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三題噺もどき4

朝シャン

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくななじゅうさん。

 



 パジャマの上を脱ぎ、洗濯カゴの中に放り込んでおく。

 棚から適当にタオルを取り出し、閉じられていた洗濯機の蓋の上に置く。

 どこで買ったのか知らないが、このマンションの家主が気に入っているカピバラのキャラクターが描かれたタオルだ。もらったのだろうか。

「……」

 我が家の洗濯機は、ドラム式ではない縦型のやつだ。

 ドラム式でもどうかと思ったが、なんやかんや掃除が面倒やらというのでやめたのだ。まぁ、掃除をするのは主に私ではないので、その辺はアイツの使いやすさも見ているが。

 そろそろ変え時だなんだと言っていたから、新しいのに変えるかもしれない。

「……」

 浴室のドアを開け、まだ脱ぎ切ってはいないが、シャワーを出しておく。

 湯船に浸かるわけではないので、少し温めるためにと、これは出してすぐは水でお湯が出てくるまで少々時間がかかるものだから、先にこうして出しておかないとよけに冷えることになる。

「……」

 来ていた残りを脱ぎ捨てて、まだ濡れていない床の上に足を置く。

 シャワーの音が室内に響く。

 外はまだ、明るくも暗くもない時間だが、私はもう日課になった朝シャワーの時間である。

 煙草の匂いがつくのが嫌とかで、毎朝入っているうちに当たり前になっていた。

「……」

 すこしだけ熱いシャワーで足元を濡らし、慣れたあたりで全身を濡らしていく。

 つい先ほどまでベランダにいたものだから、シャワーの熱が少々痛い。そこまで寒くはないだろうと高をくくって、薄手のままでベランダに出たのがよくなかったな……。今日は雨が降っていたので、そのせいで冷えていたのだろう。

「……」

 全身を濡らした後に、頭も軽く流しておく。

 冷えることがあるとはいえ、夜はどうにも寝汗をかくのだ。

 それを流すのにも、この朝シャワーは丁度いい。気持ちよく一日を始められるのは何においてもいいことだろう。あまり朝からぐずる事なんてそうないつもりではあるが。

「……ん」

 思わず前髪が目の中に入り、一瞬痛みに襲われる。反射的に前髪をのけながら、目をつむった。

 しかし前髪だと思ったそれは、どうやら何かの拍子で抜けたまつ毛だったようで、流したところで違和感が残った。

「……」

 地味に痛いのだこれ。浴室内につけられている鏡を見ながら、目の中に入り込んだまつ毛を取り除く。

 そういえば、世の女性たちはつけまつげというのをするのだったか……量を増やして長さを出すことに、残念ながら意味を見出せないが、まぁ、美しく見えるための努力なのだろう。長くても目に入ったらただの凶器だぞ。まつ毛なんて。

「……」

 なんと中取れたそれを、適当に流し、やるべきことを進めていく。

 今日は珍しく寝癖が酷くて、散歩に行くときは帽子でも被っていこうかと思ったが……こうして浴びてしまえば治せるから大丈夫だな。

 そんなに数がないので、帽子をかぶるとなるとそれに合わせて服を着ないといけなくて、あまり好きではない。好きではないと言うか……散歩をするのに合わない服装だから、あまりしたくないのだ。

「……」

 シャンプーボトルを数回押し、掌に液体を出す。

 適当に泡立てながら、頭全体を洗っていき、シャワーで流す。

 もう癖になっているのでどうにもならないのだが、流すときにどうしても目を閉じれないので入らないように気を付けながら流していく。直したい癖というか直すべき癖な気がするが、これで慣れてしまっているのでどうしようもない。

「……」

 かけてあったボディタオルを取り、水にぬらしていく。

 その上にボディソープをポンプから出し、泡立てていく。

 ある程度泡立ったところで全身をこすっていき、寝汗と一緒に落としていく。

 あまり香水のような匂いがするのは好きではないのが、安かったとかなんとかでフローラルな香りがするのを今は使っている。鼻が曲がるほどでもないが……。

「……」

 全身についた泡を流し、ついでに顔を洗って置く。

 洗顔料はそこらへんに置いてあるので、それを手に取り適当に泡立てて適当に顔に塗りる蹴るだけだ。あまり美容というのに興味がないので、申し訳ないが、まぁ、さっぱりするから洗っていると言う感じだな。

「――ふぅ」

 すっきり、さっぱり。

 今日も気分のいい一日になりそうだ。





「あがったぞ」

「……ちゃんと乾かしてきてください」

「……うるさいから嫌いなんだよ」

「乾かしますから、ソファに座っててください」

「……」

「じゃないと朝食抜きですよ」

「わかった」










 お題:帽子・カピバラ・洗濯

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