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無限のゲーム - 絶望の先にある勝利』  作者: Marukuro Rafaella
第14章 過去の記憶が蘇る!苦悩と決意のフラッシュバック
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回想の始まり—過去の秘密と未解決の謎が明かされる瞬間!

「次の章がこんなに遅くなるなんて、思わなかったな。いや、もしかしたら遅くはないかも?まあ、夜になると集中できるから好きなんだよね。ドアを閉めて、イヤホンをつけて、そして自分が作り出す世界に浸る。プレイリストが助けてくれるんだ。毎曲がまるで囁きのように、僕を導いてくれる感じ。


夜は僕の時間だと思ってる。静けさだけが周りに広がる。僕と、僕の思考だけ。


君もそう感じるだろ? 周りが静かになって、自分の中にいる。紙に生まれるものに没頭して。変な感覚だけど、でもそれがあるから他のことを忘れられるんだ。」

校舎の広間には、衝突音と荒い息遣いが響き渡っていた。


生徒たちはいくつかのグループに分かれ、木剣を振るう者、素手で打ち合う者、それぞれが技を磨いていた。


ここに迷いは許されない。


一手ごとに闘気が揺らめき、ひとたび隙を見せれば、容赦ない反撃が飛んでくる。


亀田隼人は壇上に立ち、冷たい視線で稽古の様子を見下ろしていた。


無造作に束ねられた長い黒髪が肩にかかり、前髪が顔を覆っていたが、彼は気にも留めていない。


年齢こそ若いが、そこには猛禽のような鋭さがあった。


まるで獲物を狙うような目。


ただ稽古を監視しているだけには見えなかった。


「遅い」


静かな声だった。だが、その響きには鋼のような重みがあった。


生徒たちの背筋が凍りつく。


「敵は、お前たちが振りかぶるのを待ってくれるとでも思っているのか?」


隼人は突然、壇上から飛び降りた。


次の瞬間には、すでに生徒たちの中に紛れ込んでいた。


誰もが何が起きたのか理解する間もなく——


彼は素早く木剣を拾い上げ、一瞬のうちに駆け抜けた。


反応する暇さえ与えず、すべての攻撃を封じる。


何人かは武器を取り落とし、ひとりはバランスを崩して背中から倒れ込んだ。


「情けない」


隼人は疲れたように息を吐き、再び中央へと戻った。


亀田隼人。


この技術学校の最上級生。


その影は他の生徒たちを覆い尽くすほどに巨大で、まるで山のようだった。


彼は誰よりも強かった。


——ただ一人、桂藤茂郎を除いて。


かつて、あの"呪術師"が言ったことがある。


「隼人こそ、私の後継者となる」


それが称賛だったのか。


それとも試練だったのか。


誰にも分からなかった。


——だが、それは決して祝福ではなかった。


それは、試練だった。


「目隠ししてても、お前らなんか叩き潰せるぞ、子犬どもが!」


隼人は木剣を軽く放り投げ、柄を掴み直した。


「もう一度だ!」


稽古は、まだ始まったばかりだった。


——だが、その時。


外から鋭い声が響いた。


誰かが叫んでいる。


廊下には荒い息遣い、重い足音がこだましていた。


生徒たちは動きを止め、緊張に包まれる。


全員の意識が、一瞬にして道場の外へと向いた。


誰かが仲間の肩越しに覗き込み、

誰かが武器を投げ出し、様子を確かめようと駆け出そうとした——


「俺がやめろと言ったか?」


張り詰めた沈黙を、隼人の声が切り裂いた。


刃のように鋭く、容赦がない。


彼は彼らを見もしなかった。


ただ、一歩、前へ。


迷いなど、微塵もない。


「続けろ」


淡々とした声音。


だが、その言葉には一切の反論を許さぬ圧があった。


隼人は扉を開いた。


差し込む強烈な日差しが、道場を真白に照らし出す。


そして——


外の空気が違っていた。


重く、張り詰めた空気。嵐の前の静けさ。


隼人は目を細め、ゆっくりと息を吸い込む。


土埃、汗、そして——遠くに漂う、微かな"脅威"の匂い。


そして、彼は"それ"を見た。


石畳の小道を駆け抜け、技術学校の建物を横切り——


