最終章邪馬国編シーン67
恐るべき魔王ゼルドリスの攻撃。
俺は躱す為に転地を連続で放つ。
それにより…フラフラになった俺に笑いながら近づいてくるゼルドリス。
『クックックッ………やはり貴様の身体はタダの人間よなあ…我ら魔族の様にはいかん……貴様ら人間の魔力には限界がある……爆発的な力を持ってはいるのだろうが……もう…これで攻撃を躱す事も出来ぬであろう……。』
ゼルドリスはニヤつきながら言葉にする。
「くそっ……………もう少し俺に力があれば。」
『ククク……そういえば……お前にはあの時…腕を斬り落とされた恨みが残っていてなあ………』
「なにっ!?」
すると魔王はつけていたマントをスルスルと脱ぎ捨てる。
そこに見えたのは…新たに生み出そうとしたのであろう…少し小さめの左腕だった。
『クククッ…これはなあ…俺様が我が娘を掴みかけたあの時……貴様に斬り落とされた腕だ……思い出したか?……だがな貴様の勇者の力なのであろう……再生が上手く発動されんのだ…これが…貴様への恨みの一つとなったのだ。』
俺はハッと思い出す。
そう…俺はあの時…巨大な穴に落ちていきそうになったカルマを救う為に放った斬撃で奴の腕を斬り落としていたんだ。
俺は奴の腕に目を向けると…触手がその腕を抱え蠢きながらも癒着させようとしている様に見える。
「それは……カルマをお前の手に渡す訳にはいかなかった…それだけだろ!?」
『…………いいか?勘違いするなよ……あかりは私の実の娘だ……自分の娘を取り戻そうとしたんだぞ!?私の行動の方が当たり前に正当化される事ではないのか!?』
「くっ……だけど……お前は魔王だろ!?魔王を名乗る奴に大切な仲間のカルマを渡す訳がないだろ!?」
すると奴はゆっくりと答える。
『それは……お前の価値観と私の価値観が違うだけだろう?お前がこれまでどんな生き方をしてきたのかは知らんが…私は愛娘である『あかり』に最大限の愛情を与え育ててきたのだ…私の大切な娘だ。』
俺はカルマに目を向ける。
するとカルマは口を開く。
「確かに……パパは向こうの世界では…ずっと私に優しかった……いつも仕事で中々顔を合わせる事がなかったけど…たまに家に帰ってきてくれた時は…ママと幸せそうに話していて……私にも優しい声をかけていてくれてた……私はそんなパパが大好きだった。」
そう言い放ったカルマの目からは涙が零れる。
「帰ってきてよ!!!」
カルマの身体は小刻みに震える。
「優しいパパに戻って……帰ってきてよ!!!」
彼女は涙ながらに大声で叫ぶ。
俺はフラつきながらも立ち上がっていく。
「また…カルマを…泣かせちまった……俺は自分が許せねえよ………。」
俺に目を向けてくる魔王ゼルドリス。
カルマの声にずっと耳を傾けていた魔王。
これはまだ…完全な魔王に支配されていてはいないのだろうか?
俺はカルマの父親に希望を感じていたんだ。
すると……俺の視界はやはりブレてしまう。
フラつく俺……やはりダメなのか?
その時…俺の身体がカルマによって支えられる。
「カル……マ?お前。」
「クロノ………私も戦うよ……パパを魔王から取り戻したい。」
「カルマ………ああ。」
俺は魔王を見据えると……その時。
ぱあーーーーーーーーーーーーっと光りだすカルマ。
カルマの目の前では彼女の魔神具が光り輝く。
『いくよ……魔神フェリス……………』
『わかった!!カルマ!!そして小僧……感謝するのにゃ!!』
「お…おう!!フェリス………サンキュ。」
ニコリと微笑むフェリス。
すると。
「『ヒール……エクスポーション。』」
フェリスの能力が俺の身体を包み込む。
次第に俺の身体に力が漲ってくる。
「カルマ……サンキュ!」
「うんっ!!」
俺達は再び魔王ゼルドリスと対峙する。
すると…魔王ゼルドリスは笑みを浮かべる。
「フン…貴様は私を誰だと思っているのだ?」
魔王ゼルドリスは俺を凝視する。
奴はパチンっと指を鳴らす。
すると目の前の空間にとある映像が映し出される。
そこには俺の仲間達の姿が映し出される。
だがその時……。
きゃあああああーーーーーーーーーっという叫び声が映像から聞こえる。
大型の魔物に捕まりいたぶられるテンテンの姿。
「テンテン!?」
「テンテンちゃん!?」
俺とカルマの目に見える映し出された傷つけられる彼女の姿。
「テンテンちゃん!?」
叫ぶサキノ…だがその背後から迫る別の魔物の影。
「サキノ!?」
「サキノちゃん!?」
そしてサキノは背後から……魔物に囚われてしまう!!
「いやあああああーーーーーーーーーっ!?」
そして二人の大切な仲間までも捉えられてしまう。
すると。
他の映像からも月から放たれた魔物により苦戦を強いられた世界各地のボロボロになりがならも戦う仲間達が映し出されていたんだ。
「皆………………」
「みんなーーーーーーーーーーーーーっ!?」
その光景に俺もカルマも震え……叫んでいた。
下卑た表情で口を開く魔王ゼルドリス。
『クククッ……この私は……この世界を支配する魔王…これで分かったか?…貴様にどれだけの力があろうが……絶望するのは………貴様だ。』
◇
◇
◇
お読みくださりありがとうございました。




