第13話 俺は犯人の確証を掴むために動き出す
俺は姫乃の墓参りで遭遇した男、岩屋 剛毅が、俺の命を狙う人物ではないかと確信し始めていた。
偶然な出会いならともかく、茂上刑事からも岩屋関連の人物との接触は気を付けるようにと言われたばかりだったからだ。
それだけではない、よりによって姫乃のフィアンセだった男……俺だけ生き残ったことに逆恨みをしてもおかしくないということだ。
それに……初対面のわりには俺の事を知っているようにしか思えない態度であったことが気に食わない。
そこで俺は、それとなく二階堂氏に探りを入れるが、姫乃から聞いていた大雑把な情報ぐらいしか得ることができないのであった。
だが実際、犯人が自ら正体を現すのか? それとも牽制なのか?
岩屋の行動を見て犯人だと決めつけるには、動機からなにから材料が足らなかった。
この件は帰宅後に茂上刑事に報告することに決め、その場は瑠菜と墓参りをつづけた。
その後、俺達は二階堂氏に豪華な昼食に招待され、一生こんなことはないだろうなと満悦していたのであった。
――そんな中、俺は何か怪しい視線を感じ……いや、なんだろう……内心、感じたこともない殺気を浴びている気がしてたまらなかった。
「落ち着かないようだが……陽斗君、お口にあわなかったかな?」
「い、いえいえ、私だけでなく、瑠菜までご馳走になってしまい、申し訳ありません」
「(視線は……気にしすぎなのか?)」
「もともと無理を言って、来てもらったのはこちらの方だからね」
「――おっと……こ、この後なんだが……急用が出来てしまったため失礼するよ」
二階堂氏は、何かに気付いたかのように不自然に解散する話しをし始めた。
「そ、そうそう帰りは、部下に家まで送迎させるから安心してくれたまえ」
「(急用? ……さっき、岩屋が言ってた事なのか? なぜ、急に……怯えているようにも見えるが……) は、はい、お願いし――」
「あのぉすみません二階堂さん、せっかくの遠出ですので2人で街を散策して電車で帰りたいので、最寄りの駅まで送っていただいてもいいですか?」
「(る、瑠菜ぁ?)」
「ふふっ、わかったよ瑠菜さん。そうだね、2人で楽しんでおいで」
「ありがとうございます!」
そして俺達は二階堂氏と別れ、不安を忘れ近くの街で久しぶりに瑠菜とデートをすることになった。
そこでは食事中に感じていた殺気は完全に消え、事故に遭ってから初めて心から安らぐ一時を過ごすことができ大満足な1日になった。
――その夜、俺は茂上刑事に今日の出来事を報告する。
「岩屋 剛毅か……」
「ご存じなんですか?」
「あぁ、ちょっと訳があってね……今、詳しい事は話せないんだが」
「(やっぱり、ただのクソ野郎ではなさそうだな……)」
「まさか、アイツが君に接触してきたのか……わからないね(なぜアイツが彼の命を狙うのか? 全く、理由が見当たらない)」
「これでも私はプロファイリングが専門なんだが、犯人が自ら顔を出すケースは非常に少ない。ああいうタイプは金で人を操り自分の手は汚さない可能性が高いんだ」
「(ああいうタイプ? やっぱり、何かを知っている……)」
「つまり岩屋は俺を殺そうとした主犯ではなく、誰かに指示された実行犯の可能性だと?」
「だとしても自ら姿は現さないよ……もし、また遭遇したら連絡をしてくれ! こうして夜とかの1日の報告でなく速やかに!」
「あ、はい、わかりました(なんか、鬼気迫る言い方だなぁ)」
「とにかく彼にはいろいろある……うかつに近づかないようにするんだよ」
通話が終わり、俺はあの不気味さに気付いたとおり、警察でも何かを隠している節がある岩屋が犯人のような気がしてならなかった。
そんな不安を抱えつつも、遊び疲れと気疲れで睡魔に襲われ眠ってしまう。
そして異世界の朝がやってくる。
いつものように姫乃に起こされ朝食を一緒に食べている時の事、彼女が俺の不安な顔を察する。
「どうしたんですか? 先輩……現世で何かあったのですか?」
「え、あ、ん……」
「な、なんで急に?」
「――やっぱりそうなんですね。昨日の夜、今日から初任務を前にあんなに笑顔だったのに、顔が違うんですよ」
「(この世界に来てから毎日、先輩を見つめてますからね……違いはわかりますよ)」
「あはは、今まで隠しててゴメン」
「正直に現世で起こっていることを話すよ」
俺は姫乃が現世を忘れたいと勝手に思い込んでいると考え、異世界での生活に安心できるように心がけていたが、彼女は彼女で俺の現世での生活を心配してくれていた。
初日の夕方に夕食前に寝堕ちしてしまったことから始まる、現世での殺人未遂事件をきっかけに、自分が誰かに命を狙われていることを伝えた。
そして昨日までは何も起こらなかったことを前提に、フィアンセであった岩屋に墓参りで遭遇してしまったことを話した。
すると彼女は血の気が引いたように青ざめる。
「ご、剛毅さんが……先輩に……」
「そ、その話を聞く限り、あの人なら本当にやりかねない……」
震える姫乃を俺は抱きしめ、必死に落ち着かせようとする。
ここまで話してしまった以上、岩屋 剛毅について彼女から知っていることを聞き出すチャンスはこの時しかないと俺は悟った。
「なぁ姫乃……教えてくれないか? アイツがどんな奴なのかを」
姫乃は俺の胸の中で、緊張している俺の心臓の鼓動を聞いてなのか勇気を振り絞って彼について話を初めてくれた。
――そして俺は彼女が自殺したいと考えていたことと、当日、あの事故現場に居た理由を知ることになる。




