110話 宿屋
俺達の元にやってきたハンガは泊まれる場所を伝えに来た。
「護衛の皆さま方、寝泊りできる場所が確保できましたのでその報告にやってまいりました。今からご案内しますのでついてきてください」
ハンガは笑顔で俺達に対応していた。
その笑顔を打ち壊さんとホーラルさんがハンガに質問した。
「その前に一つ聞きたいことがあるのだが、よろしいかなハンガ殿」
ハンガは聞きたいことがあると言われ、「聞きたいこととは何でしょうか!?」と言ってきた。
その平気そうな顔をうち壊すべくホーラルさんは少年から教えてもらったことを話し始めた。
「実は、ある提供者から重要な情報をいただき、そのことについて返事を聞きたくハンガ殿にお聞きしたいと思ったのです!!」
「重要な情報‥‥‥とは!?」
ハンガは先ほどまでとは打って変わり、緊迫した顔つきになっていたのである。
「税金のことです。この村にかけられた税金の額についてあまりにも高すぎると判断できる証拠を得られました。そのことについて説明を聞きたく伺いました」
ホーラルさんは高い税金の話をした後、証拠である実際の税金の書類を見せたのである。
見せられたハンガは一瞬だがおどおどした表情を見せた。しかし、すぐに顔色を変えていつもの表情に戻したのである。
そしてハンガは税金について話始めた。
「資料の名前がきられているので誰かはうかがい知れませんが、確かにこの村の住人の書類のようですね。確かにこの村では高い税金をかけられている者もいます。しかしそれはあくまでも罪を犯した罪人の税金の書類でしょう」
罪人の書類だと‥‥‥俺はしらを切ろうとするハンガにあきれていたのである。
「現にこの村では、税金を支払わない罪人に今まで支払わなかった分だけ高い税金をかけます。恐らくその書類に書いてある高い税金は今まで支払わなかった税金のぶんではないかと‥‥‥」
あくまでもハンガはしらを切ろうとしていた。
「これは税金を払ってこなかった分だとでもいうのか。いくら税金を支払わなかった罪人と言えども、今までの税金の回収のために、その分の税金をかけるなどはできないはずだ。それだったら、支払わなかった税金の額をまとめて支払うように通知するはずではないか!!」
ホーラルさんの言う通りである。今までの税金の分を支払うように通知すればいいのに、わざわざ税金に今までの税金の分を上乗せするのはおかしいやり方だ。
少なくともここの地域ではそのようなやり方は受けいられてはいないはずだ。
すると、言い訳が難しくなったのか、ハンガは謝ってきた。
「申し訳ありません。まとめて支払うように請求するやり方が分かりませんでした。どうか知らなかっただけと思い許してください!!」
ハンガは必死に謝っていた。
「やり方を知らないなど領主としてあるまじき行為だ。このことは王国に報告させていただく。なれど、本当にヨルド殿が知らなかったのであればこの件に関して、今回だけは王国は許してくれるかもしれんな!!」
ホーラルさんはやり方を知らないとは言語道断であるとしかりつけたのだった。
叱られたハンガは悔やんでいる表情をしていた。
「しかし、王国に報告すれば調査団がこの村に派遣される。もしこの高い税金をかけた相手が実は税金を今まで支払っていたなら話が違くなる。王国もそれは許さないであろう!! ともかく、調査団がくるまで首を洗って待っていることだな」
ホーラルさんは厳しい口調でハンガに言った。
言われたハンガは悔やんでいた。だがそれは悔やんでいるのではなく憎んでいるかもしれない一面が一瞬だけだが見えた。
なんとほんの一瞬だがホーラルさんをにらみつけていたのである。
その後、ホーラルさんが話を終えると悔やんでいたハンガは腰を低くしながらこう言った。
「この件に関しては本当にわたくし共の不始末でした。本当に申し訳ございません」
ハンガは必死で謝った。
「もうよい。それより、寝床の件はどうなったのですか!?」
「それでしたら、ご用意ができました。なので今からご案内します。よろしいでしょうか!?」
低姿勢でハンガはホーラルさんに問いかけた。
「構いません。寝床までの案内お願いできますか」
「はい‥‥‥分かりました」
こうして、俺達は証拠を突き付けるのを終えて、ハンガに自分たちが泊る場所まで案内させたのである。
案内されながら10分ほど歩いた。すると、今日泊まる場所だろうか宿に着いたのである。
村の中央にある宿はそれほど大きくはなかったが、清潔感あふれる宿だった。
「どうぞこちらの宿でお泊りください」
どうやらこの清潔感のある宿が今日泊まる宿のようである。
「わかった。ではお言葉に甘えてチェックインして来よう」
俺達は中に入っていった。
そして、宿の受付を済ました。受付する際、ハンガがとめられるようにこの宿の主人に耳打ちしていたのである。
受付を済ました後、用事を終わらしたハンガは俺達一同に礼をした後、宿を出ていった。
恐らくヨルドの元に帰り、高くかけられた税金のことを俺達が王国に報告することを知らせに向かったであろうことは容易に想像できた。
「それじゃあ受付も終わったし中で休むことにするか」
「待ってください!!」
俺は待ってくれとホーラルさんに言った。
「もしかしたら、この宿に何か仕掛けてあるかもしれません。調査しなくてもよろしいのですか!?」
「まさか‥‥‥そこまでやるとは思えぬが‥‥‥でも、念のためだ。下調べをしよう」
すると、アジトの襲撃の際に、ホーラルさんに報告しに行ったものが、下調べを行いますと挙手したのであった。
ホーラルさんは挙手した者に宿の下調べを行わせた。
下調べをその者は行い、しばらくしてホーラルさんに報告した。
どうやら、何もおかしな点はなかったようである。
一同は安心して、宿にある部屋の中に入っていった。しかし、俺はどうも何かが引っかかり、部屋の中に入るのを渋った。
俺はフロントで一夜を過ごすことにしたのである。