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銀のMaZe  作者: fatum
ディオスクロイ編
13/24

第10話 芳香

「はい、止まって…そう、そこで一礼して。決して視線を上にあげてはいけません。その姿勢を『良い』と言うまで維持して下さい。」

有無を言わせぬ口調に従い淡々と言われたことを実行するが、直角とまではいかなくとも頭を下げたままの状態に息をつめた。なまった体にこの体勢の維持は結構辛い。

私の通う大学に、体育の授業は無かったのだ。

高校では帰宅部だったので、運動らしい運動といえば、ほとんど義務で入らされた中学三年の部活動が最後。

王への謁見準備の為、礼儀作法を習い始めた当初は、それほど激しい動きをしていないにも関わらず全身筋肉痛になってしまった。

特に酷かったのが背中。

昔、背筋はいきんのやりすぎで背中を痛めたときのあの痛みを、成人を過ぎてからもう一度経験することになろうとは露ほども思わなかった。

筋肉痛がその日のうちに来た事に喜びもしたが、なんだか凄く虚しかった。

(ていうか、いつまでこの体勢でいさせるつもりよこのオバサン。)

痛む背中も手伝って、だんだんとイライラは増してくる。

頭を下げているので見えないのをいいことに、側に立つ女教師の足を睨みつけた。

礼儀作法の教師として選ばれたのは、このオネルヴァという中年女性。

細いを通り越して痩せすぎなのではないかという腰をコルセットでぎゅっと締め上げ、白髪交じりの小麦色の髪を頭の上でひっつめた彼女は、みるからに「きつそう」だった。

その印象を裏切ることなく、彼女は指導一日目からスパルタ授業を開始した。

教え方はきつくとも教師としては優秀なのか、私の運動不足をいち早く見抜くと、今の様な容赦ない指導が行われたのだ。

王の前に出しても恥ずかしくないように。

全ては王の為。

一見忠誠心に熱い彼女の行動ではあるが、その言葉や態度の端々には私に対する隠そうとしない侮蔑が含まれていた。


私に関わる人々の抱く印象は様々。


「魔」かもしれないけれど、本当はただ髪と目が黒いだけの「人間」なのではないか、というのがアンやエリーを始めとする侍女組。


ちゃっかり「魔」だと信じている節があるウィル。


「魔」でも「人間」でも害をなすなら排除の姿勢のリガロ。


「魔」か「人間」か定かではないが、とりあえず面白そう、なセルファルカ。


それから…と考え始めて、はたと思う。

そういえば、ジェイはどちらだと思っているのだろう。

「どちらでも構わない」と言っていたのは覚えているが、彼個人としての意見を聞いてみたいような気もする。


それは兎も角、そういった印象にともなって変わる行動の中でも、特にオネルヴァは分かりやすかった。

潔癖症な彼女らしいといえばらしいのだが、こうもあからさまだと流石の私も気分は良くない。

これはあくまで勝手な予想だが、恐らく彼女の中の私は完全に「魔」として定義されているのだろう。


しかも、同じ「魔」と定義しているウィルとは捉え方が違う。


ウィルは、「魔」だと認識してはいても「人」の扱いをしてくれる。

けれどオネルヴァの場合、「人」の形をしていようが「魔」は「魔」――「獣」でしかない。

つまり、簡単にいえばこういうことだ。


――獣に人の教育をほどこして理解出来るのか。


必要以上のスパルタは、彼女にしてみれば犬をしつけるのと同じ。

一度や二度、言って聞かせたところで理解出来やしないと思っている。

