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貧乏貴族から成りあがれ! ~独り身イズミの転生譚~  作者: あんぜ


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第9話 公衆浴場

 次の日、アンヘルさんがお昼休みに私たちを馬車で迎えにきた。一緒に乗っているのはゼナさん。エドも居るから、私はお母さまの膝の上。アンヘルさんとゼナさんが私たちを公衆浴場へ案内してくれる。服も着替えやすいものと、それからしっかりと温かく羽織れるものだけ用意した。


「それじゃあゼナ、宜しく頼むよ。また後でね、アンリエット」


 アンヘルさんはそう言うと、エドと一緒に男の人用のお風呂に入っていった。

 私たちは入り口でお金を渡して、女の人用のお風呂に入る。



 ◇◇◇◇◇



「いやだわ、こんなに広い部屋で服を脱ぐなんて……」


 入った途端、暖かくて広い部屋に裸の女の人が居たのでびっくりした。

 お母さまも顔を赤くしてる。


「ベンネヴュッテ様。ここはもう、そういう場所だと割り切るしかございませんよ。それとも、私が脱がして差し上げましょうか?」

「いいえ、私も侍女なしで旅してきたから大丈夫。ちょっとびっくりしただけ……」


 それでもお母さまはおそるおそる脱いでいた。私は、初めての場所でちょっと嬉しくなってすぐに脱いだ。


「――ベンネヴュッテ様…………長靴下(ショース)だけ残すと逆に艶めかしいので……」

「そ、そう? ごめんなさいね、恥ずかしくて、つい……」



「ベンネヴュッテ様、こちらをどうぞ。アンリエットもね。葦を編んだ履物(サンダル)です。床が少しだけ熱いところがあるんですよ。あと、石鹸や油で滑らないように」

「石鹸も皆が使ってるのね」


「はい。頭を洗うための(オイル)も持ってきてます。今は平民でも、普通に使うようになりました」


 ゼナさんについて入っていくと、廊下の先がもくもくと白く曇ってた。それにさっきの部屋よりも暖かい。


「――こちらでは、お金を払えば香油で体中を揉み解してもらえます。毛穴の汚れも落としてもらえて肌が綺麗になるので、貴族の女性で通われる方も少なくないとか」


 大人が寝そべられるくらいの大きな石の台が並んでた。


「――散湯口(シャワー)はこちらです。蛇口を捻ると浴びられます。奥の方が熱いので、手前から試してみてください。こちらで身体を洗ってから入ります。アンリット様もそうされたそうです」

「あの子が?」


「はい。この北に、もう少し小さな浴場があるのですが、そちらが最初の浴場で、アンリット様が造らせたと聞いております。かつては輝きの湯殿と呼ばれていて、光を放っていたとか。人が詰めかけたので私は入れませんでしたが」


「わっぷ……」


 頭の上からお湯が降りそそぐ。最初は息ができなくなりそうでびっくりしたけど、すぐに気持ちよくなったので、目を瞑ってお湯を浴びた。


「さすが親子ですね」


 ゼナが笑ったのでお母さまを見ると、私と同じように幸せそうにしていた。お母さまもびっくりしたのかな? それからゼナはお母さまの髪を油で流し、同じように私の髪をお母さまが流してくれた。



 ◇◇◇◇◇



()っつつ……」


 大きなお風呂に入ると、お湯がすごく熱かった。


「アンリエット、母の膝の上においでなさい。ほら、少しだけ熱くないでしょう?」

「はい、お母さま……」


「それにしても気持ちのいいものね。あの子が欲しがった理由もわかるわ」

「アンリット様が最初に入ったときなど、『神々の元に召された』と言ったそうで、周りの皆さんがぎょっとしたとか」


「ふふっ、あの子らしいわね…………」




「お母さま…………泣いているの?」

「ううん、大丈夫。……あの子に見せてあげたかったなって」



 ◇◇◇◇◇



 アンヘルさんの家での生活が始まり、お母さまと私はアンヘルさんの家のお掃除と、エドのお料理のお手伝いをすることになった。アンヘルさんの家でも散湯口(シャワー)を浴びられるし、何よりトイレが清潔で使いやすいのが好き。


 ある日、アンヘルさんは、救国の賢女アンリットの最後を教えてくれた。


「魔族が王都を滅ぼしかけたとき、アンリットは自分の両脚を代償に、願いの呪文を使って王都中の人間に祝福を授けてくれたんだ。アンリットが居なかったら、今ごろ王都は魔族の手に落ちていた。私もきっとあのとき死んでいたよ」


「――そんな状態なのに、アンリットは勇者とともに地下迷宮(ラビリンス)へ降りて行って、ついに魔族の親玉を倒したんだ。自分の命を引き換えにして……」


「あの子にせめてひと目……会いたかった」

「ああ。アンリットも残念がってた」


「――アンリットはね、たぶん、神さまの御使いだったんだ。アンリットにとっては、貴族と平民に何の違いもないし、王都の皆が……いや、世界中の皆が幸せになれることを望んでいた。それって神さまの目線だろう?」


「そうね。あの子はいつも皆が幸せになることを考えてた。まるで自分が当事者かのように、誰のことも心配して、気にかけて……」


「ああ。だからね、私はアンリットが目指した王都を作っていこうと思ったんだ。アンリットが生きた証を残すためにね」


 アンヘルさんは、設計士として王都の建物を建てたり、改築したりしてるんだって。この建物の散湯口(シャワー)とトイレを設計したのもアンヘルさん。王都の全部の家に付けたいって言ってた。







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