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貧乏貴族から成りあがれ! ~独り身イズミの転生譚~  作者: あんぜ


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第2話 おじいさまのお屋敷

「うわあ、おっきい…………」


 あれから私とお母さまとエドは、10日かけて大きな町まで辿り着き、そこで馬車と合流した。そこからさらに馬車で20日くらいかけてやってきた王都。ゆるやかな丘の上に、どこまでも壁が続く。


「ええ、そうねアンリエット。――あれから6年経つのね。新しい西門もできて立派になった」

「人もずいぶんと増えやしたぜ。追っ手も()けましょう」


 6年? 6年前というと、私の生まれた年。私は今、7歳だから。


 馬車と別れ、荷物を降ろしたエドは、荷運び人を雇って王都の西門を抜けた。私たちは門を通るのにも、お金を払わないといけないみたい。払ってる人と、払ってない人が居た。


 それから街の大きな市場の近くに宿を取った。



「それではエド、遣いをお願いしますね」


 お母さまはエドへ手紙を渡す。お母さまがお仕事で使うような羊皮紙の封筒じゃなくて、小さな木皮紙の手紙。


「ええ、任せてくだせえ」


「ではアンリエット、明日に備えて綺麗にしておきましょう」

「お風呂はやだなあ……。いつもみたいに魔法でやって」


「そんなこと言わないの。お風呂に入った方が綺麗になりますからね、おじいさまに可愛い孫をみせてあげませんとね」


 だけど、お母さまが宿に頼んで用意してもらったお風呂は、お屋敷のお風呂とは違ってた。丸い(たらい)にお湯を張って、お母さまに洗ってもらった。いつもは意地悪な侍女が洗うので嫌だったけど、これならいいかな。部屋でお風呂に入れたのもよかった。



 ◇◇◇◇◇



「父が行方不明!? そんな!!」


 手紙の返事はなかなか貰えず、結局、おじいさまのお屋敷に呼ばれたのは4日あとだった。すぐにでも会えると思って準備していたのに……。おまけに、通された部屋でおじいさまは居ないと聞かされた。


「誠でございます。マルエル様は3カ月前、魔鉱採石のために樹海へ向かわれて、行方がわからなくなったのでございます。何者かに襲われ、生き残った者も僅かでした」

「3カ月!? そんな連絡は受けておりませんでしたよ!?」


「確かにリガノ市へは遣いを出しましたが……」

「まさか……義弟はこのことを知って……」


 そこへ、煌びやかな服を着た男の人が入ってきた。


「ああ、客が来るとは聞いていたが、まさかリガノへ嫁に行った妹とはな」

「お兄様! お兄様、父が行方不明だと、いま知って――」


「そうさ! まさかこんな幸運が巡ってくるとはな!」


 お母様は口をつぐんで顔をしかめる。


「…………幸運? いま、幸運と仰いましたか??」


 フン――お兄様と呼ばれたその人は、鼻で息をついてみせた。


「ああ。国王のジジイと伯父上が失脚し、退いたというのに、父上は王位を継がなかったのだ! せっかく兄上が前線で討ち死にし、次は私の番だと思っていた矢先にだ!」

「……お兄様、それは本気で仰っておられますか!?」


「ああ! 私をさんざん見下してきた父上がようやく逝ったのだ! カーリーの血筋はこの私にこそふさわしい! 妹よ、昔のように仲よくしようではないか。ふたりで叔父上を引きずり下ろし、公爵領を我らが元へ取り戻すのだ!」


 キリ――と、お母さまの口元から音が鳴る。


「見損ないましたよ、お兄様。まさかそのような恥知らずだったとは……」

「ふっ……そう言うだろうと思っていたよ。お前は父上によく似ている……」


「アンリエット、行きましょう。光の(エル)カーリーは地に落ちました」


 お母さまは立ち上がり、私の手を引いた。

 伯父様は屋敷を去る私たちを笑って見ていた。




「お母さま……」


 エドが手配してくれた馬車の中、唇を噛むお母さまにおそるおそる話しかけた。


「アンリエット……許してね。まさか兄があんな酷い人だったなんて……」


 私は首を左右に振る。ただ、お母さまが心配だった。



 ◇◇◇◇◇



「そうでやすかい、お父上がそんなことに……」


 馬車で宿まで戻るとエドが出迎えてくれた。


「ええ、ごめんなさいエド。あなたにはもっとたくさんお礼ができると思っていましたのに……。せめてこれを……」


 そう言うと、お母さまは指輪のひとつを外し、エドに渡そうとした。


「やめてくだせえ、奥様! あたしぁ、そんなつもりで助けたわけでぁございやせん」

「ですが……、エドもこんな遠く離れた土地にまで来て……お礼は必要です」


 けど、エドは指輪を押し返すようにした。


「そいつぁ持っておきなせえ。頼るところがねぇんでしたら金は必要でやす。あたしも働ける場所をさがしてきやしたから、多少は力になれやすぜ」

「エド…………このご恩はきっと…………」


 涙ぐむお母さまの手を握る。


「エド、ありがと」

「ええ、アンリエット様」


 エドは料理上手な上に、とっても優しくしてくれる。顔はおじいちゃんだけど、力も強いし、かっこよかった。








 年齢は数え年です。

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