実に単純で分かりやすい構図だった。


実際は自分で言うのもなんだが、それほど出来の悪い生徒ではないと思う。

一応、一人でも練習してきたのだ。間違いはなかったはず。

それでも彼女は小さな穴を見つけてはケチをつける。

ケチをつけること自体は別に構わないのだ。それが彼女の仕事であり、それを直すのが自分の仕事なのだから。

けれど如何せん、言い方とタイミングが気に食わない。

「…駄目ですね。」

ふぅと溜息を吐く彼女を、先程までの表情を消して見上げる。ほんの僅かでも「辛い」と顔に出せば、「これだから獣は」という視線が降ってくるのだ。

オネルヴァはやれやれといった感じで頭をふる。

「礼をする際、手を重ねてはなりません。必ず指先が相手に見えるようにして下さい。」

「…すみません。」

だったらもっと早く言え!という言葉を呑みこみ謝罪する。どうしよう。そろそろ何かの紐が切れそうだ。

「右手の親指の位置はここです。」

左手の甲を上にしたまま脈を測る様に右手の親指を下から添え、そのまま被せるように手首を掴むオネルヴァに疑問を覚える。

「先生、何故両手の指先が見えるようにするのですか?片手では駄目なのですか?」

覚えたこちらの言葉で問う。多少発音は悪くても通じたはずだ。

オネルヴァは面倒臭そうに眉を顰めたが、それでも説明の為に口を開いた。

何度も言うようだが教師としては優秀なので、聞かれた事には必ず答えるのだ。

「まず指先を見せるのは、自分の職種を明らかにする意味を持ちます。」

言いながら、自分の爪を指さす。

「例えば農夫であれば爪は丸く、指先は土の色をしています。また料理人の場合も爪は丸くはありますが、彼らは水仕事を行いますので肌は荒れます。けれどマリヴィル弾きなどは、弦をはじく左手の爪だけが短くなります。それなのに、先程の貴女のように左手を隠してしまっては、なんの職種か分からなくなるのです。」

そこで言葉を切ったオネルヴァは、ちらりとこちらの手に視線をやると、ふんと鼻を鳴らした。

「…日々何もせずのうのうと暮らしているような者は、貴女の様な手をしているのですよ。」

なにも苦労をしていない手だ、と言いたいらしい。

流石にイラっときた。

あんたに私の何がわかる?

確かに、世間一般的に見れば、「王子に飼われている」という今の状況は恵まれているのかもしれない。

いきなり名も知らぬ世界に飛ばされ、頼れる者も居らず、日々孤独に苛まれるという事実さえ見なければ。

いよいよ我慢の限界だ。

手に汚れや荒れがないならあんたも一緒じゃないか、と言おうとして、それは別の人物にはばまれた。

「どうやらオネルヴァ様の目は節穴のようですわね。」

部屋の隅に控え、一部始終を見ていたエリーだった。

エリーはふふふと可憐に笑うと、その場を微動だにしないまま言った。

「よく見てくださいな。ショーコ様にはペンだこがおありになります。一日二日勉学に励んだところでそのようなものはお出来にならないことぐらい教師という職をお持ちになるオネルヴァ様なら容易に想像がつくようなものですが?」

私は先程までの怒りはどこへやら、息継ぎもなしに今の言葉を言ってのけたエリーを戦々恐々と振り返る。

身分では上のオネルヴァに対して今の発言は不敬に当たるというのに、エリーはそんなことなど一切眼中にないとでも言う様ににこにこと笑みを浮かべていた。

ブラック、降臨。

私は慌てて部屋を見回した。いつも隣に居るはずのアンが居ない。

(どうしてこういう時に限っていないの!エリーを止められるのはアンしかいないのに!誰かアンを呼んで!)

