第8話 俺達は冒険者になることを決意した
ギルド受付嬢 フレイン
俺と姫乃は、ガイレルの街で追いはぎに逢いかけたが身体能力が異様に向上していることに気付き、偶然にも撃退することができた。
だが何故、このことを女神フレーディアは教えてくれなかったのか疑問は残っていた。
そうして俺達は、目的の冒険者ギルドへたどり着くことができた。
扉を開けると、中には冒険者達と思われる格好をした者達が壁に張られている依頼書らしき紙を眺める者、雑談をする者、依頼を受けようと受付に群がる光景が飛び込んで来た。
それは、現世でよく漫画で見ていた光景そのものであり、小説が大好きな姫乃の目はギラギラ輝いていた。
「なんか新鮮というより、本当にこんな世界があったなんて……」
「そうだね……誰か異世界に行ったことのある人間が現世で話しを広めたんじゃないかって疑いたくなるよね?」
興奮気味の俺達の元へ受付嬢らしき女性が語りかけてきた。
「あの? ご依頼ですか?」
「あ、申し遅れました。私、受付担当のフレインと言います」
俺達は、依頼ではなくフレイゾンの街がどこにあるのかを知りたい旨を伝えた。
すると彼女は難しそうな顔をしながら説明を始めた。
「どうして、そんな所に……まぁ、事情はあるでしょうから深くは聞きませんが」
「(どういう意味だ?)」
彼女は、フレイゾンの街について語り始めた。
その街はケンゲシュタル王国というところにあり、その国はこのヴォルケン王国から4つの国を馬車や徒歩で移動するしかなく、最低でも2か月はかかると言う。
なぜそんなにかかるのかという疑問を問いかけると、その内の2国は戦争中であり、その国にたどり着く前のスノーア王国は吹雪が吹き荒れる高い山脈を越えなければいけないらしい。
「そ、そうなんですか……」
「だから、簡単には行けないのよ……貴方たち一般人なら、隣のハルバート王国まで行けるのがいいところね」
「……一般人なら?」
雪山ならある程度の知識があれば行けるのではないかと考えたが、スノーア王国の山脈には魔物が生息している上に、国内の街に辿りつくまでに雪山での野営が必要となり、安全に泊まる場所はないと補足する。
つまり、冒険者でないと厳しいのだ。
「(仮に、そこを超えても戦争中の国を抜けなければならない……か)」
「簡単に行けないってことですね」
「あなたたち、どうしても行きたいの?」
「なら、相当な依頼料を積めば、護衛の冒険者を付けて旅に出ることをお勧めするわ」
「相当な依頼料……」
「そうね、金2000ぐらいかしら……最低も2人は雇って往復で4カ月も拘束しちゃうからね」
「金2000か……」
――陽斗、貴方たちには異世界で生活するための準備金として金300をお渡しします。
そうですね……日本でいえば、金1は1万円と考えていただければ、当面の生活費としては十分でしょう? ――
「(2000万円……む、無理だ……フレーディアさん、借金させてくれないかな?)」
すると姫乃はフレインさんに食い付くように話しかける。
「あの、私達って冒険者になれませんか?」
「――ちょ待って、ミーナっ!」
最初は何を言い出すのかと思っていたが、話を聞いているうちに、生活費を稼ぎつつ自分たちで旅ができれば護衛を頼まなくてはいいのではないかと言うのだ。
ようはこの先、仕事を探し生活費を稼ぐといっても、自分たちは学生生活しかしていなくどんな仕事に着けてどのぐらい稼げるかもわからない現状よりは、先のフレインさんの話から護衛費から逆算し1か月で金250も稼げるということであった。
それだけではなく、自分たちの身体能力の異常さと自分の能力があれば、魔物の接近も察知しやすい利点もあり危険も回避できるという今の俺達には理にかなっていた。
「そこまで考えてるなんて、しっかり者だねミーナは」
「えへへ」
「じゃぁ貴方達、登録試験を受けてみない?」
そしてフレインに連れられ、裏庭に連れて行かれた。
俺達は防具を渡され、装着をしながら試験官からの説明を受けるのであった。
試験は対戦形式で、試験官に対して自分の決めた武器で戦い評価を受けるものだという。
「そうそう、怪我をしてもある程度治癒させるポーションがありますので、ご安心ください」
「さぁ、どちらから始めますか?」
「それじゃ俺から、武器はなしでもいいですか?」
「格闘戦ということですね? わかりました」
「では相手はヘーリエ、お願いします」
そして俺は、まともに格闘なんてしたこともなかったが、TVや映画でみたことのあるカンフーのような構えを取りヘーリエとの模擬戦が始まった。
ヘーリエは容赦なく拳で襲い掛かってくるが、さっきの追いはぎ達との闘いでも子撃が見えていた……そう、動体視力が恐ろしく向上している自分に気付いた。
そのおかげで拳はまったく当たらず、完全に受け流していた。
攻撃が当たらないと判断したヘーリエは、俺の服を掴み動きを止める作戦に出るが、蹴りを繰り出し吹き飛ばし壁に打ち付けるのであった。
それを見ていた、試験官が模擬戦を止めヘーリエの治療を始めた。
「やべ、やりすぎたか……」
しかし予想を反して、合格と評価された。
それを見ていた姫乃は意外と乗り気で、武器は無しで俺と同じ格闘の模擬戦を受けたいと申し出た。
「ミーナ、大丈夫か?」
「うん、がんばるよ私。ゲイツの目的を果たすために!」
「ではミーナさんは……そうですね女性相手ですから、同じ女性のパレス、お願いします」
そうして俺は姫乃の模擬戦を見守ることにした。
彼女は護身術を身に着けている上に、俺と同じように身体能力が向上していることはわかっていたが、護身術は「相手を倒すこと」ではなく「安全に逃れる方法」を重視する型であるため少し心配していた。
しかし、その心配をよそに彼女は奮闘していた。
「中々やるな……そういえば、追いはぎを投げ飛ばしていた――あれは?」
だが彼女は家の方針で色々させられており、護身術以外に柔道もそれなりの実力を身に着けていたことを後で知る。
そんな中、彼女はパレスの攻撃をかわしつつ、隙をみつけ首元の衣類をつかむや否や、背負い投げの体制に入り投げ飛ばした。
「そこまで! いやはや見事です。あなたも合格です!」
こうして2人は冒険者の試験に合格し、次の段階へ進むことになった。




