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デンサバ!  作者: 豚まん
第一章
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あてな始動!

「デンサバやるぞぉー」

 勢いよく手を上げた少女、明星あてなは昨日の夜から寝不足だった。

(だって今日から高校生、いよいよあの電脳サバイバルに本格的にチャレンジできるんだもん。)

 あてなは独り言を呟く。街中には呟くあてなを、変なものを見る様な目で睨む者もいるけどあてなは気にしなかった。

 いよいよ今日は電華高校に入学して初めての登校だ。

 私立電華高校は電脳サバイバルで強豪と呼ばれている高校であり,あてなの憧れでもあった。

 ◇

 あてなが電脳サバイバル、いわゆるデンサバにハマったのは中学生の時だった。デンサバとは大会規定のホログラム銃で撃ち合うサバイバルゲームのことだ。見栄えもいいし,世間では熱狂的に盛り上がっている。

「カッコいいなあ」

 中学生時代のあてなは毎日の様にデンサバの中継に夢中だった。

 その中でお気に入りの選手がいた。

 それが当時のあてなと真反対のクールでカッコいい天才であり、長い黒髪に切長のクールビューティー。当時の中学生日本代表のエース、紫耀メイだ。愛用のスナイパーライフルから放たれた弾丸は、確実に敵を撃ち抜く。

 その紫耀メイが何故か目の前にいる。

 メイに似た人を入学式で見かけた。その時はまさかと思ったけど、オリエンテーションが終わって自由時間になった時に、見つけたその子は、紫耀メイに本当にそっくり。あてなは心臓が震えるのを感じた。

 紫耀メイちゃん。中学三年の大会で大活躍してから、何故か謎の失踪……。行方不明になって消えた天才なんて言われちゃったりもしてたけど。間違いないメイちゃんだ。

「メイちゃん?だよね。代表の!私、明星あてなっていいます」

「そう」

 紫耀メイはただそう言った。その目は何も見ていない様だった。

「それで、それで、私ファンなんです」

「そう、もういいかしら?」

 メイは立ち去ろうとする。

 だがその前に、少しだけ振り返り吐き捨てる様に言った。

「あなた。デンサバやるつもりなら、この学校じゃ難しいわよ。」

 あてなはメイの言っている意味が分からなかった。

 ◇

 あてなは、進路は迷わず電華に決めていた。中学時代電脳サバイバル部のないところで育ったあてなにとって、高校では地元の強豪と言われる電華は憧れの存在だった。

「ええー電華高校電脳サバイバル部休部なんですかぁ〜〜」

 うかつだった。(私って馬鹿だあー)。あてなは頭を抱える。泣きそうな顔をするあてなをクラスメイトで、ついさっき仲良くなった林田が憐れみの視線を向けながら続ける。

「そうだよ。電華は二年前監督がパワハラ発覚したり、色んな問題が起きて、さらに今の理事長がスポーツ強化反派で部員集めてないんだよ。あてなちゃん知らなかったの」

「知らないよ。私デンサバの試合しか見てないもん。」

「あはは、あてなちゃんらしい」

 という事らしい。あてなは涙目になりながら机に座る。

「どうしよう……」

「大丈夫だよ。幸いうちには部活なんていっぱいあるからさ」

 色んな部活。弓道部、茶道部、料理研究会。どれも楽しそうだ。でも……。あてなの頭の中にあの試合が浮かぶ。それは中学生時代にあてながテレビの前で、声を枯らして応援していた、中体連の決勝の試合だ。

 ◇

 青龍中学対玄武中。四人ずつひとチームの試合で、青龍中は、残り一人になっていた。

「さあ追い詰められました。青龍中の蒼き流星、日本代表エースの紫耀メイ。流石に厳しいか?」

 紫耀メイは、壁際を走っていた。敵は三人。メイの愛用する、スナイパーライフルは、遠距離でこそ無類の強さを発揮するがその特性上、近距離戦に持ち込まれると途端に弱くなる。

「もらった!」

 壁の上から奇襲してきた玄武中の一人。だがメイは冷静だった。

「私が近距離なら弱いって誰が言ったの?」

「何?」

 メイは腰に右腕にあるデバイスにアクセスすると、ナイフの映像が実体化する。

「なっ?武器の実体化はかなり精神エネルギーを使うのに。ダブルだと」

 あっという間に敵を組み伏せ喉を掻き切る。

 もちろんホログラム映像なので死んだりはしないが、デバイスに表示されるライフゲージはゼロになった。

 その後、天才紫耀メイの活躍で青龍中は見事大逆転という記憶だった。(思い出すと熱くなっちゃう。やっぱ私デンサバじゃなきゃやだよ。とりあえず部室に行って話だけでも聞かなきゃ。)