私の願い虚しく、エリーはきれいな笑みを保ったまま続けた。

「それからオネルヴァ様は一つ大事なことをお忘れです。」

オネルヴァが眉を顰める。

子供が見れば逃げ出しそうなその表情に全く動じることなく、口には笑みをたたえたまま、エリーは大きな瞳をすっと細めた。

「手を見せることは職種だけではなく年を知る手掛かりにもなります。ショーコ様のようにハリのある御手に比べるとオネルヴァ様は如何です?」

私の世界でも医療技術の発展で、顔を整えればいくらでも年を誤魔化せるが、手の甲の皮膚だけは隠せない。

オネルヴァはかっと顔に朱をのぼらせた。

それでも流石王族に召し上げられるほどの教師というべきか、取り乱すことなく深く息を吸うとつんと顎を上にあげた。

「…今日の授業はここまでにします。明日、今日言った事を間違えずに行えるようにしておきなさい。」

右足を軸にして体を反転させると、カツカツとヒールを鳴らしながらオネルヴァは部屋を出て行った。

「あんなに音を立てて歩くなんて、なんてお下品なんでしょう。」

「エリー…」

ふぅと憂いの表情を浮かべるエリーに視線を向けると、「なんでしょう?」と微笑まれた。…何も言うまい。とばっちりを受けるのはごめんだ。

一人黄昏れていると、たった今オネルヴァが出て行った扉から、長い三つ編みを揺らして栗毛の侍女が現れた。

「今、オネルヴァ様が凄いお顔で出て行かれましたが…何かありましたか?」

「アン!どこ行ってたの!」

泣きそうになりながら飛び付くと、アンは驚いたように声を上げた。

「ショーコ様?如何なさったのですか?」

状況が分からず私に抱きつかれたまま部屋の中を見回すアンは、エリーと目が合うと「あぁ」と合点がてんがいったように頷いた。

「また何かやらかしたのね、エリー?」

「まぁ、やらかすだなんて人聞きの悪い。オネルヴァ様がショーコ様に間違った事を教えようとしていたから、ちょっと訂正させていただいただけよ。」

にこりと笑うエリーに、アンは申し訳なさそうに溜息をついた。

「お傍に居れず申し訳ありませんでした。」

「ううん、大丈夫。大分慣れたよ。私もちょっと鬱憤が溜まっていた所だし。それよりアン、どこにいっていたの?」

たいていアンとエリーは一緒に行動しているはずなのだが。

そう問うと、アンはぱぁっと表情を明るくした。

…なんだか物凄く、嫌な予感がする。

反射的に後ずさりした私を追いたてるように、アンはきらきらとした眼差しで一歩踏み出した。

「仕立て屋を連れて来たのでございます!」

仕立て…?

首をかしげると、アンはドアの外に顔だけ出して、「お入りください」と声をかけた。

そうして運ばれてきた色とりどりのドレスにぎょっとする。

胸元が大きくあいたデザインのものもあれば、背中がばっくりとあいたもの、紐で編まれ着方が不明なものまで多種多様。勿論首もとまで布で覆われたデザインのものもあるが、皆一様に裾が大きく広がっていた。

横にはしっかりと、ドレスの下に身につけるのであろう補強用の針金も用意してある。

ドラマやなんかで描かれる舞踏会で女性がよく着ている、あれだ。

唖然としながらアンに視線をやると、エリーと並んでにこりと微笑んだ。

着ろ、ということらしい。

今着ているような、ワンピースを腰布で縛っただけの簡易なものではなく、見るからに複雑な造りをしているこれがこの世界での正装なのだろう。

王の前で今の姿は晒せないという言い分は分かる。

分かるが。

自分が着ると考えるだけで、精神的に無理だった。

「あ、ショーコ様!」

「どちらへ行かれるのです!」

とりあえず逃げた。

アンとエリーの制止を振り切り、筋肉痛も忘れて駆け出した。

ここで逃げてもなんの解決にもならず、最終的には着なければならないであろうことも理解はしているが…嫌なものは嫌だった。

逃げ場所など一つしかない。

この世界に来て、自分の部屋と「そこ」の行き来しか、自分には許されていないのだから。

通い慣れた廊下を走る。一つ目の角を左へ曲がると間もなくして二人の兵士が守る扉が現れた。

猛然と駆ける私に驚く二人だが、入室を止めようとはしなかった。

バン、と体当たりをするように勢いよく扉を開けると、見慣れた銀が目に映る。

書類から顔を上げると、いつもと寸分違わぬ、きれいな笑み。

「どうした。」

「ちょっとかくまって。」

言いながら、ジェイの座る椅子の横にしゃがみ、ぴたりと体を寄せた。

木で出来たこの執務机は、よく職員室にあるあの机と同様の造りをしており、椅子が入る空間の両側には引き出しが付いている。身を縮めれば、人一人は余裕で隠れられるスペースがあるのだ。

