第10話 異能力者は重宝される?
ランク冒険者のハリスが救出に飛び込んでいった。
しかし俺は、ダンジョン入口にはスライムしかいないという事前情報と、姫乃の索敵にも1種類の魔物の反応しかなく、ハリスが言う話が正しいなら襲われても、脚が速くない上、さらにはすぐには殺されることはないという話が全く一致しないことに不安になっていた。
そんな中、ハウルが怪我をしている1人の冒険者を抱え戻ってくる。
「ミーナさん、ポーションを使って彼を介護してやってくれ! 俺は、他の冒険者を助けに行く!」
「あとゲイツ君、急いでギルドに行って緊急事態だと冒険者を数人、連れて来てもらえないか? ダンジョンには――」
「「!」」
ハウルが言うには、中にいた魔物はスライムでもホーンラビットでもなく、このダンジョンに居るはずのないゴブリンが生息していたという。
何故、存在していたか理由はわかっていないが、俺は急いでギルドまで走った。
その後、俺が3人の冒険者を連れて戻った頃、一緒にダンジョンに入っていた他の4人の冒険者達は大怪我はしているものの命には別条がなく、無事に救出されていた。
ハリスは連れてきた冒険者達と共にダンジョンの調査をはじめてしまい、初めての魔物討伐任務は中止となってしまった。
結果、前回の討伐までは初心者用のダンジョンとして準備されていたが、突如現れたゴブリンに攻略され住みかにされてしまったのではないかという結論で、今後はEランク冒険者用のダンジョンになってしまった。
「ごめんねゲイツさん、せっかく初心者用の案件だったのに中止になっちゃって」
「気にしないでくださいフレインさん」
「また、いい話があったら教えてくださいね。俺達は一回、家に戻るんでまた来ます」
しかし、帰ろうとした俺達をハリスが呼び止める。
理由は1つ。俺が異質の魔物の存在に気付き引き返して来たことを問うためであった。
「あの時はゲイツ君を馬鹿にして申し訳なかった。君の判断は誤っていなかった」
「もしかして、君は魔物の存在がわかるのか?」
俺は、魔法も存在しない世界でそういう異質の能力が存在している可能性……そうでなければ、そんな質問はされないと感じた。
ハリスから、SSランク冒険者のヘンリルという人物が魔物索敵能力という異能を持っていることを聞く。
他にも、SSランクでなくても上位冒険者には治癒ができたり、予知ができたり、遠くのものが見えたり等できる冒険者が存在していた。
――だが、俺は回答に困っていた。
自分の能力で殺されたことで危険が分かったなんて言えるはずもなく、姫乃の能力を話すと彼女が危険な現場に送り込まれてしまうと不安になっていた。
しかし姫乃は自分の能力について、自らそれらしい説明を始めた。
その話を聞いたハリスは大きく驚きはしなかったが、敵の種類まではわからないとしても十分な異能の持主だと評価しフレインを呼び出す。
フレインも試験や研修の時に言ってくれればと呆れながらも、姫乃の冒険者ランクをEに上げる手続きを始めてくれたのであった。
異能冒険者になると、毎月、ランクにより補助金が出るらしくEランクなので金10を支給してもらえるらしい。
それに仕事を優遇してくれる特典まで着いていた。
「そんなに異能が使える人は少ないんですか?」
「そうですね。冒険者でなくても生活に利用して黙っている人もいますね」
「でも持っているだけでギルドでは優遇しているんです。冒険者としてはこのような能力の持主は命綱になりますからね」
結果的に、一見先走ったかのような姫乃の発言は自分たちの有利につながるのであった。
彼女いわく、こういうビジネスチャンスは逃したら駄目だと父親から常々言われていたらしい……さすが、元お嬢様だ。
そうしてギルドで姫乃のランク改定の手続きをした後、夜遅く久しぶりにヴォルケンの我が家に戻るのであった。
「(これで、悶々とした日々から解放される~)」
「? 先輩どうしたんですか? そうですねここ数日、気が張ってましたからね」
「そ、そうだね。(いろんな意味でな)」
「今日は、遅いからゆっくり寝よう」
床についた俺は、寝る前にいろいろ考えた。
それなりに剣技を身に着けたつもりだったが咄嗟の反応は遅れ、結果、ダンジョンでゴブリンに致命傷を与えられてしまった。
動体視力や蹴りの力、反射神経が異様に向上しているのは、現世でサッカーでゴールキーパーをしていた身体能力が所以なのだと。
だから、手で武器を扱うよりはむしろ素手のほうが使いやすく、脚を主体に攻撃で使った方が向いているのではないかと発想を変えた。
――そして翌朝。
コンコンっ
「先輩、おはようございます」
「起きてますかぁ? 朝ごはんを食べませんか?」
食事の最中、いつものように人形にフレーディアが降臨してくる。
1週間以上も放置していたから半分すねていたが、身体能力が向上している件について確認したところ不思議そうな声で、そんなことはないと返答される。
最初は異世界転移が失敗している俺だけの恩恵ではないかと言っていたが、姫乃も向上していることを聞き、悩みながら原因を確認してくると彼女は消えていった。
その件は任せておくとして俺は朝食後、姫乃に寝る前に考えたことを説明し、今日は特訓に付き合ってもらうことにした。
そして家の庭に場所を移した後、割った薪を数本用意して俺に向かって投げるように説明する。
「先輩、本当にいいんですか? それじゃ、思いっきり投げますよ!」
その前に俺の両脚の外側には2本の剣を縛り結び付けていた。
そして飛んでくる薪に対して脚を振り回し、綺麗に真っ二つに切り落とす。
「凄いっ凄いです先輩! (きゃぁ~カッコいい~)」
「よし! この感覚だ! 姫乃! 色々な角度からどんどん投げてくれ」
こうして俺は剣の使い方を変え、脚に装着できるような剣の武装イメージを作り上げ、後日、ガイレルの鍛冶屋に相談に行き武器を新調してもらうことにするのであった。
姫乃も自分が武器屋で購入した弓が不満であったため、自分に合ったカスタマイズを鍛冶屋に依頼をちゃっかりしていたのであった。
彼女はもともと弓道部であったため目の良さと精密性には優れていた。
それだけでなく現世の時に家の方針で強姦対策として柔道やら合気道やら護身術まで身に着けていることでの身体能力も向上しており、実は俺よりこの世界に向いているのはではないかと思いはじめていた。
そんな複雑な思いをしながら2人で特訓を続けた。
そして5日後、新しい武器が完成するのであった。
時同じくして、現世の俺はやっと退院の日を迎えるのであった。




