第4話 俺は自分の能力を理解する
俺と姫乃は異世界に転移したものの、この世界でどうやって生きていくかを悩み始めた。
そもそも女神フレーディアから、事前にこの世界には魔法の概念はないが、魔物は存在し国によっては戦争している国もあり、魔物は危険動物と考えれば現世の世界と何ら変わらないと感じた。
そして、俺達が転移させらた国はヴォルケン王国という戦争からほど遠く、魔物すら存在していないという。
「つまり、日本にいると思えば気が楽かもしれませんね」
「学業は現世の俺に任せて、ここでは2人でのんびりスローライフでもしようか?」
「(ふ、2人で……)う、うん」
一応、フレーディアからは魔法のない世界でも、安心して生きていけるように1つづつ自分で決めた能力を与えてもらっている。
――話しは、異世界転移する前の不思議な空間での3人の会話の場面に遡る。
「フレーディア様、能力ってなんでもいいんですか?」
「はい、空想で知識のある魔法でも一風変わった能力でもなんでも、1つだけしか与えられず申し訳ありませんが」
「そんな、私……魔法なんて言われても……決められないわ」
「あのフレーディア様、それって魔法でなくてもいいんですよね?」
「ええ、自分なりのルールみたいなものでもいいですよ」
「ただし、条件が付いてしまいますが」
「もう事故で死ぬのは御免だからな、例えば『死んだら生き返る』みたいなことなんて出来るのですか?」
「もちろん出来ますが……」
「先輩……それってゾンビじゃないですか?」
「――確かに冷静に考えたら、もし死んだ場所が火炎の中だったら……死んだ途端生き返ったとしても、業火に苦しみながらまた死ぬ……か」
「これじゃ、死の無限ループじゃねぇか……なら――」
そこで、俺はそれを踏まえフレーディアに能力を提案した。
それは『自分の身に致命傷となる出来事が発生すると、3分前の時間に意識が戻る』という能力である。
彼女はその条件であれば、付与できると受理してもらうことができた。
ただし、その内容は『自然死』や『病死』そして『自殺』などの場合はその能力は発動しないと念を押された。
「よし、それでいいよ」
「俺は決まったけどさ、姫乃さんはどうするんだい?」
「先輩みたいな感じでもよいのですか? だったら――」
姫乃は『近づく自分に対する悪意を察知できる』能力はできるのかを確認した。
すると、フレーディアはあっさり問題ないとうなづく。
ただし、これにも条件があり、自分から半径100m以内に居る生き物が対象であることであった。
俺は、なぜ彼女がそんな能力にしたのか疑問だった。
現世で体験したこと、一度は自殺しようとまで考えた彼女だったからではないかと察したが、あえて理由を聞くことはなかった。
「それは強い能力だね」
「それなら騙そうと近寄ってくる奴は、姫乃さんが居れば一発でバレちまうから安心だな」
「うん」
――ま、そんな感じだったが、スローライフで俺の能力は役に立つのかは疑問ながらも、外に出てどんな世界か2人で冒険をすることにしたんだ。
俺がこっちの世界に意識が覚醒したということは、今は朝。
つまり、寝るまでの時間はこちらの世界にいる。そして眠ると向こうの世界の朝が始まるというわけか……。
「(冷静に考えたら……俺、寝てる時間ってねぇじゃん)」
「どうかしたんですか? ゲイツ?」
「げ、(そうだった……)、いやなんでもないよミーナ」
「ちょっと考え事を……」
「まさか、もう現世に帰りたくなっちゃいましたか?」
姫乃は急に寂しそうな顔になり、出かける前の元気がなくなってしまう。
「あ~ごめんごめん、違うんだよ。俺、あっちの世界とこっちの世界で常に起きてるじゃない?」
「あ、そういうことですか? すみません変なコトを……」
「寝不足で倒れないでくださいよ?」
「そういえば人間って、寝ない生活を2週間ぐらい続けたら死んじゃうって言うじゃないですか? それって『自然死』扱いですよね?」
「あはは、それは……感覚的な問題でパラドックスってやつだよな。寝なくても、死ぬことはないだろさ」
そんな他愛のない会話をしながら2人はとにかく街を目指した。
フレーディアから事前にもらっていたこの世界の金を使い、街の様子を見ながら、生活に必要な物を買い出しすることにした。
2人は見る物見る物、現世とは違う斬新さに楽しくなり浮かれて、子供のようにはしゃいでいた。
そうしているうちに、時刻は夕方になり家に戻っていた。
「今晩、私がご飯を作ってもいいですか?」
「姫乃は料理できるんだ」
「えぇ、一応、嫁入り修行を高校1年の時からやっていましたので」
「(鋭才……いや、さすがお嬢様ってやつだな……でも、今日1日、普通の女の子だったけどな)」
「うん、楽しみだ! 俺は好き嫌いは無いから、なんでもOKだよ」
「ありがとうございます。では少し、くつろいでいてください」
「だ・だ・し、寝ちゃだめですよ。うふっ」
「わかってるよ」
「(こんなタイミングでも現世に帰ったら、朝になっているのかな?)」
そして、俺は姫乃の料理している姿を見ながら、にやけてしまっていることに気付いた。
「(あはは、瑠菜に怒られちゃ――)」
しかし俺は、突然意識を失ってしまう。
すると現世に、そうベッドの上に戻っていた。
だが、1つ話が食い違っている疑問に気付いた。
「(――朝じゃない? 何時だ……3:15? 誰にも起こされたわけでもないのに……勝手に目が覚めてしまった? じじぃか? 俺は)」
「(いや、フレーディアは誰かに起こされるか、異世界で寝るかしない限り……)」
最初は、初めて見る異世界の街にはしゃぎすぎて疲れて眠ってしまったのかと思っていた。
しかし、数分後――。
自分の病室の扉が勝手に開い――いや、誰かが入って入ってくる気配がしたのであった。
しばらく、目を閉じ様子をうかがうことにした。
だが、そこへ現れたのは注射器を持った看護婦であり、動けない俺の首元に躊躇なくそれを刺し液体を流し込む――。
――。
「(――朝じゃない? 何時だ……3:15? 誰にも起こされたわけでもないのに……勝手に目が覚めて――)」
違う! これは能力?