息を顰め、じっとする。

ジェイは唇を孤に歪めると、それ以上は聞かず、黙って右手で私の頭を撫でた。

コンコン、とノックの音がすると、ジェイは「入れ」と告げた。

「失礼いたします。」

この声はエリーだ。

隠れているため見えないが、彼女の事だ、きっと完璧な礼をしているに違いない。

「お仕事中申し訳ありません。ショーコ様の行方についてお尋ねしたいのですが、どこに居られるかご存じありませんでしょうか?」

エリーの言葉にぴくりと肩を震わせると、ジェイは慰めるように頭を撫でていた手を肩に移動させた。

ここにいるのがバレるからやめろ、と言いたいが声を発せるはずもなく。

手を払いたくても、その不自然な動作が何を意味するのか、この有能な侍女がわからないわけがない。

私の逃げ場所がここしかないということにも当然気付いてはいるだろうが、エリーの上司であるジェイが「居ない」と言えば「居ない」のだ。

一縷の望みをかけ、ジェイを見上げた。

視線に言葉を乗せてじっと見つめると、ジェイは前を向いたまま、手探りで長い指を私の頬へ滑らせた。

輪郭を辿りながら指を下へと移動させると、猫にするように顎の裏を撫でる。

そのまま今度は上へと移動させ、赤い盛り上がりに達すると、端からその形をなぞった。

そのうちの一本が、口内へ侵入しようとする。

「…殿下?」

答えないジェイに痺れを切らせ、エリーが声をかける。

(ちょっと、匿ってって言ったでしょ!?)

言葉の代わりに侵入しようとした指先に軽く噛みつくと、くっ、とジェイランディスが喉の奥で笑った。

「…生憎とここには来ていない。」

その言葉にほっとしたのもつかの間、次の言葉にぞっとする。

「見つけたら伝えろ。逃げ場所にここを選ばなかった事、後で後悔させてやる、と。」

悪人の捨て台詞のごとく妖艶に笑むジェイに背中が冷えた。

その言葉を正面から受けたエリーの顔が強張ったのを私は知らない。

エリーは諦めたように溜息をつくと、頭を下げる。

「…畏まりました。お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。」

パタリ、という音と遠のく足音に、安堵の息をつく。

「い、行った…」

胸をなでおろす私を見ながら、ジェイは長い脚を組んで机に肘をつくと笑った。

「一体何から逃げてきた?」

「…ドレス。」

部屋いっぱいに運ばれたドレスを思い出す。あれは女としての丸みがはっきりとしている欧米人が着るから良いのであって、日本人である自分に着せたら絶対に似合わない自信がある。

