表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏貴族から成りあがれ! ~独り身イズミの転生譚~  作者: あんぜ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第4話 学び舎

「女の子だ!」


 板に書き物をしていた男の子が立ち上がり、廊下から部屋を覗いていた私を指差し、大きな声で言った。

 ちょっと怖くなった私は、入り口の陰に身体を隠す。


先生(マギステル)。女の子が居ます。新しい子かな」


 部屋に居た私と同じくらいの齢の女の子が言った。

 すると、陰になって見えなかったけど、大人の女の人が居て、こちらを覗いてきた。


「あら、本当。どこから来たのかしら? お名前は? お父さんかお母さんは?」

「あっ、あの、お初にお目にかかります。あなた様のお名前は存じあげませんが、わたくしはアンリエット……と申します。以後、お見知りおきを……」


 ひとりの時は、自分で挨拶するように言われていた。ただ、旅に出てから家の名前は出さないようにとも注意されていた。あと、名前を知らない人への挨拶もわからなかった。


「まあ、これはご丁寧に。初めまして、アンリエットさん。わたくしはゼナと申します。学び舎の教師をしております」

「学び舎……?」


 その女の人は、私の挨拶にちゃんと返してくれたので、ちょっとだけ安心できた。


「そうよ。ここで文字の読み書きと算術を教えて――」

「アンリエット? 先生、またアンが増えた!」

「こんにちは。私もアンって言うの。この子と、こっちの子もアンだよ」

「私はアンネだってば」

「オレはアンリル!」


 20人くらいいる子のうち、同じような名前の子が6人もいた。


「ほおら、静かに! 何人いたっていいでしょ? みんな、救国の賢女様のお名前を頂いているのだから」

「救国の賢女様……?」


 ゼナさんに聞き返した。


「そうよ。あなたのご両親も、救国の賢女様に(あやか)って付けられたのだと思いますよ」

「知らないの?」

「オレちゃんと習ったもんね」

「救国の賢女様、アンリット様!」



 ◇◇◇◇◇



「アンリエット、こんな所にいたのね」


 席のひとつに着いて皆の勉強を眺めていたら、お母さまがおじさんと一緒にやってきた。


ゼナ先生(マギステル・ゼナ)、中断してすまない。こちらは――」

先生(マギステル)? ゼナ? もしかして魔術学院の生徒だったゼナ!?」


 お母さまがおじさんの声を遮った。私がやったら叱られる。


「もしや、ベンネヴュッテ様!? リガノからお戻りとは存じませんでした!」

「それが実は……」

「いや、詳しい話は後にしよう。まさか、ふたりが知り合いだったとはな」


「あの……、ゼナ先生(マギステル・ゼナ)――って、もしかしてここで授業を?」

「ええ、学院のような魔術は教えておりませんが、平民としても役立つようなことを教えております。ああ、そっか。アンリエットってもしかして……」


「ええ、同じ年に亡くなったあの子から……」

「では、アンリエット様を魔術学院へやるためにこちらへ? ベンネヴュッテ様もようやく復学されるのですね!」


「それが……」

「まあその話は後にしようではないか。生徒たちが待ちくたびれておるぞ。授業を済ましてしまいなさい」


 おじさんがそう言ったので、ゼナさんが勉強を再開した。私もそのまま聞いていた。



 ◇◇◇◇◇



「本当に、アンリット様の生まれ変わりのよう。特に黒髪が……」


 ゼナさんが言うと、お母さまが髪を撫でる。


「最初はもっと色が薄かったのだけど、だんだん黒くなってきたの。本当にあの子みたい」

「ええ。懐かしゅうございます。魔術学院ではきっと優秀な生徒になられるでしょう」


「それがね、ゼナ。恥ずかしい話、私、いま一(デナリ)無しなの」

「まさか! だって、ベンネヴュッテ様は先代の国王陛下の……」


「陛下が退(しりぞ)いた影響は大きかったわ。理由もそうだけど、伯父上も一緒だったのがよくなかった。父も責任を感じて後を継がなかった。伯母も同じ意見。それに……あのとき、私が王都へ向かったから、夫も王都を手助けに来て亡くなった。私のわがままで……」


 お母様がうつむく。


「そんなことはございません! アンリット様はあのとき、ベンネヴュッテ様が約束を守ろうとしてくれたと、大変喜んでおられました」

「そう言ってくれて嬉しいわ。でも、結局それが発端で義弟から命まで狙われ、危うくアンリエットを失う所だった……」


「では、魔術学院は……」

「難しいでしょうね。お金も要るようですし……」


 お母さまも、ゼナさんも黙って(うつむ)いてしまう。

 けど、おじさんが――


「いや、むしろここは学院に入れてしまうのも手だ。今は寮もある。少なくともアンリエットに外部から手は出せぬようになる。――金についてもいい考えがある。神殿からの優秀な特待生として推薦し、試験に合格すれば良いのだ。寮での生活費はタダになるぞ」


 すると顔を上げたゼナさん。


「ベンネヴュッテ様、アンリエット様の読み書きや算術、(しつけ)はどの程度?」

「その点でしたら問題ございません。魔術に関する事以外は、しっかり学ばせてあります」


 3人とも、私を見た。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