100話 アニキと呼ぶセリエルと共に襲撃を始める!!
一緒に同行している護衛の内の一人が、ホーラルさんに知らせに行って少し時間が経った。
俺達は、岩場から降りて、生い茂っている草むらの中でしゃがみこみながら敵のアジトの方を見ていた。
「何も変化はなしですかね!」
護衛の一人が言った。
「特にこれといった変化はないようだな‥‥‥‥‥‥んっ!!」
ボーランさんが何かに気づいたのか神妙な顔つきになっていたのである。
「どうかしたんですか!?」
護衛の一人が聞いた。
「アジトの方を見てみろ。複数の明かりが見えるだろう。その明かりを持っている複数の人間がアジトに向かっているんだ。しかも、移送用の馬車まであるぞ」
「じゃあ‥‥‥あれは、女性たちを迎えに来た奴隷商人の者達ですか!?」
俺がボーランさんに伺った。
「ああ、間違いない。あれは、奴隷商人の一行だ」
「となると、今から交渉が始まるんですかね!?」
「かもしれんな。しかし、そうなると、早くホーラルがこちらに来てくれないと、交渉が終わって奴隷商人たちが去っていくかもしれん」
敵は20人ほどの人数がいるので、ホーラルさんが来てからでないと、行動できないんだろうなと俺は判断した。
しかし‥‥‥ボーランさんは予想外のことを言った。
「もし‥‥‥奴隷商人の交渉が終わるまでにホーラルが来なければ俺達だけでアジトの者達をひっぱたくぞ」
ボーランさんは、ホーラルさんが来なければアジトを壊滅すると言ってきたのだ。
残った護衛の一人は慌てふためいているだろうなと思って顔を伺うと、慌てふためくどころか嬉しそうな顔をしていた。
「ホーラルさんが来なければ、俺達だけでアジトを壊滅していいんですか」
「ああ、やむをえんだろう」
「よっしゃ――!! それなら俺が活躍すれば、功績をだいぶあげることができるかもしれないぞ」
なんと、残った護衛の一人は自分が活躍して功績を大きく上げると自信満々に言っていたのである。
「功績をあげれると思えるとはよほど自分の実力に自信があるようだな。名前を伺っておいても構わないか」
「はい。私の名前は、セリエルと言います」
「セリエルだな。ではもしホーラルが奴隷商人の一行が去るまでに来なければ、俺達だけで攻め込む。その時はカルロスと一緒に行動するように!」
「はっ! 分かりました」
セリエルは嬉しそうな顔で返事をした。そして、次に俺の方に振り向いたのである。
「カルロスさん、あなたの武勇は伺っております。あなたと一緒に行動できて幸いです」
「こちらこそ一緒に活動出来て心強いですよ」
「「「ははははははははは」」」
俺達は小さな声で笑ったのである。
「あのついでにお願いといっては何ですが、あなたをアニキと呼んでも構いませんか!?」
「急にどうしたんですか」
「いえね。あなたほどの方をアニキとすることができれば、私は他の護衛の者に自慢できるんですよ。ですので、あなたをアニキと呼ばせてください」
「構いませんけど。私はガリエント王国を追い出されたものですよ‥‥‥それでもいいのならどうぞそう呼んでください」
「はい。ではアニキとこれからは呼ばせていただきますね」
こうしてセリエルからは今後アニキと呼ばれることになるのである。
その後、しばらく経ったが、ホーラルさんどころか使いに送った護衛の一人も帰ってこなかった。
俺達は岩場から再び観察していたが、どうやら待っている間に交渉が進みどうやら終わりそうな感じであった。
「このままだと交渉が終わりそうだな。残念だが、ホーラルを待っているわけにはいかない。先ほども言った通り俺達だけでアジトを襲撃するぞ」
「「はい!!」」
俺とセリエルが返事をした。
その後、交渉が終わり、奴隷商人が女どもを連れて行こうとしていた。
「もう待っていることはできないな。それじゃあ手はず通りに行くぞ」
「「はいっ!!」」
俺達は草むらを分けしゃがみこみながら進んでいったのである。
そして少しして、アジトの近くまでやってきた。なんとか監視の者達に気づかれずに近くまで来ることができた。
奴隷商人たちは、女たちを馬車の籠の中に入れようとしていた。
「もう待つことはできないな! よしっ! では、まず女たち安全を確保するために奴隷商人の近くに居る者達を倒すぞ」
「「はっ!!」」
俺達はボーランさんがあの一言を言うのを心臓バクバクしながら待っていた。
「襲撃開始だ―――――――!!」
敵に気づかれないようにボーランさんは襲撃の宣言をおこなった。
俺はセリエルと共に奴隷商人がいるところまで草むらを分けながら進んでいったのである。
そして、近くまでやってくると叫びながら攻撃を開始した。
「「覚悟しろ!! お前ら―――――――!!」」
セリエルと俺は、気迫がこもりながら奴隷商人たちを襲ったのである。
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