最終章邪馬国編シーン71
魔王は地上に降り立つ。
ズウウウーーーーーーーーンと身体に重くのしかかるような威圧感をこの時…地上の誰しもが感じた事だろう。
サキノ視点。
私達が戦う中……急にこの地に恐ろしい力を感じたの。
本能で耳がぴくりと立ってしまう。
そして巨大な何かが降り立つような轟音が響き渡ると同時に爆風が吹きすさぶ。
そして敵味方問わず、静まり返り戦うその手を止める。
その巨大な何かに目を向けてしまう。
「えっ!?」
私は思わず目をそちらに向ける。
その時。
敵味方問わず…恐ろしい何かにより踏み潰された屍も見え隠れしていたの。
「こんな事って…………………。」
私の口からそんな言葉が漏れたその時。
私の脳裏に誰かの声が届いたの。
『サキ……ノ………ちゃん………』
誰?私に声をかけてきた声。
クロノなら…きっとサキノって呼ぶはず…ではこの声は?
クロノの配信はあの魔王の元へ行ったせいなのか…見えなくなっていたの。
でも、ここに現れたのは…やはり魔王……なんだと思う。
それならクロノは…どうなったの?
私が不安になったその時。
『サキノちゃん……僕だよ…』
「亀山さんっ!?」
『ああ……僕は今クロノちゃんから魔王の力で切り離されてしまったんだ…でもこれはある意味好都合だったかもしれない。』
「えっ!?それは……どういう事?」
私はそう問いかける。
するとその時。
「魔王ゼルドリス……僕達が相手だ……………」
そう言って魔王の前に立ち塞がったのはエンポリオさん。
隣りにはイシメールさんもいる。
「そして……ここには……。」
「私達もいるわ。」
鉄星さんとリオちゃん…フェリシモちゃんと鉄鬼丸君の姿も。
「皆………………」
私の元に集まってくれた頼もしい仲間達。
「よし……私だって…………カラーウルフ…いくよ。」
私は魔神具『夢の絵筆』を手にする。
すると何かの違和感を感じた私。
「カラーウルフ?」
『…………………………。』
カラーウルフからは何も聞こえない。
『カラーウルフ!?サキノだよ?どうしちゃったの?』
私は叫びかける。すると。
『サキノ……私よ………』
私の声に反応したのはママの声だったの。
『ママ……………』
『サキノはあれから随分大人になりましたね。』
『うううぅぅ……………うん……でも。』
『いいえ……実は魂となった私はカラーウルフと共にあなたの成長を見てきました…時に笑い、時には泣いて…そして他人の為に怒りそれに恋も……あなたはもう大人になれたのです…これからは大人になって…自分の道をゆくのです……。』
『ママ……でも私……ママがいないと。』
私は筆をぎゅっと握る。
『大丈夫よサキノ…あなたには沢山の仲間がいます…そしてあなた…本当の恋をしたのでしょう?』
私はその言葉にドキッと胸が高鳴る。
そして思い浮かんだのは…クロノではなかったの…私はずっと一途にそう思っていたはずなのに。
『その本当の恋が…きっとあなたの本当の力となってくれます……そしてそれはカラーウルフの進化にも…それは現れます。』
『ママ………うん……見てて私。』
私は涙を拭う。
そして魔神具である絵筆に魔力が戻る。
その時。
「はあああーーー〜っっ!?」
「魔王ゼルドリス!!??覚悟!!」
皆がそれぞれ魔王ゼルドリスとの戦いを繰り広げている。
私も………行かなきゃ!!
