10話 財宝の取引
門の前で待機してだいぶ時間が経った。太陽の向きが変わっていた。
すると、豪邸から人が出てきた。門に近づく使用人らしき人影が見えた。
使用人らしき姿の人物は、門の前に来ると、話しかけてきた。
「お待たせしました。あなたが、取次を求めて早朝さけんでいたかたですか。」
「はい、そうです。」
「取次の依頼なら、決まった時間に門に取り付けてある鈴をならしていただければ執り行います。なので、早朝にいきなり大声で叫ぶのはやめてください。主人が早朝に起こされて怒っておりましたので。」
「大変申し訳ございませんでした。今後気を付けます。」
失礼なことをやってしまったという反省の気持ちを込めて、俺は謝罪した。
「わかっていただければ大丈夫ですよ。ところで、取引の内容を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「はい、実は、財宝を売りに来ました。こちらが売りたいと思っている財宝です。」
俺は、荷車の財宝の上にかぶせている大きな布を少しとった。
多くの財宝が少しあらわになった。それを見た使用人は、仰天しながら発言してきた。
「これは!! ‥‥‥‥‥‥あの‥‥‥お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「私の名前はカルロスといいます。」
「カルロス様ですね。‥‥‥すみませんが、取引が行えるかイムル様にお伺いを立てる必要がございます。なので、少々ここでお待ちいただけないでしょうか?」
「わっ‥‥‥分かりました。ここで待ちます。」
「ありがとうございます。では、一旦建物の方に戻ります。失礼します。」
使用人は、豪邸の方に帰っていった。
少しして、使用人が駆け足でこちらに向かってきた。
「お待たせして申し訳ございません。主人より財宝の売買の許可をいただきました。どうぞ中にお入りください。」
すると、鉄の門が開かれた。俺は使用人に促されるまま、荷車を運んで中に入った。
「わたくしが荷車をお預かりしましょうか?」
「ありがたいのですが、荷車には財宝を乗せているので自ら運びます。」
「そうですか。承知しました。」
その後、荷車を運びながら中に入ると、立派な庭が見えた。庭には噴水や、色とりどりの花々、立派な木々が生えていた。
俺は、それらを眺めながら、豪邸の玄関にたどり着いた。たどりつくまで結構かかった。それくらい広い庭園だった。
その屋敷はまさに白亜の豪邸で、玄関前から見上げるとさらに大きく重厚感を感じた。
「すみません、荷車は建物の中には入らないかと‥‥‥」
「では、財宝を布に包んで持っていきます。」
俺は財宝を布に包んで、手に持った。
「では‥‥‥どうぞ‥‥‥中にお入りください」
使用人は玄関の扉を開けていた。そして、中に入るように促されたのでその通りに中に入った。
建物の中も広く、床は大理石でできていた。壁や天井も壮観で色合いが美しかった。また、大きな彫刻や色鮮やかな絵画もあった。
指示された通りに進み、やがてある一室についた。そして、使用人は、ドアを開けて、長椅子に腰かけてくださいと言った。俺は、長椅子に腰を掛けた。
俺が長椅子に腰を掛けると、使用人が発言した。
「イムル様は現在準備中ですので、この部屋でお待ちください。」
使用人は発言を終えると、部屋を出てドアを閉めた。
俺はこの部屋でまた待つことになった。
そのころ、別の部屋で騒ぐものがいた。
「なんで、早朝に叫んでいた無礼者を家の中に入れたのですか?」
ご令嬢と思われる女性は早朝に叫んでいたカルロスに激怒していた。
「なんでも、その者が多くの財宝を売りに来たので、中に入れるようイムル様が指示なされたようです。」
「全くお父様も相手が多くの財宝を取扱いに来ると、人が変わるから困ったものです。あのような無礼者‥‥‥取引などせず追い返してやればよいものを‥‥‥」
ご令嬢は追い返せと使用人にまくし立てていたのであった。
そんなことが起きていると知らないカルロスは、部屋の中で待機していた。
「まだ来ないのかな。早くしてほしいな。」
すると、ドアをノックする音が聞こえた。俺は背筋を伸ばして、どうぞと発言した。
使用人は失礼しますと言ってドアを開けた。
「準備が整いました。わたくしが取引をする部屋まで案内しますのでついてきてください。」
俺は財宝を包んだ布を持って、案内された目的の部屋に向かった。
「こちらの部屋に、イムル様がおります。どうぞ中にお入りください。」
緊張しながら、部屋の中に入った。
部屋に入ると、下座の長椅子の近くでふくよかな男が立っていた。立派な口ひげをしていて、髪の色は白色だった。年齢は50から60歳ぐらいだった。
俺は、上座の長椅子に向かった。長椅子につくと、イムルさんが発言した。
「どうぞ、お座りください。」
俺は長椅子に座った。イムルさんも長椅子に座った。
「では取引に移ろうと思うがその前に、私たちがカルロス様に対して行った数々の無礼に対して謝りたい。大変申し訳なかった。」
イムルさんは俺に対して、礼をした。
「頭をあげてください。もとはといえば私が早朝に取引を頼みたいと叫んだのが悪いのです。イムル様が謝る必要はございません。」
イムルは頭をあげた。
「そうですか。そう言ってくださるとこちらとしてはありがたい。では、気を取り直して取引の方に移ってもよろしいですかな?」
「はい、お願いします。」
こうして、財宝の取引が始まった。
「カルロス様は、財宝を売りに来られたと、使用人から話を伺いました。あっていますでしょうか?」
「はい、私は財宝を売りに来ました。その財宝がこちらになります。」
俺は、重たい大きな布をテーブルの上に置いた。その後、大きな布をとると、財宝があらわになった。
「これは‥‥‥話には聞いていたが‥‥‥素晴らしい財宝の数々だ‥‥‥」
イムルは使用人から話を聞いてはいたが、実際に財宝を見て、驚きの表情をしながら目をキラキラさせていた。
「この財宝を私に売りたいということで間違いありませんね?」
「ええ、買い取ってくださいますか?」
「もちろん買い取らせていただきます。私は財宝を取り扱う行商人ですが、これほど素晴らしい財宝の数々はあまり見かけませぬ。買い取らなければ、行商人失格です。」
「ありがとうございます。」
その後、目利きを行う使用人が現れ、イムルさんと共に鑑定を行った。
「鑑定が終わりました。300万ゴールド程で引き取らせていただきますが、いかがでしょうか?」
(300万ゴールド‥‥‥300万ゴールドがあれば立派な家が一つや二つ立てられるぞ。それほどの金を受け取れるのか‥‥‥)
俺は大金を提示され、動揺したがすぐに返事をした。
「はい、その金額でお願いします。」
「ありがとうございます。では、この売買契約書にサインをしてください。」
「分かりました。」
俺は、契約書の内容をよく読んでから、契約書にサインをした。
「これで、取引は完了しました。カルロス様ありがとうございます。」
「こちらこそ、ありがとうございました。」
俺とイムルさんは握手をした。
その時だった部屋の外で使用人ともめている女性の声が聞こえてきた。
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