再会
AIと初めて共同作業で作ってみました。くさいセリフとか熱いところはAI担当です。
noteのテイルズでも載せています。
https://tales.note.com/noteyoumatome5/w5xh60pw81ub3/episodes/ep640afm462xp
雷鳴が聞こえる。
春先の雷鳴は珍しくはないが、それは二週間前に終わったはずだ。
――精霊が騒いでいる。
掌のなかのすり鉢から伝わる微かな振動。いつも、泉に何か起きた合図だ。
「……何か、来る」
曇りガラスの向こう、雨を孕んだ空を見つめる。窓からの光が白い肌を透かし、濃紺の瞳に深い影を落とした。
窓からの光が白い肌を照らす。濃紺の目を凝らし集中する。灰青の髪は無造作に一つにまとめており、肩に垂らしている。成熟した女性だ。
作業台から手を放すと、スツールから飛び降り、古い胡桃の木の床を軽やかに踏み鳴らす。赤みがかったオークの重いドアを開く。外は肌寒く、風はわずかに雨の匂いを運んできた。
「…お願いできる?」つぶやくと肩の上に淡い光が灯り、小さな光がいくつか空へ散らばっていく。
精霊たちだ。
女は、それを見送って、踵を返す。その仕草は淀みなく、しなやかな体つきには、人間を寄せ付けぬ森の主のような気配が漂っていた。彼女は、家に戻ると、外套を羽織る。フードを被ると、口元もきちんと止めて隠し、皮のポーチを腰に巻いたら完了だ。
「急がないと。」そう呟くと、森の中へ駆け出した。
雨粒はまだ細かく、地面を濡らすほどではなかった。足元の落ち葉が軽く湿り、踏むたびに柔らかな音を立てる。人が通れる道というものはあまりないが、間伐と狩猟のための道は細くある。その森の奥では、泉の水面がわずかに揺れ、淡い青の光をちらちらと反射していた。
呼吸を整えながら、小道を滑るように進む。葉の間から漏れる光が、微かに精霊たちの動きを映す。彼らは羽のない小さな灯りのようで、飛び去る瞬間に森の空気がひそかに震えた。
声には出さず、わずかに眉を寄せる。森の静けさが、一瞬にして張り詰める。水面の光が強く揺れ森全体が、何かを知らせるかのようにざわめく。
肩の光がひとつ、ぴたりと止まった。それを合図に、慎重に足を止め、泉の水面を覗き込む。
水面の底の石、その青緑に光る中心――核の揺れが、微かに乱れている。
(…人間?)
「……誰か来てる。」
森の空気が一層冷たくなり、雨粒が落ち始める。精霊たちが小さく光を震わせ、森のざわめきが少し高まった。
「…」ふぅー、と吐いた息がマントの上を覆っていく。空気の防壁が張られた。これで濡れはしない。彼女の魔法は、人間には強すぎる。だからこそ、日頃から調合する薬草や護符で「人並みの術」に抑え、森を傷つけぬよう細心の注意を払っていた。軽く息を整え、腰のポーチを確認する。肩の上の精霊が小さく震え、森の空気が張りつめる。踏み込む足音が森に溶ける。彼女は息をひそめ、目を細めた。光の揺れと森のざわめきが、人の存在を確かに告げている。
やがて木々の影の間から、軽装の鎧を着た男が二人現れた。どちらも剣を帯びているが、抜く気配はない。慎重に周囲を見回しながら、泉の方へと歩み寄る。
「……ここだ」赤毛の細身の男が隣の男に言う。もう一人が足を止め、水面を見た。もう一人の男は、がっしりとした体格を覆い隠すように深くマントを被っていた。
「間違いない。光っている。」赤毛の男がまた言う。泉の青緑の光が、雨粒を受けてかすかに揺れる。男たちは泉の縁に近づき、水面を覗き込んだ。
背の高いがっしりとした身体つきの男が隣の赤毛の男に目配せをする。
「わかってる。調べるだけだ。」赤毛の男が指先を泉に触れようとしたその瞬間、
「……そこまで」
泉に触れようとした赤毛の男の手が止まる。
「誰だ?」
警戒して剣の柄に手をかける男たちの前に、女はゆっくりと姿を現した。
「それに触れてはいけない。……ここは、あなたたちが立ち入る場所ではありません」
「……誰だ?」赤毛の男が警戒して隣の男の前に出る。
女は泉の前で足を止めた。
男たちは互いに顔を見合わせる。
「……精霊使いか?いや、“森の魔女”か?。」
女は答えない。ただ静かに、二人と泉の間に立った。フードで顔は見えないが、自分をじっと見つめ続ける「マントの男」の視線に、わずかな胸のざわつきを覚えた。
しばらくの沈黙のあと、赤毛の男が肩をすくめる。
「……怪しい者じゃない。俺たちは領主様の命で来ているだけだ。」
「領主?」女の声は静かだった。
「この山も森も、マーレ様の領地だ。」
その名を聞いた瞬間、女のまつげがわずかに揺れた。
赤毛の男はそれに気づかず続ける。
「最近この辺りで雷が多い。森の奥が光っているって報告もあってな。様子を見に来ただけだ。」女は泉を一瞥した。水面の青緑の光が、静かに揺れている。
「……見ただけなら、もう帰りなさい。」
赤毛の男が眉をひそめる。
「ここは山頂近い、森の奥だ。あなたたちが来る場所じゃない。」肩の上の精霊が、小さく光を震わせた。男たちは顔を見合わせる。
隣の大柄の男は一言も発さないが、ただ射貫くように女を見ている。
「あんた、もしかして……あの『魔女の小さいやつ』か!」
突然、赤毛の男が何かを思い出したようにぱっと顔を明るくした。
「?」
ラクスがいぶかしむのを無視して、彼は続けた。
「少々訳ありでね。折り入って頼みたいことがあるんだ。魔女殿」
ラクスは無言のまま、自分をじっと見つめ続ける男の視線に、わずかな胸のざわつきを覚えた。かつての記憶が、雨の匂いと共に蘇る。
「私はラクス。この森を領主とともに守る立場にあります。私に用があるのなら、場所を変えましょう。」
彼女はそう名乗ると先ほどから自分をじっと見つめているもう一人の男を一瞥すると、男の肩が、わずかに揺れる。彼女はそれに気づくことなく視線を外した。そして、二人を家へ案内することにした。