そう思うもやはり魔王の威圧感に震えを感じる。
その瞬間……。
魔王ゼルドリスは私に目を向けていたの。
『確かお前……聖獣の血か……よし…ならば……その力…私に差し出すが良い。』
魔王はそう呟き……巨大な手が勢いよく私に迫る。
動いて、私の身体……私強くなりたいっ。
『魔神玄武………降臨。』
「えっ!?」
ドガーーーーーーーーーーーーンっという烈風が巻き起こる。
「きゃっ!?」
私は目を微かに開けながら光景を見ていたの。
するとそこには…私を守るようにだき抱えてくれてる亀山さんの姿があったの。
「亀山さんっ!?」
「サキノちゃん……おまたせ。」
にこりと笑顔の彼に私は思わず抱きつく。
「亀山さんっ!?」
「おわっ!?サキノちゃん!?」
私は涙を零しそして抱きついていたの。
私をなだめながら亀山さんは言葉にする。
「サキノちゃん…あの時君と話してからやっぱり僕は君に何かを感じていたんだ…そしてさっき君の魔神と話していたんだ……君をよく知るカラーウルフと……」
「そうなんだあ……でも助けてくれてありがとう…でもカラーウルフとの話ってなあに?」
「うん…カラーウルフは…あ、これは後で話すね……それで僕ね…クロノちゃんの力になろうと魔神具化もして頑張って戦ったんだ……でも…未熟だった僕は魔王に弾かれてしまったんだ。」
「亀山さん…でもそれは敵があの魔王だもん…仕方ないよ………。」
悲しげな亀山さんの姿。
私だってクロノの力になれなくて…でも…そんな私は亀山さんの気持ちが痛い程分かる……。
「私達同じだね?」
私は涙目でそう声にする。
すると亀山さんは私の肩に手をかけ…目をじっと見つめてくる。
ドキドキ彼を見つめる私。
「サキノちゃん…僕達は同じ獣人だ…そんな僕達は思いも同じで…どこか似てるのかもね。」
「うん。」
そう語った亀山さんの言葉に頷く私。
「それなら僕と一緒に戦おう……クロノちゃんもきっとここに来るのを信じて……僕達二人ならきっと………………」
その瞬間……私の中に何かが宿った気がした。
聖獣と呼ばれた事があった私の全身を巡る血。
そこに流れ込んできたのは神の力なのか…亀山さんを全身に感じたの。
神獣の亀山さん、聖獣の私は今亀山さんに運命を感じてる。
そして……それは亀山さんとの強い繋がりを実感したの…そう……以前……ヨーロディアで言われたマジェスト同士の相性がいいと百パーセント以上の力を発揮できると……私達の相性はこの時。
「亀山さん…?」
「サキノちゃん……今分かったよ……」
「私も………亀山さん……私。」
亀山さんは私を抱きしめ……そして彼の唇は。
次の瞬間。
どおおおおーーーーーーーーんっと私の身体から何かが溢れ出す。
『何事だ………?ん?』
魔王は私をじっと見つめる。
「私は聖獣……サキノ………そして。」
『魔神カラーウルフ……限界突破。』
どーーーーーーーーーーっとカラーウルフは宙に舞うと光り輝く。
そして……天女の羽衣を纏いし魔神が現れる。
『カラーウルフ…改め…クイーンウルフ……いっけえええーーーーーっ』
「サキノちゃん…なら僕も…魔神玄武……『限界突破……』ゆけ玄武…。」
亀山さんの玄武…亀と蛇の頭部を持つ神獣の真の姿を見せる。
炎と氷…そして風と土の嵐…カラフルとも呼べるその力は私達の力が融合し魔王ゼルドリスに向かっていく。
私達の力が重なり巨大な衝撃を生み出す。
『くっ!?小賢しい…吹き飛ばしてくれる!!??魔王烈風』
魔王の大鎌から激しい力を発生させる。
激しい力と力の衝突により地上は大地が揺れ暴風が吹き荒れ荒れ狂う。
そしてズガガガーーーーーーーーーーーーーンッと衝突する激しい力のぶつかり合い。
するとその力は徐々に掻き消され消えていく。
私達は微笑みあう。
『サキノちゃん……僕達二人ならなんとか抑えれる……かも!?』
『亀山さん……うんっ!!』
そして私は振り返る。
『皆………クロノとカルマお姉ちゃんがくるまで……頑張ろう。』
◇
◇
◇
お読みくださりありがとうございました。




