第11話 現世の俺の体も影響を受けていた
ついに退院する日がやって来た。
鉄筋の下敷きになりながらも2週間で退院ができる条件として松葉杖が必要だと言われていたにもかかわらず、ぎこちないが歩けるようになっていた俺を見て医者は驚いていた。
その話しを聞いた俺は、もしかしたらこっちの世界であの能力が使えたのように、体に異変が起こってるのかもしれないと考えていた。
それは手足が完全に回復してから試すとして、これで異世界と現世で2つの世界で生きていく方法を見つけたという宅間 透について調べることができる。
入院中、スマホで名前を直接検索にしみたが、facebookやXも本名での登録していないようだ。
それにそれらしい検索結果すら出てこなかった……しばらくは闇雲になってしまうが、何らかの方法でこっちの世界での彼を探すしかない。
しかし、それ以前に未解決の問題がある……誰かから命を狙われている件は未だに犯人すら分かっていない……。
茂上刑事からは退院前に電話があったが未だに犯人はめどが立っていないようだ。
当面は私服警官が交代で身の回りを見張ってくれているとの連絡はあったが、私生活は十分注意して行動しなければならないのであった。
――俺は2週間ぶりに学校へ登校する。
クラスではみんなに色々入院中の話で振り回されつつも、心から無事を喜んでくれたのが嬉しく思えた。
そして授業が終わり放課後になる。
「よぉ~し! なぁ陽斗、放課後はどうすんだ?」
「まぁ多少、動きはぎこちないけど松葉杖も無しで歩けるしな、リハビリがてらにサッカー部の練習に出るつもりさ」
「マジかよ」
「さすがに見舞いに行った時は、まさか1週間程度でこんなに動けるようになってるなんて、思っても見なかったが……」
「医者も驚いてたよ」
「でも助かるわ~正直、キャプテン様の居ない間は俺が代理で大変だったからな」
俺はサッカー部の副キャプテンであり親友である佐藤 彰浩と他愛のない会話をしている時に、ふと俺は姫乃の事が知りたくなり、瑠菜には聞けなかった質問をしてしまう。
「二階堂の事か? お前が早瀬以外の女に興味を持つなんて……クラスが違って良かったな」
「あはは」
「しかし、マジで知らないんだな? 学園で知らない奴がいたなんて、こっちが引くわ」
「まぁお前はガキの頃からの幼馴染で、しかも両家も公認の早瀬一筋だからなぁ、眼中には無いか……」
「でもよぉ、神様も酷いことするよなぁ、あんな美人が亡くなっちまうなんて……」
「そ、そんなに有名だったんだ(マジで知らんかった)」
彼女が亡くなった話しが広がった後、お通夜状態いや放心状態で授業すらまともに受けられない男子生徒が続出してたとかしてないとか。
女子生徒からもお姉さまとしてあがめられていたらしく、姫乃ロスが激しかったようだ。
「さらには弓道部のエースで2学年で成績はトップ、そして美人な上に17歳とは思えないスタイルの良さ――」
「(まぁ確かに……ごくりっ、スタイルは良かったな……姫乃……さんざん横で寝姿を見させられたからな……いかん、思い出しちまった)」
「? 特に大会なんてあると男子生徒が群がる始末で、あの袴姿に何人がお世話になったことか!」
「おぃっ(……俺も……なんか、すみません)」
「そ、そうなんだぁ……それじゃ、俺だけ助かったなんて……う、恨まれそうだなぁ」
「それは考えすぎだろ? お前が殺したわけじゃないんだから」
「それに助けようとしたことは事実だし、後輩のやつらも俺にはできない真似だと尊敬していたぜ」
「……」
正直、姫乃関連で他の学生からの恨みを受けているのではないかという線を考えていた。
冷静に考えれば事故に遇った2日目の夜までに看護婦を脅して筋弛緩剤で暗殺させようなんて、たかが学生ではどんなに恨んだとしても実行することなんてそもそも無理な話しなんだと。
「――って、他の女の話なんてしてる場合じゃねぇぞ! 嫁が来たぜ」
「陽斗~ぉ! 1日、体は大丈夫だった?」
「今日は久しぶりに一緒に帰る? それとも、本当に部活へ行くの?」
「すまない今日は先に帰っててくれないか?」
「くすっ、やっぱり動きたくってしかたないのね」
「わかったわ! 今晩は美味しいごはんを作って退院祝いをお母さん達がやろうって張り切ってるから早く帰って来てね!」
「相変わらずラブラブだねぇ~」
「うるせぇ! とっとと部活に行くぞ!」
そして部活に顔を出した俺を見たチームメイト達は、噂では鉄筋の下敷きになったと聞いていた割には普通に動いていることに驚きを隠せなかった。
そんな部員を横目に、体はまともにまだ動かせないとしても俺は確認したくて、リハビリという名目でゴールキーパーをさせてくれと言う。
「――いやいや、いくらリハビリってっ言ったってキャプテン無理ですよ?」
「陽斗ぉ、さすがにまた入院しても知らないぞ。俺、早瀬に刺されたくないぞ」
「いいからいいから、エースストライカー様、撃ってこいよ!」
俺はみんなの静止も聞かずに、とにかく部員に順番にシュートを撃たせた。
さすがに、足はまだぎこちなく動かせなかった為に飛びつくまではできなかったが、ボールは驚くほどに軌跡が見えていた。
そして、あまり動かなくていい範囲に飛んできたボールには、肩がまともに上がらなくても腕で弾き飛ばすことができたのだ。
完全に体が回復していれば、十分にボールを取られていたと皆は驚いていた。
それ以上に、傷の回復から想像していたが、思っていた通りこっちの世界でも身体能力が向上していることに驚いていた。
体が完全に回復した時に、どうなるか楽しみで笑いがこぼれてしまった。
「お前、本気で秋の全国高校サッカー選手権の予選に出るの諦めてないんだな?」
「あぁ間に合わせてみせるさ……9月までまだ3ヶ月もあるんだからな」
それから俺は確認したいことは十分できたので、先に部活を抜け急ぎ足で家に帰るのであった。
――しかし、その時は不審な車に尾行されてたことなんて気付きもしなかった。




