローグ
新小説、学園のヒロインにボクがなる! を投稿してみました。
少し、主人公が捻くれてますが、楽しんでいただけると幸いです。
4月。
桜が舞う並木道を、僕は景色を眺めながら歩いている。
時折花びらが、クリーム色のセーラー服に落ち、その匂いがどこか甘酸っぱく、切ない感じにさせるのは、この花の魔法みたいなものだろうか。
腰まで届く黒髪は、毛先の方をリボンで人括りにし、僕が歩く度に微かな質感を持って弾んでいた。
桜の花びらはその髪の毛の上にも舞い落り、軽く払いながら落としていく。
現在向かっているのは、僕の通っている白桜学園付属高校である。
生徒総数900人程の、某有名私大の付属校って奴だ。
桜吹雪の中を進んでいると、
「おはよう。上杉さん♪」背後から若い男の声で呼び掛けられた。
僕は誰だろうと振り返る。その際に背中のリボンが揺れた。
「あ、おはよー♪」……ええと……その……名前が出てこない!
実は、まだ入学して2日目なのだ。
クラスメイトとは判ったけど、顔と名前が合致しない。
そして、相手は名前を呼んでくれている。
不味い……僕の好感度が!
「今日は暖かいねぇ」とりあえず時間稼ぎする。
「そだね。こんな日はお昼寝とかすると気持ちよさそうだ」
「あはは、わたしもしたいかも」
「やっぱり? 上杉さんとは気が合いそうだね♪」
「そうかもしれないねぇ♪」
そう言うと、急に男子の表情が緩んだ。
これはアレだね! 名前とか気にする必要無かったみたい。
また1人虜にするとは――我ながら罪作りだぜ♪
僕の見た目は、1クラス40人居れば、39人はそうと言うぐらいの美少女だろう。
残り1人ぐらいは捻くれた人がいるものなのです。
長いまつ毛、少し垂れ目がちだけど、優しく見える瞳。ツンと尖った鼻に穂のかに彩るピンク色の唇。それらのパーツがパランす良く配置されている小さな顔。適度に出るところは出、引っ込むところは引っ込んでいる体。そして、艶のある滑らかな長い髪。
身長もそれ程大きく無い為、男子受けすること間違いないだろう。
「上杉さん。そういえばどんな部活に入るか決めた?」
むむ――邪な思惑を感じる。ミエミエだなぁ。
「うーん。まだ決めてないよ。今度ある、新入生歓迎会を見て決めようと思ってる」
「ああ、なるほどね。そかそか……」
ほら、案の定な反応だよ。
かといって、この好意を利用しないと、ヒロインへの道は遠い!
「一緒になれるといいね♪」渾身の笑顔を振りまいてみた。
バックにお花を背負えたら完璧だけど、練習中。
「ああ――うん。そうだね!」
一瞬呆けたな。
ふふふ、まだまだ甘いよ、クラスメイトA君。