「女なら好むものではないのか。」

表面上は不思議そうに聞いているが、内心では面白がっているに違いない。

期待にこたえるわけではないが、こめかみに指をあてると首を振った。

「自分が着るのでなければいいんだけど。」

「つくづく変わった女だ。」

「ジェイが見てきた女が全てだと思わないことね。」

といっても、この世界でドレスを嫌うのは自分くらいだとは思うが。

立ち上がると、唐突にくいと腰を引かれ、危うく転びそうになった。

ジェイの両肩に手をつく。

「ちょっと、危ないでしょ。」

転んで怪我でもしたらどうしてくれる、と言う前に、ジェイはにやりと人の悪い笑みを浮かべた。

「そろそろ褒美でも貰おうと思ってな。」

「は?」

「匿ってやっただろう?」

足の間に立たされ、いつもは見上げる男の顔を上から見下ろす。

窓から差し込む光を受けて、銀の髪がきらきらと輝いていた。

触れてみたい衝動に駆られ、そっと掬う様に手を差し入れてみると、絡むことなく指の間をすりぬけていった。

銀の睫毛に縁取られたラピスラズリの瞳が、私の姿をその目に映す。

ジェイの頬に両手を添えて固定すると、その青の瞳をじっと覗きこんだ。

ラピスラズリ。その音の示す意味は、群青の空。和名では確か、瑠璃、だったろうか。

群青という名が表すように、ジェイの瞳は青を幾重にも重ねたような色だ。

日本人にはない色彩。いや、それどころかここまで見事な青を持つ人間は地球にはいないのではないだろうか。

(それでもやっぱり瞳孔は黒いんだ。)

当たり前の事に妙に感動する。

まじまじと観察する私に、褒美のことなどとうに頭にない。

一度興味を持つといくら声をかけられても反応出来ないのだ。


それを心得ているジェイは、構わず「褒美」を得ようとする。

腰に回した腕を引きよせ、その肌に口付けようと距離を詰めた。


しかし、ジェイの息が首にかかった所で、はっとする。

この至近距離にならないと分からないほどではあるが、ほんの僅かに残る甘い香りが鼻をかすったのだ。

――染みついている

気付けば体を離していた。

さして強くは拘束されていなかったために、勢い余って後ろへ踏鞴たたらを踏む。

「どうした。」

この部屋に入って来た時と同じ科白せりふだが、入室時と違って不機嫌さを滲ませたそれに顔をそむける。

つい先刻まで無遠慮に観察していたジェイの青い瞳を、まともに見ることが出来なかった。

私はくるりと背を向ける。

「もう戻るね。」

「ショーコ?」

「匿ってくれてありがとう。」

それだけ言うと、来た時と同じように乱暴に扉を開け、その勢いに任せて駆け出した。


何故かはわからないが、今のジェイに触れて欲しくなかった。


自室への道を辿る。目的の部屋へ着くと、バタリと後ろ手に扉を閉め、ずるずるとその場に崩れ落ちた。

「ショーコ様!?」

「ショーコ様、どうなさったのですか。お顔が真っ青です。」

部屋にいたエリーとアンが駆け寄る。

胸が苦しい。走ってきたのだから当たり前か。

扉の前で膝を抱え、ぎゅっと縮こまる。

何故自分は咄嗟にあの場から逃げた?

あの匂いを嗅いだのは初めてではないのに。

(わけわかんない。)

自分の首筋に手をやる。ジェイが数日前、唇で触れたそこ。

あんな触れ方をされて、勘違いでもしたのだろうか?

「だとしたら馬鹿だよ…」

言いながら、跡が残るのも構わず、口づけられたそこに爪を立てた。


あの唇の感触が消えるようにと願いながら。




◆◆◆


とある暗い一室で、蝋燭の明かりだけを頼りに二人の男が言葉を交わす。

「もうすぐですね。」

「あぁ。」

主語のない端的な言葉に頷く。

「上手くやれよ。」

「わかってますって。俺の腕を信じてください。」

ぽんぽんと二の腕を叩く男に、豪奢な椅子に座る男は声のトーンを下げて忠告した。

「あまり自分の腕を驕るな。後で痛い目を見るぞ。」

椅子の傍に跪く痩せた男は、その言葉ににへらと笑って見せる。

「大丈夫ですよー。確かにこの距離と条件は初めてですが、御心配には及びませんって。」

軽く答える男に、椅子の上で肘をつきながら溜息をつく。

まぁいい。例え失敗しても問題はないだろう。

(「あれ」が飼う猫、か。)

大きな手で髭を撫でながら、椅子の上の男は笑った。


「…会えるのが楽しみだ、ミラ。」

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