無限のゲーム - 絶望の先にある勝利』

第17章 日本最強のSランク、奈良匠――その名が響く時、全てが膝を屈する

闇に飲み込まれ、炎となり蘇る――死者の再生

人間の限界を超えた速度。

瓦礫の中を駆け抜ける彼の姿は、まるで残像のように霞んでいた。

しかし——

ギラッ！

公爵はすでに、その一撃を見切っていた。

ドォン！！！

彼の剣が唸りを上げ、空間を裂く。

黒き破壊の波が生まれ、その余波だけで床と壁が粉々に砕け散った。

飛び散る瓦礫、舞い上がる塵。

だが——タクミの姿は、そこになかった。

次の瞬間、彼は空中に現れた。

——公爵の頭上！

「——もらった」

破壊のオーラを纏う剣が、一閃。

古の戦士の頭蓋を貫く——

ズブッ！

骨がひび割れる音。

黒いエネルギーが爆発する。

しかし——

公爵は、立ち上がる。

その頭蓋が回復し、まるで戦いが何も残していなかったかのように。

だが、タクミは知っていた。

このペースでは、続けられないと。

その力が、確実に削られていくのを感じた。

今、この瞬間に敗北するわけにはいかない。

それが、彼の命、そして戦いの運命を決めるのだから。

プレイヤーは急に手を上げ、

死を越えてきた者だけが持つその確信を込めて、こう言った。

「——召喚！」

彼の手のひらから、黒い渦が激しく巻き起こる。

その渦は、周囲の光さえも飲み込み、彼を包み込んだ。

これはただの魔法ではなかった。

それは、彼の力、経験、そして存在そのものの共鳴だった。

一瞬のうちに、過去の影、彼が殺した者たちが、

まるで軍隊のように整列して現れる。

だが、それはただの影ではなかった——

彼の軍に加わったすべての存在は、死を認識することとなった。

その目には光はなく、ただ暗闇だけが広がっていた。

だが、彼らの体には力と経験が宿っている。

彼らの肉体は、ただのものではなかった。

それは死を象徴しながらも、独自の目的を持っていた。

これらの影は、単なる幻ではない。

彼らは武器を携え、死の瞬間に作り出した力をその身に宿していた。

一部は、骨と金属が融合したような鎧を身にまとい、

他は古代の遺物のような武器を使う。

それらは死の力に飲み込まれた存在だ。

彼らはタクミと深く繋がっている。

単なる道具ではなく、彼の力の一部となっていた。

「——行け！」

タクミの命令が響くと、影の軍勢が一斉に進み出した。

その動きは、まるで目に見えないように速かった。

だが、彼らの一歩ごとに、腐敗した匂いが立ち込める。

それはかつて人間だった証。

そして今、彼らはただ破壊だけをもたらす存在となった。

公爵は動きを止めた。

彼はその接近を感じ取り、その頭蓋が普段以上に青ざめているように見えた。

それはただの軍隊ではなかった。

それは、ただの力では倒せない軍勢だった。

彼らは影の支配者であり、彼らの進軍の一歩一歩が、部屋の中の光を弱めていった。

「——大胆な試みだ。しかし、そんな簡単に勝てると思うな！」

彼の声は抑えられていたが、その中には依然として脅威が感じられた。

公爵はこの挑戦を受ける準備ができていたが、その瞳にわずかな疑念が浮かんだ。

影の軍は散開し、部屋の隅々を埋め尽くし、すべての道を塞いでいった。

彼らは死者だけではなく、犠牲者の痛み、恐怖、そして死に際の苦しみをその身に宿していた。

それはただの軍隊ではなく、タクミが経験したすべての苦悩の具現化だった。

タクミ自身が前に進み出ると、彼の影たちもまた彼に従い、力と意志の塊となって動いていった。

「——お前は、自分がどんな運命を背負ったか、理解していない。」

彼の声は冷静で、ほとんど感情がなかったが、その中には冷徹な自信が潜んでいた。

骸骨は剣を握りしめ、怒りでその目を燃え上がらせた。

彼は理解していた。これは単なる戦いではない。伝統的な方法では倒せない、まさに悪夢のような軍勢だ。

だが、彼の力は骨だけではない。

それは破壊の技。すべてを滅ぼす力だ。

「俺が無理だと思っているのか？」

彼は呟いた。

その目は、黒い石のように不透過になった。

「なら、そうさせてもらう！」

何も恐れず、彼は突き進んだ。

剣が輝き、魔力がみなぎる。

その一撃一撃は爆発のように、すべてを粉砕していった。

すぐに影の中に飛び込む。

