アメリスアード世界編シーン60
富豪アルミナの語るレイラの過去とは。
俺の目の前ではアルミナというイカれた大富豪が笑い立ち尽くしている。
奴は金の力でやりたい放題してきた。
そんなアルミナの現在の依頼者であるレイラ。
彼女もまた…アルミナの金の力に屈するしか無かった女性だった。
「ふふ…どうしたの?レイラ?あ!そっかぁ!あんたの娘がここでホルマリン漬けになってるっていうのは話してはなかったわね?見られたって事は…ちょっと失敗したわね。」
「えっ!?」
初めて聞かされたであろう話に…驚きの表情のレイラ。
するとアルミナは語り出す。
「そうね…レイラも含めたあなた達の最後にちょっとした昔話でもしようかしら?」
アルミナは、その醜悪な顔を更に歪ませ語るのだった。
◇
あれは数年前…。
私は当時とある魔法協会で働いていて。
ここまで裕福な家ではない…ごく普通の生活をしていたわ。
だけどそんなある時。
私は『魔神具』という物の存在を知る事になった。
魔神を従える事が出来たなら。
魔神を従えずとも…等しい程の力を手にする事ができる何かを作り出せたなら。
そんな事を考えた私の『古代の兵器』とも『神の宝具』とも呼ばれる魔神具への興味はどんどん私の中で大きくなっていったの。
そうなった私は研究と開発の為に没頭したけど上手くいかず…。
そんな私の元に突然現れたのがそう…このレイラ…だったの。
普段…魔神具を持つ者…マジェストとは中々普通に生きていれば交わる事も見る事もない。
そう…力を持たない者は魔神を見る事も叶わない為だ。
だけど時として偶然…魔神具に関わる、またはマジェストの力が大きすぎる為に魔神が見えてしまう事がある。
そして偶然…私の前に現れたのがレイラ。
私は彼女の中に棲む、あの巨大な蜘蛛を見てしまったの。
◇
◇
◇
私は震えたわ…私の憧れの魔神だったバットスパイダー……でもね…実は彼女はまだ魔神を具現化したばかりだった。
この時…私の中では…いつかこの魔神を自分の物にしてやろうと。
そんな事を考えてしまっていた。
◇
彼女レイラはこの時、本当に困っていて、このアルミナの在籍していた魔法協会へとやってきたのだ。
その困り事とは。
実は、この時…魔神を発現させてしまったのはレイラの一人娘『レナ』だったのだ。
巨大な力を持つバットスパイダーの魔神具は鋼糸と呼ばれる鋼製の糸。
この糸に顔以外全てを巻かれ苦しそうな表情の娘『レナ』。
そう、先程のホルマリン漬けされた女子がそうなのである。
バットスパイダーの恐るべき力に弱る娘の『レナ』を救う為になんらかの方法はないか?と魔法協会を尋ねてきたという訳だったの。
そして私が彼女に提案したのは。
娘の身代わりにバットスパイダーを魔神としてその身に宿す事。
その為には彼女を仮死状態にでもしなければバットスパイダーは魔神としてきっとレイラを宿主と認めないであろうと。
バットスパイダーを宿し続けたらその身体が持たないであろうレイラの娘。
そして、そんな娘の代わりにバットスパイダーをその身に宿す事を決めるレイラ。
もちろんレイラの娘は、きっとあの魔神を宿したらすぐ食われて終わりであろう。
そしてレイラは元々魔神とのシンクロ率は良くは無い…だが、レイラは娘の事だけを考え…何とかここまで魔神を宿す事にも身体に恐るべき負担があったのだろうが受け入れた。
「だからーーーーーーーーっ!!!!!!!」
突然大声を上げるアルミナ!!
「私がいよいよバットスパイダーを宿せるってことよーーーーーっ!!!!!」
アルミナは叫ぶと膝からガクりと崩れ落ちるレイラ。
「あ!あれは!?」
「シェリル…なんだあれは??」
シェリルはアルミナを見る。
アルミナは小瓶の中身を飲み干し投げ捨てる。
カランコロンっと小瓶は地を転がる。
彼女の身体は具現化を強めていく。
きっと彼女が研究にて作り上げた薬。
「それは…【魔神薬】!?」
彼女の背後にはバットスパイダーの姿が!!??
「「な!なにっ!!???」」
「これは!?」
そうなのである。
今の彼女。
アルミナの望んだ事。
それはもう魔神を誰にも渡さない為に…自分事魔神と融合した姿。
「これこそが!!!???」
「私の究極の姿。これならば魔神とのシンクロ率なんて関係ない。いつ…いかなる時でも私とバットスパイダーは一緒。そう!」
「究極の魔神!!バットスパイダーINアルミナ!!よ!!」
「こんなっ!!??」
「ぅぅぅぅっ!!これは!?」
アルミナの声に、力無く…そして悔しく…唇を噛みしめるシェリル。
そして悔しさに声を上げるレイラ。
恐るべきバットスパイダーの体を自在に操りだし狂気の声を上げ始め…暴れ出すアルミナ!!
その身体は…自分の建物も何もかも、かまわずに破壊し始める。
◇
◇
◇
究極のモンスター化したアルミナは果たして??
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