107話 ジーメン村
俺達は外からジーメン村を眺めた。
見た目はどこにでもあるような村にしか見えなかった。しかし、女性たちの証言を聞いたためか不気味さが村から漂っていたのだ。
しかも一歩一歩近づくたびに重苦しい雰囲気がしたのである。
もしかしたら、今現在も女性たちを性奴隷として扱い、男達は肉体労働されているかもしれない。そう思うと気が重くなるのだ。
だが、自分のことを心配ばかりしている暇はない。今現在も村人が酷使されているのであれば、救出しなくてはならない。
そのため、俺達は重い足取りながらも一歩一歩村に近づいた。
そして、しばらくして村の前に着いた。
俺達は一同深呼吸をして、村の中に入ったのである。
村の入り口には木でできた門があった。
そこで身分証の提示を促されたので、ホーラルさんが身分を明かした。
王国護衛の団体と知って、門番は驚いていたものの、怪しい点はなく俺達は中に入った。
村の中は、他の村と同様、木でできた家々が立ち並び、道などは地面をそのまま使っていた。だが、子供たちが幾人か見えたり生活を行う村人も見えたのでのどかな感じがしたものだ。
しかし、この門番を含めここにいる役人たちは奴隷を作り出しこき使っている最低なもの達の可能性が高い。
油断なく俺達は村の調査のため、村人たちに話しかけた。
「こんにちは。いま話を聞いてもよろしいでしょうか!?」
ホーラルさんが村人に質問した。
しかし、村人は逃げ出し、家の中に入ってしまった。その後も、ホーラルさんやその配下の者達が村人に質問したが、返事は得られず家の中に入ってしまってばかりだった。
「これでは、村人から話を聞き出すことができない。このままでは、ヨルド達の悪行の証拠を摑まえることができない。どうしたものか!?」
ホーラルさんは情報を聞き出すことができず困惑していたのだ。
「しかし、無理に聞こうとすれば怖がられますます情報を明かそうとはしなくなるぞ」
ボーランさんも前の時と打って変わり村人たちが情報を明かさないので困惑していた。
「前来たときは村人たちは話はしたというのに‥‥‥もしかして‥‥‥俺達がこの村に実態調査に来たことを感づかれてしまったのか!!」
「馬鹿な‥‥‥俺達の身分証を呈示してから、村人たちに接触するまでそんなに時間は経っていない。その間に村人たちに情報を与えるなど難しいはずだ」
ホーラルさんは混乱してさらに慌てふためいていた。
「確かに‥‥‥となるともしかしたら事前に情報が漏れていた可能性があるな」
「しかし、どうやって情報が漏れたんだ‥‥‥!?」
「これは想像だが、アジトを攻めた際に組織の者が逃げたのやもしれない。であれば、情報がヨルド達に届いてもおかしくはない」
「なるほどな。それは誤算だった。ではどうやって情報を入手する。奴隷として売りつけられる予定だった女性たちは証拠を持ってはいないし、その情報も持ってはいなかった」
「う~~む‥‥‥」
ボーランさんがうねった時だった。俺達一行の前にあの人物が現れたのである。
「これはこれは皆様方、こんなところで一体何をしてらっしゃるのですか!?」
現れた男に俺達は驚愕した。なぜならスイダークのリーダーかもしれない男が目の前にいるのだ。
そう、目の前には、情報の通り立派な口ひげを蓄えた細身の男とスキンヘッドで頑丈な体をしたヨルドとハンガがいたのである。
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