表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀のMaZe  作者: fatum
ディオスクロイ編
1/24

序章

一生遊んで暮らせる金、羨望の眼差し、他者が羨むような完璧な恋人。

そんな非現実的なものを欲しいと思ったことはない。

そして今後欲しいとも思わない。

望むのは、教授が気紛れでも起こしてレポートの締切が伸びないかとか、朝起きたら天変地異でも起こって授業が休講にならないかとか、そんなありそうで無いようで偶にある、些細なことばかり。

俗にこれを現実逃避という。

その現実逃避さえも、テレビのアナウンサーが明るく次の日の晴天を告げた瞬間に終わる。

明日も天変地異は無いらしい。

私は荷物をまとめて大学の食堂を後にした。


大学から徒歩三分のこのアパートで一人暮らしを始めて早三年。

カン、カン、カン、と上り慣れた階段を上り、疲れた溜息をつきながら目的の扉の前に立つと、専門書でずっしりと重い鞄の中を漁る。


(資料集めたあとにぼーっとテレビ見てたらすっかり遅くなっちゃったな。ったく、学期末だからってレポート多すぎだっつーの。)


心の中で一人ごちながら、小さな鈴のついた鈍く光る鍵を取り出す。踊場の明かりを頼りにしながら鍵穴にさしてひねると、ガチャリという、聞き慣れたいつもの開錠の音。そうしていつものように、外した鍵を持ったまま冷たいドアノブに手をかけると、手前に引いた。


瞬間、唖然とする。


「どこ、ここ…」


目の前に広がるのは、自分の部屋へと続く狭い廊下…ではなく、鬱蒼と茂る森。


――芹沢硝子せりざわしょうこ、21。


これが、平凡な日常を過ごしていた私の非日常の始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