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無限のゲーム - 絶望の先にある勝利』  作者: Marukuro Rafaella
第17章 日本最強のSランク、奈良匠――その名が響く時、全てが膝を屈する
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呪われし公爵の影――永遠に続く呪詛

エイ!

エエエイ! 目を覚ませ、このクソ野郎!


石造りの廊下に声が響き渡る。


——タクミは瞬きをした。


自分の体がまるで他人のもののように感じられる。


まるで悪夢の底から引き戻されたかのように。


彼は顔を上げた。


エリーザ。


髪は乱れ、怒りに満ちた表情。


だが……その瞳には、恐怖が宿っていた。


「おい、大丈夫なのかよ、クソが!」


彼女の鋭い視線がタクミを貫く。


タクミは沈黙した。


脳裏で光景がよみがえる。


炎。


公爵。


無意識に支払われた代償。


タクミは乾いた唇を舌でなぞり、かすれた声で絞り出した。


「……たぶん、大丈夫だ。」


エリーザは安堵の息をついた。


「ったく、驚かせんなよ!」


そう言って、彼の肩を軽く叩く。


「いきなり固まってさ……」


「何度も叫んだし、殴ったし、何発か思いっきりブチ込んだんだぞ!」


「なのに、お前は石像みたいに突っ立って、何も見えない目をしてた。」


彼女は一歩踏み出し、タクミの顔をじっと覗き込む。


「……何を見たんだ?」


タクミはすぐには答えなかった。


「……歴史だ。」


目の前の重厚な扉を見つめる。


「……そして、悲劇的な結末を迎えた歴史だ。」


タクミはゆっくりと重厚な扉を押し開いた。


――ギィィィ……


まるで瀕死の獣が呻くような、重く不吉な軋みが廊下に響き渡る。


目の前に広がるのは、巨大な広間。


闇。


ほのかに揺れる松明の灯りが、天井へと伸びる石の柱をかすかに照らしている。


空気は、死の匂いに満ちていた。


タクミは一歩踏み出す。


一歩。


また一歩。


靴音が重く反響し、闇に吸い込まれていく。


――そして、彼の視線の先。


遥か遠く、濃密な影に包まれた威厳ある玉座が、ぼんやりと浮かび上がっていた。


タクミが広間の中央に足を踏み入れた、その瞬間——


視界にシステムウィンドウが浮かび上がった。


警告

Sランクの敵を確認。


【名前】呪われし公爵

【真名】ライモンド・フォン・エシュボルン

【種族】堕ちし者

【脅威レベル】赤

【罪】裏切り


【スキル】

呪われた誓約 —— 魂と引き換えに力を得たが、愛するものを永遠に失う宿命を背負う。

不滅の慟哭 —— 心に悔恨がある限り、決して死ぬことはない。

英雄の絶望 —— 敵の最も脆い部分を感じ取り、そこを正確に貫く。


タクミの指先がわずかに震えた。


——これは、最悪の相手だ。


タクミは目の前に現れたウィンドウをじっと見つめた。


心の奥底で、この名をすでに知っていた。


ライモンド・フォン・エシュボルン。


愛のために己を売り渡した男。


だが、今ここにいるのは公爵ではない。


彼の影だ。


そして、その瞬間——


玉座の前の空間が揺らめいた。


闇の中から、ゆっくりと誰かの姿が立ち上がる。

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