「時が止まることなく、ゆっくりと進む。静かな変化の中で」
――放せ、パンダ!
カイオの声には、怒りと必死の懇願が入り混じっていた。
もがいても、がっちりと掴まれた腕はびくともしない。
――あいつが一人でいるんだぞ! わかってるのか!?
――落ち着け、カイオ。
タケシの声は冷静で、しかし揺るぎない強さがあった。
――落ち着けるわけないでしょ!
あいつが……あいつがたった一人で、あの化け物たちと戦ってるんだよ!?
このままだと……殺されるかもしれないのに!
カイオは必死に叫ぶ。
タケシは深く息を吐いた。
だが、腕の力を緩めることはなかった。
――先生ははっきり命令した。
その声は平静だったが、目には確固たる意志が宿っている。
――学校の敷地内で待機しろ。
もし襲撃があった場合、生徒を守れってな。
俺たちが命令を破るわけにはいかない。
――命令なんて知るか!
カイオはタケシを睨みつけた。
――わかってないの!?
今あいつが戦ってるのは、ただの敵じゃない……
あいつなんだよ!
このままじゃ……!
声が震えた。
でも、すぐに唇を噛みしめる。
タケシはじっとカイオを見つめた。
そして、ゆっくりと首を横に振る。
――忘れたのか?
口元に、ほんのわずかに微笑が浮かんだ。
――あいつは最強だ。
カイオの呼吸が一瞬止まった。
最強。
それは知っていた。
わかっていた。
でも……それでも……
――もし……もし今度ばかりは……
カイオの呟きを遮るように、タケシが言った。
――ない。
その声は揺るぎない自信に満ちていた。
――あいつは勝つ。
いつだって、そうだった。




