第6話 数字で示される現実
ダンジョン攻略後、
ギルド併設の計算室で報酬分配が行われた。
魔物素材の換金額。
討伐数。
被ダメージ量。
回復・防御・攻撃への寄与。
すべてが、数字として並べられる。
「では、今回の分配です」
ギルド職員が、木札を並べていく。
アレス。
高額。
リナ。
それに次ぐ額。
カイン。
安定した取り分。
そして俺。
……少ない。
前回よりも、
明らかに。
一瞬、目を疑った。
だが計算は、正確だった。
「今回、モブオの戦闘参加率が低かったので」
職員は事務的に言う。
「後方待機が多く、直接ダメージ・防御への寄与が減っています」
言葉を選んでいるのは、分かる。
だが、意味は一つだった。
「戦闘参加率が低いからな」
アレスが、フォローするように言った。
正論だった。
危ないから下がれ。
後ろでいい。
無理しなくていい。
その結果が、これだ。
「……問題ありません」
俺はそう言った。
声は、意外と落ち着いていた。
反論できなかった。
いや、反論する材料がなかった。
「次は、頑張れよ」
誰かが言う。
次。
その“次”に、
俺が前線に戻る未来は、もう含まれていなかった。
その日から、変化はさらに静かに進んだ。
ダンジョン前の作戦会議。
以前は、
「どう動く?」
「モブオ、どう思う?」
そんなやり取りがあった。
今は違う。
「今回はアレスが正面突破」
「リナは後方火力」
「カイン、サポート頼む」
それだけ。
俺は、少し離れた場所で荷物を整えていた。
「モブオ」
アレスが言う。
「今回は見張りを頼む」
「了解」
それが、会議のすべてだった。
呼ばれていない。
作戦を立てる“仲間”から、
いつの間にか外されていた。
気づいた時には、
それが当然の空気になっていた。
夜。
焚き火のそばで、剣を磨く。
刃は、よく手入れされている。
使われていないからだ。
光を反射する刃を見つめながら、
俺は思う。
努力が足りない?
才能がない?
それとも、最初からこうなる運命だった?
答えは、どれでもよかった。
重要なのは、
この世界では、数字がすべてを語るということだ。
そして数字は、
俺が“必要でなくなりつつある”ことを、
静かに、しかし確実に示していた。
切り捨ての準備は、
もう始まっていた。




