最終章邪馬国編シーン74
この世界に魔王ゼルドリスの声だけが鳴り響いていた。
彼はこの世界で本当に最強の力を持ち存在している。
この世界に、もはや自分を止める者など存在しないのであろう。
果てしない海と空だけが魔王の目に映る全てだ。
『素晴らしい………ここからまた私の力で同族を増やし…今度こそ魔族の世界へと変えてくれよう。』
魔王ゼルドリスは感慨深くそう呟く。
すると。
『そうは……いかない………』
『なにっ!?』
ゼルドリスの背後に立つ……俺とカルマ。
「パパ……私は……パパとママを助けにきたの……それはずっと変わらない……そしてそれはここにいるクロノが私を支えてきてくれたからできた事なの……だから……今ここで私は…………………。」
カルマの魔神『フェリス』が現れる。
その姿は正に猫のナイトだ。
カルマはレイピアを構える。
『くっ……馬鹿め………今更そんな技等この魔王相手に通じるとでも思ったか!?』
その時。
魔王の動きが一瞬固まる。
『なんだ……これは!?身体が動かない……だと!?』
俺は魔王ゼルドリスの眼前に立つ。
「魔王ゼルドリス……お前の技は確かに凄まじかった…おかげで、今この地上に生存確認できてるのは俺たち三人なんだと思う。」
『ぐぬう……貴様……そこまで分かっているか……ならば絶望したらどうだ……この世界の生物……人間共…精霊共まで…お前の仲間達もこの私の力で葬ってやっったんだぞーーーーーーーーーーーーー!?』
「それは……知ってるよ…パパ………私だって辛いよ!!泣きたいよ!!魔王になったパパを本気で恨みたいよ!!!??」
泣き叫ぶカルマの本心。
それは俺も同感だ……これまで失ってきた 皆……俺たちと共にこの世界を守って倒れたヤシュア達……そしてここに来て魔王ゼルドリスの手により消されてしまった大切なサキノやリオ…テンテンにイシメール、エンポリオ……遠くにいた各国の仲間達も……今ではその存在が確認できないんだ。
するとカルマは涙を吹き…口を開く。
「私は許さない……覚悟しなさい魔王ゼルドリス……。」
「なにっ!?」
カルマの背後から剣聖フェリス。
フェリスは剣を構える……そして動けない魔王ゼルドリス。
『な……なんなんだこれは!?』
カルマは身構え……そして。
「フェリス……in the レイピア……奥義……『目醒め』」
猫の剣士とカルマが重なっていく。
ズザンッと振り下ろされたレイピアは動かない魔王ゼルドリスの残されていた右腕を断ち切る。
『うがあああああーーーーーーーーーっ!?』
軽やかな動きの魔神による斬撃により……ゼルドリスは叫ぶ…すると…………ぱーーーーーっと光が魔王の身体から抜けていく。
光はやがて立ち尽くしていたカルマの眼前になにかの姿になり現れる。
「パパ!!???」
「あかり………………」
抱き合う親子……そしてそこに舞い降りてきたのは……カグヤさん……いや…カルマの母…月子さんだ。
三人は再会に涙を流し喜びを噛み締めていた。
すると。
俺はその光景を眺めていると……背後に恐ろしいプレッシャーを感じる。
『ぐぬううう………貴様……この私の行動を止めているその力………一体。』
カルマにより身体を斬られはしたがそれは彼女の父親を解放する為の力だったようだ。
するとそこへ現れたのは魔神雷武。
『ゼルドリス……お前はどうやら全てを知らなかったみたいだな……』
『なにっ!?』
『お前が以前殺した俺様の弟になるべきだったあの男……そいつはあの勇者ラブラへと転生した…そしてそのラブラの転生先がお前の前に新たに立っている、この勇者クロノだ……つまり…このクロノには勇者ラブラの力だけじゃなく…俺様の弟……『時竜』の力も備わって存在する………そしてお前はもう既にその力に……支配されている。』
焦りの表情を浮かべる魔王ゼルドリス。
俺はゼルドリスの眼前に刀を構え立つ。
「魔王ゼルドリス……俺は今までここまで誰かを憎んだ事はなかった……そりゃそうだよな…俺がいた世界にはこんな争いなんて滅多にない事なんだからな……でもな……さっきお前は全てを失った事に絶望しろといった……確かに俺になんの力もなかったらきっと絶望してたかもな?」
「でもな。」
俺は目を見開く。
「お前がこの世界に存在する限りこの世界に光は届かない……そしてお前の遺恨を残してはお前はどこかでまた復活し…そしてどこかでまた悲しみが産まれると思う……だから…俺がここでお前を止める。」
『なん………だと!?』
ワナワナと震える魔王ゼルドリス。
ドワーフ王が俺に力を渡してくれたこの刀『真打刀……武神』を握り構える。
『さあ……雷武……俺の『時竜』の力…受け取ってくれよ………………』
『ああ……俺達の力で今こそ奴を。』
雷武はそういうとドオオオオーーーーーーーーーーーーンッと爆炎を上げるとそこに現れた黒きドラゴンが重なっていく。
そして巨大な赤と黒のドラゴンは再び俺の刀へと吸収されていく。
俺は再び刃を構える。
『バ!!バカな!?そんな力など!!?』
『ゼルドリス………最後だ。』
俺はゼルドリスへと超高速で斬りかかる!!
幾億とも数え切れない程の俺の斬撃が魔王ゼルドリスの身体を斬り刻んでいく。
『あがっ!?うああっ!!??ぐあっ!?ざ…斬撃が止まらん!?なんだこれは!?う……動けんんんんーーーーーーーーーーーーーーっ!?』
超高速の二色の力の斬撃……そしてやがて俺達の衝突している空間の周りには黒き球体に囚われていく。
『うがっ!!ぎゃっ!?うああっ!?』
激しい魔王ゼルドリスの叫ぶ声。
そして俺は改めて魔神具を構える。
『終わりだ……魔王ゼルドリス。』
『武神流……最終奥義……『時の竜刃』』
ズザザザーーーーーーーーーーーーーっと激しい衝撃音。
俺の斬撃は……魔王ゼルドリスの全てを………。
斬り裂いたんだ。
『ぐああああああーーーーーーーーーっ!?』
そして空間は激しい斬撃により塵と化した魔王ゼルドリスをも飲み込み……。
消えていったんだ。
残された俺は力無く……空間内に浮遊している。
『終わった…………か。』
漂う空間内……俺はこのままどこに飛ばされるのか……そんな事が脳裏に浮かぶ。
すると目の前に光から姿を現していく姿が。
『カル…マ………?』
『クロノ……帰ろう。』
『ああ……カルマ。』
彼女は俺を優しく抱きしめてくれる。
すると、その時……俺達の前に姿を現した時竜。
そして時竜から声が聞こえてくる。
『お前は我々の悲願を達成してくれたようだ……この……時竜の力……今こそ………使うがいい。』
『ああ…ありがとう……時よ………舞い戻れ。』
パーーーーーーーーーーーーーーッと光り輝き消えていく時竜。
そして………俺は意識を飛ばしたんだ。
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