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デンサバ!  作者: 豚まん
第一章
2/2

メイちゃん

 


「デンサバやろうよ!」

 勢いよく出された手を、無視する少女。

「やらない」

 紫耀メイは一言そう言った。

「えーやろうよぉ。メイちゃんが入れば最強だよ」

「じゃあそう言う事で。私忙しいから」

 メイはあてなに背を向けて教室に向かう。

「待ってメイちゃん」

 うう……難しいな。でも諦めちゃダメ!

 教室に着くとあてなと同じクラスの紫耀メイがすでに教室の後ろの方で本を読んでいた。

「メイちゃーん」

「……何?」

「えへへ」

「用がないなら帰って」

 あてなはメイの机に肘をついてメイを見つめる。

「私メイちゃんのファンで」

「さっき聞いた」

「だから一緒にデンサバやりたいなって」

「いい加減にして!」

 突然の大声にそれまでざわざわしていたクラス内が突然鎮まり、その視線が一斉にあてな達に集まる。

「デンサバ!デンサバってそればっかり!私の事なんも知らないくせに!」

 あてなは驚いてメイを見つめた。

 ◇

 メイは大声を出した自分自身に驚いていた。力無く拳を震わせている。

「ごめんなさい……変なこと言って。でも今の本当の気持ちよ。」

 メイは椅子から立ち上がり、教室を出ていく。

「鬱陶しいのよ。私の事……何にも知らないで……」

 呟きながら廊下を歩いていると、先程のメイ自身の,怒鳴り声が何回も頭の中をぐるぐると駆け巡る。その声に誘われて、何年か前の光景がフラッシュバックする。

(またやっちゃった……)

