第2話 え、異世界にも俺が居る?
俺は死んだはずだった……。
異世界転移されるはずだった……。
だけど、今は病院のベッドの上で寝ている。
そして今、目を覚ました俺に瑠菜が抱き着き泣きじゃくる姿を見て、生きていることを実感した。
「痛い、痛いっ、瑠菜っ、わかったから放してくれよ」
「嫌だよ! どこにもいかないでよ~っ! わ~んっ」
外で医者と会話をしていた親達が、瑠菜の鳴き声に気付き慌てて部屋に飛び込んでくる。
「瑠菜ちゃんどうし――! は、陽斗、目を覚ましたのね!」
その後の会話で、自分が生き返った理由を知ることになる。
瑠菜は俺の部活が終わるのを待って一緒に帰ろうと待っていたが、俺は誕生日プレゼントを買いに行くのに焦っていたため彼女に気付かずに走り去ってしまった。
それに気付いた彼女は後ろから必死に追いかけ、鉄筋の下敷きになる俺を見つけたらしい。
そして、瑠奈はすぐに救急車を呼び、俺に心肺蘇生と応急処置をしてくれていたのだ。
彼女は高校を卒業したら看護学校に入り看護婦を目指していただけあって、それなりの知識で適切な処置がされていたのであった。
数分後、救急車が到着し近くのこの病院に搬送され、2日間ICUで生死を彷徨うかの様に眠っていたらしい。
しかし、俺には確認しなければいけないことがもう1つあった――。
「なぁ、瑠菜」
「ん?」
「俺の他にも、女の子が居なかったか?」
その質問に彼女は顔を曇らせながら、隣の部屋に居る事と伝えながら涙ながらに震えた声で話始める。
「彼女も、助かったんだよな?」
「ううん、私は陽斗しか助けられなかった……」
「……彼女は同じ高校の後輩で、二階堂 姫乃さんて言うんだけど……顔は陽斗が覆いかぶさっていたから綺麗なままだったんだけど……」
「……」
「彼女の胸から下は鉄骨で悲惨な状態で、応急処置のやりようがな……かった……の……ううううぅ……」
その話を聞いて、夢でなく俺は姫乃と2人で女神フレーディアと一緒にいた事を確信した。
しかし、俺は生き返ってしまった。
俺がここに居る以上、姫乃は1人で異世界に転移して行ってしまったのだろうか?
「(一緒に行く約束をしながら、申し訳ないことをしてしまった……)」
しばらくすると、俺が目覚めた事を聞きつけた姫乃の父親が部屋を訪問してくるのであった。
正直、『姫乃を返せ』と怒鳴られるのではないかと萎縮していたが――。
「陽斗君、君だけでも助かってよかった」
「警察から野外カメラで当時の状況確認をしてもらった結果、君は姫乃を助けようとして巻き込まれてしまったんだね」
「ですが……本当に申し訳ありません、俺では助けられませんで――」
「いやいや、君は悪くない! 全てはあの現場会社の危機管理の問題だ」
「この後、その企業と保険会社と話し合いがあるが、君の医療費の全額と慰謝料も支払われるから安心したまえ」
「あ、ありがとうございます」
「……ありがとうは、こちらのセリフだよ」
「君のおかげで姫乃の葬儀で、顔を見てお別れをしてやれるのだから……」
「それと陽斗君、告別式は出席できないと思うが、退院したら一度墓参りに来てやってくれないだろうか?」
「もちろん、行かせていただきます(いい、ご両親じゃないか)」
そして両親は変に気を利かせ、二階堂社長を部屋から連れだし、瑠菜と二人きりにするのであった。
「そうか2日間も意識がなかったのか……瑠菜、誕生日を祝ってやれなくてごめんな」
「いいのよ、陽斗が生きててくれたんだもん」
「そうだ、意識さえ戻れば2週間後に退院できるって先生が言ってたのよ」
「そうか、なら退院したら改めてデートしような」
「うんっ」
その話ができた瑠菜は安堵し、面会時間が終わってしまったため両親と一緒に帰って行くのであった。
そして21時になり就寝の時間で部屋の明かりが消され、俺は何かに誘われるように眠りについた。
と……ると……陽斗先輩っ!
「どうしよう、折角、転移出来たのに先輩は眠ったまま起きてくれないのですか……」
「(でも、先輩の寝顔が……か、可愛すぎる……い、今なら……バレないですよね――)」
眠っている俺の顔に、姫乃の顔が近づこうとした瞬間、目を覚ました。
「きゃ~っ」
「ひ、姫乃さん? (あれ?)」
「ここは? もしかして――って! どうしたんですか? その格好は?」
俺の目に飛び込んできたのは、中世を思わせるような服装をした姫乃であった。
よく見れば、まわりの家具や部屋の様子もおかしかった。
さらには、俺の服装も見覚えがないものになっていたのだ。
「よ、良かった、私だけ転移が成功して……先輩は失敗してしまったのかと」
「いや、俺は? ん? 成功した? いやいやいや――」
「?」
さっきまでの現世での病院の記憶と事故当日の話の記憶もあるにも関わらず、この異世界の自分が存在している違和感で頭が混乱してしまった。
姫乃は俺が混乱している意味が解らず、事情を説明したが、生き返ったのなら何故、今、こっちの世界で意識があるのか疑問を感じ始めていた。
そこへ突然、女神フレーデルの声が部屋にある置物の人形から語りかけてきたのだった。




