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【第五部完結】2万PV突破 勇者パーティーをリストラされた俺(モブオ)はC級スキルをどんどん集めて、ざまぁ無双する。  作者: 虫松
第四部 魔王軍侵攻編

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第8話 英雄たちの全力攻撃

勇者アレスが、一歩前に出た。


その背中を見た瞬間、

前線の冒険者たちは理解する。


ここからは、

英雄の仕事だ。


筋骨隆々の戦士ブレイブが息を呑み、

魔法使いリナが詠唱を止め、

僧侶カインが回復魔法を構え直す。


勇者アベルは、剣を握り締めた。


握力ではない。

覚悟だ。


「道を、開く」


短い言葉。

だが、それは命令ではなく宣言だった。


アレスの剣に、光が集まる。

一切の無駄を排した、単発集中型の全力攻撃。


・筋力

・魔力

・技量

・勇者補正


すべてを一瞬に束ねる。


周囲の空気が、震えた。


「うおおおおおおっ!!」


踏み込み。

加速。

剣閃。


それは、

これまで倒せなかった敵が存在しない一撃だった。


当たる。


確かに、

重層竜バルガスの頭部装甲に直撃した。


閃光。

爆音。

衝撃波。


前線が、白く染まる。


誰もが、

次の瞬間を疑わなかった。


だが。


――通らない。


剣は、止まっていた。


いや、

“挟まれて”いた。


バルガスの鱗が、

剣を受け止めたのではない。


鱗の層と層の間で、

力そのものを分散・吸収していた。


アレスの腕に、

信じられない感触が返る。


「……っ!?」


手応えが、

なさすぎる。


斬った感触でも、

弾かれた感触でもない。


消された。


バルガスの黄金の瞳が、わずかに動く。


そこに映っているのは、

英雄ではない。


“測定対象”だ。


次の瞬間。


バルガスの前脚が、

地面を蹴った。


速くはない。

だが、

避けるという概念を許さない質量。


空間が歪む。


衝撃が、

先に来る。


アベルの視界が、

裏返った。


「がっ――」


声にならない音。


鎧が、

悲鳴を上げる。


防御魔法が、

紙のように砕ける。


勇者アレスの身体は、

“吹き飛ばされた”のではない。


叩き潰されて、弾き出された。


地面に叩きつけられ、

数回、跳ねる。


血が、

砂に染み込む。


「アベル!!」


リナの叫び。

カインが走る。


だが、

勇者は立ち上がれない。


胸部装甲は陥没し、

呼吸が、乱れている。


剣を、

握り続けることすらできない。


重傷。


その光景を見て、戦場が、凍りつく。


英雄が、

一撃で、

戦闘不能。


前線指揮官の顔から、血の気が引く。

これは敗北ではない。

壊滅の兆候だ。


「……全軍……」


声が震える。


「前線、後退!!」


叫びに、

命令が混じる。


「全軍、後退だ!! 勇者を下げろ!!」


戦線が、

音を立てて崩れ始める。


冒険者たちが、

後ろへ、後ろへと下がる。


だが、

勇者パーティーは、まだ諦めていなかった。


「立て……アレス……!」


僧侶カインが膝をつき、

震える手で回復詠唱を叩き込む。


《ヒール》

《ヒール》

《ヒール・ブースト》


光が幾重にも重なり、

勇者の身体を包む。


砕けた骨が、

軋みながら戻る。


血が止まり、呼吸が整う。


「……まだ……いける……」


アレスは、剣を拾い上げた。


その姿に、戦士ブレイブが前へ出る。


「なら、俺が道を作る!!」


筋肉が、

膨れ上がる。


《パワーバースト》

《ヘヴィチャージ》


地面を踏み砕きながら、

全体重を乗せた突進。


単純。

だが、

人間の限界まで鍛え抜かれた“質量”。


「おおおおおおっ!!」


ぶつかる。


はずだった。


だが。


ブレイブの突進は、

止まった。


バルガスの前脚が、

“置かれただけ”だった。


衝突。


音が、潰れる。


ブレイブの身体が、

ひしゃげる。


筋肉が耐え、

骨が悲鳴を上げる。


「が――っ!?」


押せない。


動かない。


質量が、違う。


次の瞬間。


前脚が、

わずかに押し返される。


それだけで。


戦士ブレイブは、弾き飛ばされた。


地面を転がり、

数十メートル。


鎧が歪み、息が止まる。


「ブレイブ!!」


叫びと同時に、

魔法使いリナが詠唱を始める。


「下がって!

 次は、私が――!」


魔力が、限界まで引き上げられる。


《メテオフレア》


空が、赤く染まる。


巨大な火球が、

落ちる。


直撃。


爆炎。

熱風。衝撃波。


周囲の魔物が、蒸発する。


だが。


煙の向こう。


バルガスは、そこにいた。


鱗が、少し黒ずんだだけ。


層の一枚が、剥がれただけ。


その奥には、さらに重なった装甲。


リナの顔から、血の気が引く。


「……嘘……」


バルガスは、首を動かす。


たったそれだけで、

空気が揺れる。


「……火力はある」


低い声。


「だが、単発だ」


次の瞬間。


尾が、横薙ぎに振られる。


防御魔法が間に合わない。


カインが、前に出る。


「リナ!!」


《セイントシールド》


光の壁が、展開される。


砕ける。


一瞬。


尾が、壁を“切り裂いた”。


衝撃が、

三人をまとめて吹き飛ばす。


地面に叩きつけられ、呼吸が奪われる。


勇者アレスが、歯を食いしばる。


「……まだだ……」


最後の力を振り絞り、

再び剣を構える。


勇者スキル。


切り札。


《ブレイブ・リミット》


全能力、一時的極限解放。


剣が、白く輝く。


「これで……終わらせる!!」


踏み込み。


二度目の、全力。


だが。


バルガスは、初めて“受けに回った”。


胸部の装甲が、

重なり合い、

層が閉じる。


剣が、

突き刺さる。


途中まで。


だが、止まる。


層と層の間で、

完全に捕まる。


「……な……」


勇者の腕が、震える。


バルガスの瞳が、

アレスを捉える。


「理解したか」


その一言と同時。


胸部が、

前に出る。


体当たり。


避けられない。


勇者は、正面から受けた。


音が、消える。


次の瞬間、アレスは宙を舞った。


回転し、地面に叩きつけられ、

動かなくなる。


完全に、

戦闘不能。


沈黙。


勇者パーティーは、全滅に近い状態で、

地に伏した。


それを見下ろし、

重層竜バルガスは言う。


「連なる攻撃は、弱さの証明」


「一撃で終わらせられぬ力は、力ではない」


戦場に、

絶望が広がる。


誰も、

この竜を止められない。


その時。


戦線後方。

崩れていない一角が、まだ、戦っていた。


C級。+(プラス)。

重ねる力。


バルガスの黄金の瞳が、

初めて興味を帯びて、そちらを向いた。

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