一行は桂藤の私室へと急いでいた。


カヨ。


その顔には張り詰めた緊張が浮かび、目には強い決意が宿っていた。


彼女の腕の中には、アヤナの傷ついた体。


ぐったりと力なく揺れるその姿が、状況の深刻さを物語っていた。


背後には、パンダ、タケシ、ヒカル。


必死に彼女の後を追っていた。


その表情が、すべてを物語っていた。


ただの負傷ではない。


何かが起こった。


——それも、決定的な"何か"が。


「先生はどこ!?」


カヨの鋭い叫びが響き渡る。


その声は、彼女の焦燥を隠そうともしなかった。


道場の中心、住居と講義棟に囲まれた中庭付近——


そこで立ち止まっていた生徒たちが、驚きに身をすくませる。


「桂藤先生なら、お部屋にいらっしゃるはずです、カヨ様!」


一人が即座に答えた。


視線はカヨの腕の中のアヤナへと吸い寄せられ、息をのむ。


答えを聞くや否や、彼女たちは再び駆け出した。


迷うことなく、足を止めることなく。


「先生!」


カヨは勢いよく扉を押し開け、部屋の中へ飛び込んだ。


部屋には、柔らかな陽光が差し込んでいた。


桂藤は微動だにせず、そこに座っていた。


椅子の背に体を預け、無造作に足を机に乗せる。


まるで、外の騒ぎなどどうでもいいと言わんばかりに。


目を覆う布は、いつものようにその場にあった。


まるで、彼にはすべてが見えていたかのように——


いや、最初から彼は"知っていた"のかもしれない。


「……遅ぇよ」


振り向きもせず、桂藤は気だるげに呟いた。


「先生! 彼女が……彼女が死んじゃう! どうか、助けてください!」


カヨの声は、涙に濡れていた。


彼女は桂藤の肩を揺さぶる。


だが——


彼は、すぐには答えなかった。


ただ、静かに状況を見極めるように、沈黙する。


やがて、手を伸ばし、目隠しを外した。


その瞬間——


桂藤の瞳に、淡い霧がかかる。


そして、一歩、前へ。


カヨを軽く押しのけるように——


「……くだらねぇ泣き言は、もういい」


鋭い声が響いた。


冷たく、迷いのない声。


「そこらに寝かせろ。ベッドでも使え」


「……それと」


彼は一瞥し、吐き捨てるように言った。


「とっとと消えろ」


カヨは必死に涙をこらえた。


それでも、震える手でアヤナをそっとベッドに横たえた。


慎重に。


慎重に。


彼女を動かさないように——


それでも、指は止まらず震えた。


心臓が、破裂しそうなほどに打ち鳴らされる。


桂藤が、無言で歩み寄る。


その足取りは重く——


まるで、不吉な影そのもののように。


焦りはなかった。


まるで、"ただの作業"をこなしているかのように。


やがて、彼の手がアヤナの額に触れた瞬間——


時間が、凍りついた。


「……死なねぇよ」


短く、淡々と。


そこには、一点の迷いもなかった。


だが——


それだけじゃない。


その言葉はまるで"真理"そのものだった。


皮膚を突き刺すほどの冷たい"現実"。


カヨは息を呑む。


何を言われたのか、理解が追いつかない。


さっきまでの恐怖と不安が、急に色を失った。


……だけど、体は動かなかった。


「……本当に?」


掠れた声が、零れた。


まるで、信じることを拒むかのように。


「何度も言わせんじゃねぇよ」


冷え切った声が、部屋を貫いた。


「さっさと出ろ」


それは、命令だった。


桂藤は待った。


彼らが出るまで。


ドアが、重く閉まるまで。


その瞬間——


彼の瞳から、感情が消えた。


迷いも、なかった。


指先が、アヤナの肩をなぞる。


次の瞬間——


空気が、歪んだ。


紅い光が、部屋を満たす。


揺らめきながら、彼女の体を包み込む。


桂藤は集中していた。


外の雑音など、最初から存在しなかったかのように。


言葉も、動作も、必要なかった。


ただ——


"治す"。


それだけだった。

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