 そう思った時には、既に駆け出していた。

 ◇

「えっ本当に部員募集してないんですか!」

 両手を広げ驚くあてなに対し、その人物は冷静だ。

「そうよ。残念だけどあなたの入部は認められないわ。」

「そんな!なんでですか」

 やだよ!プレイヤーになるの楽しみにしてたのに!あてなは涙目になる。

 部室の中にはあてなを入れて三人の少女がいる。

 あてなに対し、説明をしているのがどうやら部長みたいだ。

 桜色の髪をサイドテールに結んでいて、唇を強めに噛み締めている。垂れ目の優しそうな目元にも力が入る。

「いいじゃん。入れてやれよさくらぶちょー」

「だめなのよ。それに私の事はサクラでいいから。あてなちゃんも残念だけど、入部は諦めて貰えないかしら」

「そんな……。どうして」

「色々とね。それに部活の問題とか……」

 項垂れるあてなと優しく微笑む部長。

「分かってくれると嬉しいわ。」

 ◇

 あてなが去った後の部室にて残されたさくらはもう一人の部員、相沢夏に向けてため息をついた。

「なあどうして入れないんだよ。」

「いい?この部は今厳しい状態にあるのよ。顧問はつかずスカウトは廃止、いつ部がなくなるかも分からない。私は部長としてそんな状態の部に新しい子を入れるなんて出来ない。」

「さくら……」

 さくらは自嘲気味に笑う。

「相変わらずバカ真面目だな」

「バカは余計よ。」

 ◇

 その後の授業でも、あてなは上の空だ。部活に入れないなんて。どうしたらいいの?頭を抱えて机で伸びをする。

「えーじゃあ部活断られちゃったの?」

 見かねた林田があてなに話しかけにきてくれた。

「うん……」

 あてなは教室の机に座り林田の方を見る。

「でもなんでなんだろう。入れてくれたっていいのに」

「それってもしかして、部員数も原因かも。電脳サバイバルは普通四人で一チームだから、あてなちゃんが入っても三人だし。せめてもう一人いれば」

「確かに!それなら林田ちゃん一緒にやらない?」

「私は残念ながら、新聞部に入っちゃって、もう空きがないんだよね。ごめんね、あてなちゃん」

「ううん。ありがとう林田ちゃん!希望が見えてきたかも」

 もう一人いれば……もしかしたら四人揃えば、認めてくれるかも!

 じっとしてちゃいられない!あてなは教室を飛び出した。

 ◇

 電華高校の電脳サバイバル部。

 通称デンサバ部の部室は部室棟の一番奥にある。

あてなは再び部室へと向かった。

「お願いです。後一人見つけて四人であれば認めてくれますか」

 口をきゅっと結ぶさくら部長。

 相沢夏は「こりゃまいった」とでも言いたそうに笑っている。

「いいじゃないかさくら部長

 この子の目気に入ったぜ。」

 あてなを見ながら微笑む。

「そんな無責任な。そもそも今の我が部は理事長の反対もあるし、いつまでできるかも分からない状態だわ。」

「お願い……します。正直、私中学まではあまりデンサバやれて無くて。だから高校生になったら、ずっと憧れてたデンサバがしたいんです。部の状況だとか、大変なのは分かりました。でも……」

 あてなの口元にも力が入る。

「私!デンサバやりたいんです!先輩達と一緒に。」

 部長はため息をつく。

「まったく困った子ね。分かった。あなたの入部を認めるわ。しかし条件があります。」

「やったあぁー」

「ちょっとあてなさん?こら抱きついちゃだめ。」

 思わず部長の胸な抱きついていた。柔らかい胸だった。それに春の花びらの様な香り。やっぱさくら先輩柔らかい。

「無事あと一人!見つけられたらの話よ。」

 こうしてとりあえずの条件がまとまった。

 あてなは二人にお礼を言いながら、猛ダッシュで廊下をかけていく。いよいよ私デンサバやれるんだ!ようし、がんばるぞ!


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