序章 魔王の城
空は血の色、草木も生えない荒れ地。
そこには、見る者を畏怖させる、魔王の城がそびえ立っていた。
すると、魔王の城に、空から翼を羽ばたかせた一匹の魔物が降り立った。
紫色の体に牙を生やしたその魔物が、城内にいた鎧の魔物に話をする。
話を聞いた鎧の魔物は、ガシャガシャと音を立てて一目散に走っていった。
鎧の魔物が向かうのは、魔王の御わす玉座の間。
「魔王様!大変です!」
慌てた鎧の魔物に対して、玉座に座していた魔王は、
優雅に血のワインを味わっていた。
「どうした、そんなに慌てて。勇者が攻めてきたのか?」
「その通りです!ファイアービーストが、勇者に倒されました!」
「何だと、ファイアービーストが?」
「それだけではありません。
アイスナイトも、ウィンドドラゴンも、サンダーリザードも、
反応が途絶えました!」
「何と、四天王が全滅したと言うのか。
勇者も中々やるではないか。」
くくく、と笑って魔王は長くて黒い爪の指先でワイングラスを弾いた。
笑い事ではないと、鎧の魔物が慌てて言う。
「魔王様、どういたしましょう?
このままでは、すぐにでも勇者がこの魔王様の城に攻め込んできます!
現有の魔物だけでは、苦戦は必至です。」
すると魔王は、今度は明確に笑い声を上げて答えた。
「ははは、よかろう。勇者がこの城に来るのなら、迎えてやろう。
こんな事もあろうかと、とっておきの宝具も用意してある。
吾輩が、人間の勇者など無力であることを思い知らせてやる。」
はぁっはっはという魔王の高笑いが、大きな魔王の城の外にまで響いていた。