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デンサバ!  作者: 豚まん
第一章
6/6

VS生徒会!

 ◇

 蒲生クララの人生はいつもデンサバが邪魔をする。世はデンサバ全盛期。男子も女子もみんなデンサバに夢中だった。特に男子達は幼かったクララの顔にホログラム弾を当てて泣きじゃくる彼女を揶揄ってきた。

 背が低く人形みたいな顔をしたクララは男子からすれば格好の獲物というわけだ。

(デンサバなんか嫌い!)クララはデンサバにまつわる嫌な思い出を振り返る。大体デンサバやってるやつって何であんな偉そうなのかしら?

 ため息をつくクララ。おまけにパパが理事長を務めるこの電華高校はデンサバの強豪として有名だ。

 クララやさくら達三年生がまだ下級生だった頃は特にひどくデンサバ部が我が物顔で威張り散らしていた。(おまけにあんな問題まで起こして)そのため生徒会は何度も酷い目に遭って来たのだ。

 生徒会室のソファに腰掛けながらそんな事を思い出していたクララの元に飛び込んできた少女。明星あてなとか言う一年生だ。

「お願いします!デンサバ部復活させて下さい」

「はあ?復活?絶対許さない!」

 すごい剣幕であてなを睨む。冗談じゃない。それになんなの?一年生の癖に生徒会室に乗り込んでくるなんて。

「お願いです!」

 何なのよこいつ。何回も無理って言ってるのに。

 扉が開き天城院さくらと相沢夏がやって来る。

 天城院さくら……こいつもデンサバ狂いの嫌なやつ。デンサバ部にしがみつく権力を欲しがる女。

「天城院さん?この生意気な子引き取ってくださる?」

 クララは意地悪に口を歪ませる。アテナとかいう一年生も天城院さくらもみんなしてデンサバ狂いのバカばっか!デンサバなんか嫌い!

 相沢夏の目がこちらを睨む。

 うっ怖い……じゃない。負けたらダメよクララ!

「遅れてすみません。私からもお願いします」

 生徒会室の扉が開き、現れたのは長い黒髪、切れ長の目、なんて美しい女の子。ってあの方は?昨日の美少女?

 ◇

 それは昨日の事だった。その日は雨が降っており、高校から、クララの家までの中間地点である、那由多川付近を歩いていた時だ。

 夢ヶ丘市を流れる那由多川の中でも北側は、繁華街であり人の流れも多い。灰色の空が広がる街中のビル街にたどり着いた時だった。

「よう。そこの可愛いお嬢ちゃん。俺らと遊ばない?」

 咄嗟に傘で顔を隠そうとするクララ。話しかけてきたのはグレーのパーカーを着た二十代くらいの不良らしい男だった。男の周りには何人か同じ色をしたパーカーを着ている取り巻きがいる。町中の繁華街は、人通りは多いがその分関係性は希薄。わざわざ助けようとするものも無くみんな目を逸らして逃げていく。

「いや……あの」

 クララはいつもの怒鳴り声が出せない。なにしろ相手は男なのだ。力では勝てないし何をされるかわからない怖さがクララを震えさせる。

「いいから遊ぼうぜ」

 無理やり肩に手をかける男。

「きゃっ」

「『きゃっ』だってさ。可愛いじゃん」

 更に手を伸ばす男。男のいやらしい視線がクララを捉える。

 その時だった。男の首元に青い色をした傘が突き立てられたのは。

「やめなさい」

 男は傘の持ち主を見る。クララも驚きながら振り返った。

 長いロングヘアの黒髪に切長の美少女、と言った風な女の子がそこには立っていたのだ。

「その子嫌がってるわ。」

「ああん?」

 男はナンパを邪魔されて面白くないと言った態度でその美少女に掴み掛かろうとした。クララは身震いする。(どうしよう。何にもできない)

 だが、心配は無用だった。雨が降っている中であっという間に美少女は男達を組み伏せてしまったのだ。

 青い傘が宙に舞いまた一人のパーカーが地面に叩きつけられる。雨に濡れて息一つ乱れる事のない美少女……

「あの、ありがとう」

 クララはそれだけしか言えなかった。本来ならいいたいことが山ほどある。(名前は?)(どこの学校?)(もしよかったらお茶でも)

 だがその美少女の余りの輝きはクララから言葉を奪ってしまった。なんて美しい方……

 ◇

 その美少女、紫耀メイが目の前にいる。蒲生クララは冷静さを保つのが必死だった。

 なんであの方がデンサバ部なんかに!と言うよりデンサバなんかやってるのよ!

「私からも頼みます」

 頭を下げるメイ。

「うっ分かったわ!借りは返さないとね。紫耀メイ、あっあんたに銘じて特別条件でデンサバ部の再会は認めてあげるわ!」

「わーやったぁ!さっすがメイちゃん」

 喜ぶあてな。ちがーう!せっかく認めてあげたのはメイ様のためなんだから。

「ただし特別条件付きよ」

 ニヤリと笑うくらら。さくらと夏は嫌な予感がしたようにお互いの顔を見合わせているように見えた。何なのよ。

 ◇

「これからどうしようかしら……」

 さくらは緊急ミーティングを開く。場所は部室。時は放課後。

 蒲生クララの出した条件とはデンサバによる対決だった。しかも負けた場合は、紫耀メイの生徒会入りだ。

 クララ側からの提案に、紫耀メイは即決だった。

「そうだよーメイちゃんがいなかったら大会出れないじゃん」

 メイはペットボトルのお茶を右手で押さえながら綺麗な仕草で飲んでいた。

「落ち着きなさい。あてな。相手は素人よ。それに私はデンサバ部の一員だから。部のためになるなら当たり前の行動よ」

 そうなのだ。メイの行動はデンサバ部の事を考えてくれている。クララがメイに興味を持っている以上、他に方法はないだろう。だからこそさくらは辛い。

(本来ならわたしがなんとかしなきゃいけないのに)心の中で謝る。メイちゃんに人質の様な役割を押し付けてしまった事が心苦しい。

「こうなったら勝つしかないよ!」

 あてなの無邪気さとメイの行動力。あの二人の一年生に助けられてばっかり。だけど、夏も笑っている。こんな頼りない自分でもなんとかやっていけるかもしれない。前のデンサバ部とは違う、新しいデンサバ部をこの子達と作っていくんだ。天城院さくらは拳に力を込めたまま、はしゃぐ部員たちを眺めていた。

 ◇

(私は誰?ここはどこ?)波に揺蕩いながら体が浮いている。あてなは思い出そうとする。が思い出せない。辺りは緑色の水面がどこまでも広がっている。なんだか見た事がある様な気がする光景だと感じる。あてなは背中を水面につけたままボーっとしていた。懐かしい様な、怖い様な……なんなのこの感じ?

 やがて波の間から飛沫が上がり海上に渦が撒き始めた。何かが海の間から飛び出してくる。光り輝きながら現れたのはよく知る人物だった。(あれは?私?)

 それは他でもない明星あてなそっくりの人影だった。

「そう……明星あてな。あのさ、もうやめたら?作ってばかりの私を」

 作る?何を?(私はもっと自分勝手な人間なのよ)もう一人がつぶやく

「違うよ!」

 あてなは否定する。波が揺らいでもう一人のあてなは薄ら笑いを浮かべていた。

(アストラルの世界へようこそ)

 朝方汗びっしょりであてなは起きた。時計を見るともう11時を過ぎてしまっていた。まだ震えている。なんなのあの夢?物凄く嫌な感じ。だけど……気にしない!(私は私。明星あてななんだから!)


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