最終章邪馬国編シーン69
『クククッ……あっはっはっ……あーーーっはっはっはーーーーーーーーーーーっ!!』
魔王ゼルドリスの笑い声だけが辺りに響き渡る。
『どうした?勇者……クロノよ……お前はこれまでの戦いで大いなる力を手にしたと勘違いをしていたようだな…………?』
「俺が勘違い………だと?」
『ああ……そうだ………お前は我が部下共をこれまで運良く仲間達の助けの元……倒してこれただけ……貴様のレベルなどそれだけのものだ……見るがいい……貴様の仲間達が苦しみに怯える顔に変わってきたぞ?』
俺の視線は奴の言葉通り仲間達の戦う姿を映し出す空間のモニターへと向けられる。
そこに映し出されたのは皆の苦痛に歪む表情だった。
テンテン…イシメール、エンポリオにサキノまで、皆が月の魔物の攻撃により危機に晒されようとしていたんだ。
そしてゼルドリスは口を開く。
『さあ……勇者よ……これで大分絶望の表情へと変わってきたようだな…………。』
確かに俺の今現時点での攻撃も効かず…ましてや最大の技が破られた…そしてそんな俺の仲間達がまた危機に晒されている。
絶望という名の感情が徐々に湧き上がろうとしていた。
改めて目の前の敵がこれまでの敵とは遥かにレベルが違いすぎたのを感じる。
するとゼルドリスは更に続ける。
『クククッ…貴様が死ぬ前にいい事を教えてやろう……貴様らがいる世界……そうお前からすれば異世界というこの場所……だが、お前もこの私もあかりも暮らしていた地球と呼ばれる世界もこの月に照らされる同じような星なのだ。』
「どういう……事だ?」
『つまり、私は自身が開発したゲーム内から異世界であるこの世界への扉を開く事からできる事を確認したのだ…だが実は地球もこの異世界もこの同じ月を見ていた事を発見したのだ…そしてまた同等の惑星もこの私は無数に確認している……。』
「何が言いたい?」
俺の言葉にゼルドリスは続ける。
『私は魔王だ……欲深き自身の野望などはこの力を有している限りどの星どの世界でも可能だと言うことだ…つまり……この私に反抗的な奴らが存在する星など星事消し去り……勇者召喚などという考えを持っている奴らは根絶やしにしてやるという事だ。』
「なにっ??ゼルドリス!!てめぇそんな勝手すぎる事、許せるわけねえだろ!?」
俺は怒りに震える。
『私は魔王ゼルドリス……世界で唯一無二の神なる存在…人間?精霊?そんな下等種族は全て我ら魔族の下僕なのだ……そんな奴らが手を組み私に歯向かうなど言語道断……もう二度とあの時の様な敗北など起こりえんぞ?そしてその力を秘めているであろう『勇者』の力を持つ『クロノ』よ……貴様をここで殺してしまえばもう……世界に私に歯向かう者等おらんのだ…まずは見るがいい………』
すると大鎌を振り上げる魔王ゼルドリス。
魔力を凝縮し……その力が空間に穴を開ける。
「さあ……手品をみせてやる……『空間支配』……悪魔転地」
魔王がそう声を上げる。
次の瞬間。
「きゃあああーーーーーーーーーーーっ!?」
「「うあああーーーーーーーーーーっ!?」」
次の瞬間……月まで来てくれていたサキノやテンテン……仲間達の絶叫の声。
そして映像に映し出されたのは彼ら彼女らが月の魔物共々地上に転移された姿だったんだ。
困惑する仲間達。
だが落とされた世界で俺の仲間達は魔物との攻防は再び開始される。
『クククッ……これであの星事、破壊してしまえば…全てが消え去りそしてお前はもう立ち上がる事もできないくらい……絶望するだろうなあ。』
「なんて事だ……くっ。」
俺は悔しくて震える。
すると…カルマが俺の傍に立ち上がる。
「パパ……もうやめてよ……私がパパの元に行けばこんな事しなくてもいいんでしょ?」
涙目でそう訴えるカルマ。
ゼルドリスはカルマを見つめる。
その時。
パーーーーーーーーーーッと俺たちの頭上に光が差し込んでくる。
その光から姿を現したのは…そう……俺たちをここに導いてくれたカグヤだったんだ。
「カグヤ……さん?」
『……………………………』
魔王はカグヤの登場に沈黙してしまう。
するとカグヤさんは口を開く。
『勇者……クロノ……さん……よくぞここまで我が娘……あかりを連れてきてくれました。』
「えっ!?娘って……カグヤさんは………。」
「マ…………ママだったの!?」
あまりの驚きに声も裏返りながら声にするカルマ。
するとゼルドリスは口を開く。
『ほお………?お前………俺と共にこの異世界に来て……随分大人しくしてるなとは思っていたのだが……今更この場に現れるとは…どんな要件だ?』
そう語るゼルドリス。
魔王となり世界を滅ぼそうとしながらも今でもやはり妻と娘に何か言葉があるのだろうか?
俺にはそんな思いがよぎる。
するとカグヤさんは口を開く。
『あなた…………いえ………今は魔王の全てに捕らわれ……そして闇に堕ちていってしまった夫である……魔王ゼルドリス……これまでの貴方の蛮行を止める事が出来なかった力なき私は……優しかった夫を解放する為にこの時…この瞬間を待っていたのです。』
そう強く語るカグヤさん。
『クククッ……何を言い出すんだ……カグヤ……この私が魔王に心奪われてしまったとでも言うのか?』
『そうです……貴方がゲーム開発をし…この世界と繋がる何かを見つけ…それから貴方は人が変わったかのように開発を続け…そしてあってはならない異世界との扉をあのゲーム内に作った貴方……それがとても恐ろしく狂気の蛮行だった…そう消えてしまった『颯』さんから聞いていました…そしてそんな貴方は自らこの世界に辿り着き膨大な力を持つ魔王ゼルドリスと一体となったと聞き……私は颯さんと共に貴方の蛮行を止める為にこの地にきたのです……そしてあらゆる準備を終え……今ここに勇者に力の助力をし貴方の蛮行を止めるのです!!』
そう…語ったカグヤさん。
笑みを撤回した魔王ゼルドリス。
『クククッ…お前も娘である、あかりも何も分かってはいない……私はこの世界の王である……私の意思にそぐわない者には…………………。』
ギロリと目を輝かせるゼルドリス。
『死あるのみ……………………だ。』
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