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無限のゲーム - 絶望の先にある勝利』  作者: Marukuro Rafaella
第2章:新たな世界の始まり
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門の彼方に待つ者

数発の銃声が響いた。

最初の一発、次に二発、そして続けて数発。

音はあまりにも鋭く、まるで屋敷の壁が裂けるような錯覚を与えた。


最初は皆、動けなかった。

部屋の空気さえも止まったように感じられた。

しかし、その沈黙は一瞬で破られた。


「何だ、あれは?」


斎藤奈緒子が尋ねた。

声は冷静だったが、その中にはわずかな不安が滲んでいた。

彼女は夫に目を向け、その視線は彼を突き刺すように問いただしていた。


藤原貴津は素早く立ち上がった。

動きは迅速で、だが無駄のないものだった。

彼は決してパニックに陥るような人物ではないが、

常に決意に満ちたその顔が、今少しだけ緊張していることが見て取れた。


「偶然じゃない、」

と彼は言った。

冷徹で無感情な声で、「ただの襲撃じゃない。」


ラジオから突如として鋭い声が割り込んできた。


「ご主人様、攻撃を受けています。特殊部隊です。

警備はもう止められません。彼らが誰かは分かりませんが、武装していて、

すでに敷地内に侵入しています!」


貴津は体を硬直させた。

自分には多くの敵がいることを知っているが、

誰がここまでして直面する覚悟を決めたのか?

何者かが追い詰められ、絶望的な一歩を踏み出した。

そして、今や彼が知っている全てが危険にさらされていた。


「誰であれ、火遊びをしている、」

彼の声はさらに冷たく、厳しくなった。

「外部の警備を強化しろ。予備部隊は直ちにこちらに向かわせろ。」


対面に座っている弘人は、ほんの少しだけ眉を上げた。

彼は冷静だった、あまりにも冷静すぎた。

その瞳は空っぽに見えたが、今、彼の目には何か違うものが宿っていた。


綾奈は彼がゆっくりと立ち上がり、静かにドアに向かうのを見た。

その動きは滑らかで計算されていた。


「これは…あまりにもわかりやすい、」

彼は振り返りながら言った。

「誰かが単なる襲撃以上のことを仕掛けてきた。

今、私たちにはその正体を暴く唯一のチャンスがある。」


貴津は答えなかった。

彼の視線は無線機に固定され、新たな報告を待っていたが、

その顔には疲れが見えた。

まるで、彼が既に自分の家族の世界に新たなゲームが始まったことを知っていたかのようだった。

そして、今、そのゲームに足を踏み入れなければならなかった。

考える暇はなかった。


「私たちはただ黙って見ているわけにはいかない、」

彼は続けた。

「今この瞬間が、私たちにとって全てだ。

行動しなければならない。」


これまで黙っていた斎藤奈緒子が、ついに立ち上がった。

その顔には夫と同じ冷徹な冷静さが漂っていた。

彼女はこれから起こることに覚悟を決めており、その言葉には思わず重みが宿った。


「それで、どうするつもり?」

彼女の声は静かだが、その響きは命令のように圧倒的だった。


貴津は控えめに頷き、目を全員に向けて、

まるでチェスの盤上で一手一手を計算しているかのように、全員を評価した。


「誰が裏で操っているのか、必ず突き止める。

そして、その者たちには、相応の報いを与える、」

彼は言った。

次に出口に向かって歩き出しながら言った。

「行こう。」


その間、全員が緊張と期待の中で立ち尽くしていた。

その時、突然、激しい爆発音が響き渡った。

ドアが轟音とともに粉々に吹き飛び、

すぐにその穴から黒い防弾チョッキを着た男たちが突入してきた。

彼らの動きは素早く、調和が取れており、まるで攻撃の準備が整った獣のようだった。


綾奈はただ、チラリと見えたシルエットと、

彼女の意識を引き裂くような轟音を聞いただけだった。


「立て!膝をつけ!」

そのうちの一人が冷徹な声で命じた。

声は自信に満ちており、まるで全てを支配しているかのようだった。

彼はマスクをしていたが、彼のアクセントからアメリカ人だとすぐに分かった。

その話し方、発音、そして何よりその冷酷さから、

これは普通の作戦ではないことが伝わってきた。


綾奈はその瞬間、空気が重く静まり返り、

痛みと暴力の予感で満ちているのを感じた。

ふと、彼女の視線はドアのところに立つ警備員たちに向かった。

彼らは反応する暇もなく、

ひとりの特殊部隊員がにやりと笑いながら、

警備員の一人に向けて銃を撃った。

まるで、楽しんでいるかのように。


警備員は床に倒れ、

ゆっくりと苦しみながらうねったが、その苦しみは頭に撃たれた一発で終わりを迎えた。

彼の顔は苦悶に歪み、血が暗い川のように流れ出し、

白い大理石の床に広がった。


綾奈は震えを必死に抑えようとしたが、それはほとんど不可能だった。

恐怖の閃光が彼女の顔に浮かび、

彼女はどうにか自分を抑え、

パニックに駆られて逃げ出さないように必死で耐えた。


彼女の父、藤原高津は石の像のように立っていた。

ただし、その目は生き生きとしており、緊張に満ちていた。

彼の言葉一つ一つ、動きの全てが計算され尽くしていた。

この瞬間は、彼らがすぐにでも行動しなければならないことを予感させた。


「お前たちは誰だ? 何が欲しい?」

高津の声は冷徹だったが、その言葉は頼み事ではなく、

まるで彼の一振りで彼らを壊滅させることができるような、強い要求のようだった。


最初に話しかけた特殊部隊員は、高津の前に数歩近づき、

彼の顔に軽蔑的な笑みを浮かべた。

彼はマスクを外し、綾奈は一瞬固まった。

その顔は見覚えがなかったが、

彼の目には何か危険なもの、嵐の前の雲のような、古い力が宿っていた。


「俺たちが誰だって? 本当にわからないのか?」

彼は嘲笑を浮かべて、前に立つ男を見下ろした。

「俺たちはただ、俺たちのものを取り戻しに来ただけだ。シンプルだろう、藤原。」


彼の声は鋭く、冷徹で、その言葉に隠された意味は一目瞭然だった。

この男は単なる兵士ではない。

彼は単なる傭兵でもない。

そして、その事実を綾奈は本能的に感じ取った。


その瞬間、彼女の思考は矢のように飛び、

誰がこの命令を出したのか、誰が背後にいるのかを考えた。


「俺だよ、兄貴」

――その声は、どこか懐かしくもあり、同時に痛みを伴うほど異質な響きで、

骨の底まで突き刺さった。

全員が凍りついた。

特殊部隊員たちは少し後退し、

半円を作りながら、その全ての視線が冷徹な自信を漂わせながら歩いてくる人物に集中した。


彼は年老いていたが、

豊かな灰色の髪が高級なスーツの下に隠れていた。

だが、その体格はどっしりとしており、

まるで自分の体重で他を圧倒することを心得たかのように重かった。


顔はたるんでおり、深いシワが時の刻みを物語っていた。

しかし、その目――その目は何も語らずとも全てを語っていた。

そこには一切の哀れみも後悔もない。

ただ、すべてを捧げた一つの目的に対する、

計り知れない決意だけが宿っていた。

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