 ◇

 薄暗い部室棟には、メイを含め誰もが苦い顔をしていた。

「瑠衣。さっきはなんなの!相手のアタッカー相手に単独行動なんて」

 瑠衣と呼ばれた少女は、小さな声で呟く。

「でっでも、相手のアタッカーは……ロケット砲装備ですし

 メッメイちゃんと同じ弾丸の軌道を操るタイプですから。早めに倒さないとって」

「それで、負けてるんだけど?相手との実力を測れないなんて何を練習してきたの?」

「ちょっとそんな言い方無いわよ!」

 黙って聞いていた同じユニフォームの女の子達が抗議する。

「私は勝ちたい。絶対に大会で勝ちたいの! みんなもついてきてよ。」

 メイは一歩も引かなかった。

記憶がループする。

 ◇

「メイってさ。うざく無い?」

「無視しようよ。ねえ瑠衣?」

「そんな……ダメですよ……メイちゃんだって必死で」

記憶がループする。

 ◇

「電脳サバイバル部でーす。体験入部やってまーす」

 電華高校の校門で、チラシを配っているのはさくら部長こと、天城院さくら。その横で猫じゃらしを鼻に当てて遊んでいるのが相沢夏だ。

「でもあれだけ反対してたさくらぶちょーがこんなことするなんてなー。あっはーい体験入部してるからなー。すぐレギュラーだぜ。」

「まったく。入部を許したからには部を存続させる責任があるのよ。夏も配って、配って。」

「うーい。部活やってまーす」

 チラシを受け取ったその少女の顔を確認した瞬間、夏の目が鋭く光ったのをさくらは見逃さなかった。

 ◇

「お前は……」

 ウェーブされた金髪を撫でながら夏とさくらを睨みつける少女。さくらは思った。まずい。

「くらげ!」

「クララ!私の名は蒲生クララ!この電華高校理事長、蒲生孔明の娘であり、にっくき脳筋サバイバル部を滅ぼすものよ!」

 クララは、腰に手を当て得意げに捲し立てる。

「……でなんの用?」

「フフ……『何の用』だって?。私だって一般生徒と同じ下校中なだけだけど?」

 そう言うと、わざとらしく受け取ったパンフレットを片手で頭の上にかざし、覗き見た。

「デンサバ部募集?まだ懲りてないの?」

 更にじっと見つめる。

「それに何この絵……。変……」

 そこには大きな頭にそぐわない細い線の体を持つ女の子が、銃の様なものを持っていた。

「言いやがったな!さくらぶちょーの渾身の作品なんだぞ!」

「ええ、何度も言ってやるわ。下手な絵!どうせ電脳サバイバルも下手な脳筋なんだわ!」

「おい……くそ小娘」

「やめなさい夏!」

 さくらは止めに入ったが、夏は,更に睨みつける。

 クララも夏を睨み返す。だけどその目元には涙が溢れそうなのをさくらは確認した。

「いいわ!パパにいいつけてやるから!」

 ◇

 そう言ってクララは一目散に逃走した。うう……怖かった。じゃない。ムカつく。

 あかんべーのポーズで校門から飛び出したクララは、学校の側にある喫茶店の裏に隠れた。

「あいつら……覚えておきなさい!」

(はあはあ……何なのよあの目つき!まだドキドキしてる……落ち着きなさいクララ……)

 ◇

 夕方の公園は物悲しい。紫耀メイはいつものように日課になっている夕食前のジョギングをやめられない。今更体型なんて気にしたってしょうがないのに。私はもう選手じゃない……。頭では分かっているはずなのに習慣は恐ろしい。

「おーい」

 何だか幻聴まで聞こえるなんて。私おかしくなったのかな。

「めいちゃーん」

 呼ばれて走りながら振り返ると学校でやたらと絡んでくる女の子がメイのすぐ後ろを走っている。

「めいちゃーん待って」

 メイは走るペースを一段上げる。腕の振りを最小限に、上半身と下半身を連動させる。メイは,しなやかな筋肉が心地よいしなりを生み出して加速するのを感じた。

「ふ……」

 メイは後ろを振り返って笑みを浮かべようとした。

「待ってめいちゃーん」

 何なの?あの子……私の走りについてくるなんて。

 メイはムキになる。公園沿いの河岸を渡り、坂道を全速力で駆け上がる。

「待って……」

 流石のあてなも引き離されメイは、坂道の上にやって来た。

 坂道の頂上は、ちょっとした広場みたいになってて、自動販売機が目に入る。

「はあはあ。めいちゃん見つけた!」

 まさか駆け上がってくるなんて。

「やっと追いついたね。私あてなって」

 知ってる……。メイは目を逸らしながらも、呟く。喉がカラカラだ。だが、あいにく財布の中には10円玉しか入っていない。最近買い物をしてしまい金欠だった。

「はあはあ…めいちゃんちょっと待ってて」

 あてなはそう言うと、息切れしながら何処かへ歩き出した。

 メイは、坂道をゆっくり下る。

(待ってと言われって、勝手についてきただけでしょ)

 坂道を半分ほど降りた時だった。

「酷いよーおいてくなんて!めいちゃーん」

 メイはギョッとして振り返るがメイの胸にアテナが飛び込んできた。

「めいちゃーん!」

「きゃっやめなさい!」

「ふふふ。やっぱめいちゃんいい匂いする」

「……」

 黙っているメイの表情に、青い筋が浮かぶ。

「ジャジャーンこれなーんだ?」

 突然出されたそれはコーラに見えた。

「それ……」

「うんおそろいだよ。」

 そう言って一本をメイに渡し、もう一本を勢いよく開けるあてな。

 ばっか見たい。でも……

「ありがと」

「ん?めいちゃん何か言った?コーラの音で聞こえないよー」

「ばっかみたい!!って言ったのよ。」

「えー酷いよ〜〜」

 メイはそう言いながら自分の口元が楽しそうに弾んでいるのを感じた。

「ありがとって言ったの。」

「めいちゃんかっわいい」

「キャっ抱きつかないで」

 メイは笑ってしまう。つられてあてなも笑っているのが見える。

 なんだろう……ばっかみたい!


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