彼の剣が空気を引き裂き、切り裂き、まるで熱いナイフが油を切るように、敵を貫通した。

影は彼の攻撃で崩れ落ちた。

だが、それでも新たな影が立ち現れる。

その数は、無限とも思えるほどだ。

一体を深い闇に送り込むたび、新たな一体が現れる。

その力はほぼ無限に近い。

だが、伯爵は決して諦めなかった。

かつて、彼は決して折れることのない男だった。

魂を鉄のように鍛え、どんな存在にも屈しなかったのだ。

しかし、毎回の一撃で、彼は自分の力が尽きていくのを感じた。

体はもう、以前のような状態ではなかった。

力は消え、影から受けた傷が骨を少しずつ崩していく。

彼は何度も剣を振るった。

ようやく、その刃が最も大きな幻影を貫通し、すぐに塵となった。

だが、骨には暗い跡が残っていた。

影の接触でできたやけどだ。

軽い一撃が、命をかけた一撃へと変わっていく。

そして、力がほとんど尽きかけているのを感じた。

彼は一気に近くの敵を振り払ったが、その瞬間、頭蓋骨が割れてしまった。

「…重すぎる…」

彼は呟き、剣を持ち上げるのも精一杯だった。

その時、影が変わった。

影は収縮し、ひとつの巨大な存在へと合体し始めた。

その力は想像を絶していた。

それは死そのもので、眼は真紅に燃え、皮膚は夜のように暗い炎で覆われていた。

伯爵は深く息をついた。

体が震えていたが、剣をしっかりと握りしめていた。

これは最後の戦いだと理解していた。

だが、決して諦めるつもりはなかった。

一歩後退し、敵を挑戦的に見据える。

「面白い手だが、俺が誰か忘れたか？」

彼の声はかすれていたが、自信に満ちていた。

「俺は、常に勝者となる者だ！」

胸の中で内なる炎が輝き、剣が再び炎を纏う。

伯爵は一歩前に踏み出す。

その瞬間、巨大な影と正面から対峙した。

ただ一つの思いが頭をよぎる—決して後退せず、最後まで戦うこと。

強烈な一撃で影の塊を打ち砕く。

だが、傷だらけで膝をついてしまった。

運命はここで決まる。

力が尽きかけていると思われたその時、伯爵は突如として激しい怒りを爆発させた。

彼の頭蓋骨から、ひび割れた音と共に、耳をつんざくような非人間的な叫びが上がり、その声は城全体に響き渡った。

それは痛みや怒りの叫びではない。

それは、自らの運命を打破する決意を固めた者の叫びだ。

彼は膝をついたが、体は緊張で震えていた。

彼の体内に封じ込められた魔力が、一瞬で外に溢れ出した。

まるで彼の存在の奥深くから、壊れかけた体から闇のエネルギーが噴き出し、部屋全体を一瞬で照らした。

「俺は死なない！もっと強くなって帰ってくる！」

彼は叫び、言葉一つ一つで、壊れたように見えた頭蓋骨が新たな、不気味な形に変わっていった。

目は暗い火花のように赤く輝き、骨からは想像を絶する力が湧き上がった。

骨が軋む音、割れる音、それから彼は再び立ち上がる。

今、彼はもはや堕ちたボスではなく、全く異なる存在となった。

それは、すべての前の形を超え、完全な破壊をもたらす準備が整った存在だった。

彼の魔力は変化し、信じられないほどの力を得た。

HPゲージは再び満ち、その数値は空高く舞い上がった。

その変化は、外から見ていてもはっきりと分かった。

手に持つ剣は黒いエネルギーを脈打ちながら放ち、まるで刃そのものが闇の呪文で満たされ、すべてを引き裂く準備ができているかのようだった。

彼は背筋をピンと伸ばし、その姿勢はさらに高くなった。骨が引き締まり、以前よりもはるかに強靭になり、体からは圧倒的な闇のエネルギーが溢れ出し続けた。マントの裾が空気を切って、生き物のようにひるがえった。

伯爵はもうただの強者ではなかった。

彼は死をもたらす存在となっていた。

その力は、まるで城自体がその威力に震えているかのようだった。

「お前たちはみんな、俺の復讐の炎で焼かれる！」

その声は、地獄の風のように轟き、破壊と脅威を孕んでいた。

彼は剣を掲げた。

その剣からは、炎と闇が同時に放たれていた。

歩くたびに、城の床が砕け、まるで現実そのものが彼の存在に逆らっているかのように、石が割れた。

伯爵はもはや、以前の彼ではなかった。

新たな存在となり、かつてないほど強力で、致命的で、危険な存在に変わり果てていた。

その血は黒く、魔法は呪われ、彼の意図は、道を阻む者全てに生き残るチャンスを与えなかった。