第6話 俺の目的が見つかった!
茂上 鋭子
俺は異世界で睡眠状態になったことで、現世で目を覚ます。
そしてその眼前には心配そうに見つめる両親と茂上刑事の顔があった。
「すまない、起こしてしまったね? 陽斗君……少しは寝られたかい?」
ふと時計を見ると昼の14時前だった。
事情聴取が終わったのは朝5時過ぎぐらいだったから、精神安定剤で8時間ぐらいは寝ていたようだ。
「だ、大丈夫です。おかげさまでぐっすり眠れました……が、ここにいらっしゃるという事は、何か進展が?」
「まぁ落ち着いて聞いてほしい――」
茂上刑事は今回の件で判明したことの報告を俺に始めた。
両親には既に説明がされていたようであったが、複雑そうな顔で俺を見つめていた。
まず注射器に入っていた液体……つまり、俺が致命傷になった原因……首の刺さりどころが悪かっただけかと思っていたが、その液体は筋弛緩剤だったのだ。
そう俺は、確実に命を狙われていたんだ。
そして看護婦の件は、両親とも無関係であったため警察はある1つの結論で絞り込んでいた。
それは――。
「え、その看護婦は脅されてやらされたってことですか?」
「おそらく……家族、いや、おそらく君に怨みがある人間からの依頼で彼女は犯行に及んだ……ここからは私の想像だけど、彼女は暗殺が失敗しようとしまいと自殺するしかなかったんじゃないかと思うんだ」
「……脅されていた?」
「……近からず遠からず……今、言えることはそんなところかな(彼女の腕には麻薬の跡があった……もう少し調査が必要だわ)」
その話を聞き、自分が殺される程の恨みを持っている人間がいるという事実に、顔に出して動揺してしまった。
それを見た茂上刑事は、犯行のプロファイル的には数日は襲われることはないと説得はされたが、冷静になることはできなかった。
「(――彼は、学校でも成績優秀でサッカー部のキャプテンをしている……素行にも問題はない……今の報告をしても怪しい反応はないか)」
「(そうなると、無関係者による逆恨みなのか……彼の事故の時に娘さんを失った二階堂氏や今回の事故現場の関係者周辺も調べてみるほうが良さそうだな)」
「陽斗君、一応、私の連絡先を渡しておく。何か気づいたり、身の回りでおかしなことがあったら連絡をくれたまえ」
「ありがとうございます」
そして茂上刑事は、また来ると言い残し職務へ戻っていくのであった。
その後、両親は俺の事を気づかい言葉をかけてくれるが、半ば放心状態になり何を言っていたのか聞きとれていなかった。
だが、そこへ学校帰りの瑠菜が何も知らずにお見舞いにやって来くるのであった。
「ねぇ、今日はなんか警察の人がうろうろしてるんだけど、何かあったの?」
その瞬間、我に返り、瑠菜を巻き込むわけにはいかないとこの件は隠しておくことにし、両親には目で相槌をうち何も知らないと笑いながら返答をした。
「ふーん、そうなんだ。物騒よね」
「そうそう、今日ぉ――」
瑠菜は学校で、俺が無事だったということをクラスやサッカー部の皆に伝え、その反応を嬉しそうに語ってくれた。
「でね今度の土曜日、彰浩達がお見舞いに来るってさ」
「楽しみだね」
瑠菜と居る間は不安な顔は一切見せず、笑顔を装い忘れようと会話を楽しんでいたが、あっという間に面会終了時間になり両親に連れられ彼女は帰っていくのであった。
――1人になると、再び殺されかけた恐怖に襲われ始めた。
出された夕食は喉を通らなかった。
もし毒が入っていたとしても食べれば3分前に戻れ助かると理解していたが、疑心暗鬼になり食べ残してしまった。
その後、どれだけ考えても自分の命を狙らう人間が誰かなど特定できず、ただ怯えるしかないのだった。
「(茂上刑事が何か突き止めてくれるまで、我慢するしなかいのか)」
そして俺は、医者からもらっている精神安定剤を飲み就寝することにした。
――意識がなくなったと思うと、異世界の朝がやって来た。
コンコンっ
「先輩、おはようございます」
「起きてますかぁ」
さっそく姫乃に呼び出されたが、現世で何もなかったように振舞い一緒に朝食をとることにした。
だが彼女は俺が寝ていた間に現世にいた事を知っているはずだが、何故か話を一切聞こうとせず、ひたすらこの世界の話に特化していた。
俺にとっては現世の話を避けたいと思われているのは好都合だった。
そのうちに、置物の人形が光だしフレーディア降臨し俺たちに語り始めた。
「おはよう陽斗と姫乃」
「「おはようございます」」
「特に変わったことはなさそうな反応ね?」
「(――そうか、フレーディアは現世に干渉できないって言ってたな)」
「(俺が現世で何があって、能力が使えた事はしらないのか?)」
フレーディアは昨日一日、俺の魂が2つになっている件を調べてくれていたらしく、ある有力情報を得たと言う。
それは、以前このままだと俺がどちらかの世界に淘汰され、片方の世界から消滅してしまう可能性がある件についてであった。
彼女が言うには、この異世界の何処かに俺と同じような転生を20年前に体験している人物が存在しているということ。
その人物の名前は宅間 透といい、こちらの世界ではスレイブと名乗っていると言うことしか分からないらしい。
彼は2つの世界で生きる方法を見つけ、その後、神と連絡が取れる人形が壊れてしまい連絡が取れなくなったという。
「つまり、こっちの世界でスレイブさんか、現世なら宅間 透という人物を探し出して方法を聞き出せば……」
「貴方はそれぞれの世界に不安なく一生を過ごすことが出来ます」
「(スレイブさんを探しだせれば、先輩、私と……)」
「先輩、私達の目的が出来ましたね」
「(姫乃……やけにうれしそうだな。そりゃそうか、俺が消えちまったら1人ボッチになっちまうからな)」
「あぁ。とりあえずは街で情報集めだな」
「そうですね」
時間軸の違いはあれど、おそらく生きていれば年齢は35~40歳ぐらいのはずであり、最後に連絡が取れたのはフレイゾンという街だと言い残し、彼女は消えてしまった。
俺は現世での問題は未解決だが、2つの世界で生きる光が見えたのだ。




