最終章邪馬国編シーン56
カルマ達が犬神を倒した頃。
二人の男が眼光鋭く睨みあっていた。
「やったな……皆!!凄かったぜ!!」
俺の言葉にサキノ…そしてテンテンはニコニコ笑顔だった。
俺達がそんな笑顔を交わしている先に真剣な眼差しを向けていたのはリオだった。
そして、その視線の先には……鉄星が立っていた。
「クキキッ……どうやら僕の番が回って来たみたいだ……まあ僕は犬神の様な間抜けな負け方はしないけどねえ……。」
「うぐっ!?」
猿顔のそいつはそういうと鎖をひく……その先には囚われの鉄鬼丸が苦しげにもがいていたんだ。
「鉄鬼丸!?」
「ぅぅっ…………。」
酷い……こんな小さな少年にここまで酷い事をするあの猿には嫌悪感しかあらわれなかった。
『くきき……てめえ……そこを動くんじゃねえぞ……しかしまあ犬神も本当に馬鹿な奴よな…このガキを人質にこうして使えば奴らは動く事もできずに殺してやれるのによお?』
さっきの犬神って奴も酷い奴だったが…こいつは。
『キキキッ…動くなよお前ら……僕は猿鬼桃鬼丸様のナンバー2の男…そしてお前らを全滅させる男だ……。』
そういうと猿鬼は何かを取り出す。
見るからに凶悪そうなその魔神具。
巨大な鋏の魔神具はキラリと怪しく光る。
「なんだその魔神具は…………」
そう声を上げた鉄星。
それにニヤリと笑みを浮かべる猿鬼。
「これはな……我が一族に伝わる魚人族を殺戮した際に奴らが我らへの怨みを込め作ったと言われる奴らの怨念がこもった魔神具だ……この僕の強力な力で怨念など抑え込んでやったら、今や大人しく僕の手足となった強力な魔神具だがね。」
「なに?」
「キキキッ…貴様…鉄星とかいうんだろ?そっちの仲間としてそこに立っているのだろうが…匂いでわかる…貴様からは僕達のような魔族の匂いを感じるなあ…貴様は我々の仲間であり魔族じゃねえのか?…そしてこのガキも鬼よなあ?」
猿鬼は笑いながらそう言い放つ。
「貴様………。」
鉄星はそう呟き魔神具を構える。
「キキキッ……さあ…このガキを無事に返して欲しければとっととその魔神具をこっちに渡すんだな……そうすればこのガキを傷つけないでいてやる。」
汚い猿鬼……そのやり方には誰しもが苛立ちを隠せずにいる。
ググッと魔神具を握る鉄星。
そして魔神具を奴の足元に放り投げる。
カランカランッとその音が辺りに響く。
『キキ……よぉし………そのまま立ってろよ。』
ガシャンっと巨大な鋏をガチャガチャ鳴らす猿鬼。
『キキ……出てこい魔神……シザークラブ。』
ゴゴゴ……と音を立て現れた巨大な鋏を鳴らし現れた巨大なカニ型の魔神。
見るからに凶悪そうな姿に思わず息を飲んでしまう。
目の前に立ち尽くす鉄星。
『キキッ…さあ…じゃあ初めの断罪の時だ…そのまま身体を半分にしてくれる。』
「鉄星様っ!!???」
「ぅぅっ…………………おとう……さん。」
リオと鉄鬼丸の鉄星を呼ぶ声。
「二人とも……この俺がここで倒れてもお前達にはもうここに沢山の仲間達がいる…大丈夫だ……さあ猿鬼よ……鉄鬼丸を解放してもらおう。」
するとニタリと笑みを浮かべる猿鬼丸。
『クキキッ……貴様は、バカなのか!?離すわけはないだろう……お前の魔神具がここにある以上貴様はもう終わりだ……裏切りとは実に楽しいなあ……クキキッ。』
いつしか鉄星の魔象烈鋸を手にしていた猿鬼。
次の瞬間…ズバッと空を切る音!その音と共に倒れゆく鉄星の身体。
シザークラブの巨大な手が鉄星の身体を斬っていた。
「うぐっ……………」
「鉄星様っ!?」
リオの叫びに片膝をつく鉄星。
そして汚い猿鬼に悔しさに拳を握る皆々。
「そんな……卑怯よ!?鉄鬼丸君を離しなさい!?」
「鉄鬼丸……………………………………。」
「お母さん…僕は大丈夫……それに…お父さん…僕の事はもういいから!!戦ってよ!?」
リオと鉄鬼丸の声。
鉄星は静かに立ち尽くしている。
そして俺の怒りも限界に近づいていた。
「鉄星………そんなやつ………やってしまえよ…鉄鬼丸は俺が守ってやる。」
俺のその声に手をこちらに向ける鉄星。
「その心配はいらん……………。」
『クキキッ……観念したか?』
猿鬼の邪悪な声………鉄鬼丸をいつでも殺せるぞというように魔神具を鉄鬼丸に突き立てようと構える。
「いいぞ………そのまま大人しく……してろ……」
奴の魔神シザークラブの鋏が鉄星を狙う。
『しねえええーーーーーーーっ!?『ヘルズカット』』
ジャキジャキンッと鋭い音が辺りに響く。
誰もがその光景に思わず目を瞑る。
目を開いていくと……鉄鬼丸を片手で抱き寄せ…立ち尽くす鉄星の姿。
鉄星達を守っていた彼の魔神具とエレファモスの姿。
「鉄星様……鉄鬼丸君…………。」
思わず声を上げ涙ぐむリオの姿。
『なにいいいっ!?貴様…!!どんな物でも切り裂くと言われる僕の魔神具でなぜ切れん!?』
フッと笑みをこぼす鉄星。
そして魔神具『魔象烈鋸』を構える鉄星。
「俺の魔象烈鋸は思いのこもった魔神具…これを手にした俺は誰にも負ける訳にはいかない…散れ…。」
ズザザザッと飛び出す鉄星。
そして猿鬼を自身の射程距離内に入れる。
『ば!!馬鹿な!!???』
振り下ろされる魔象烈鋸。
逃げ出そうと踏み込みその先には見えない壁が……。
『な!?なんだこれは!?』
「これが古代三大魔神の一人……エレファモスの力……」
「鉄星がリオの父親の魔神を…受け継いだのか。」
「クロノ様……そうなんです…きっと私と鉄星様には何かの繋がりがあると私は思っています。」
「そうか」
幸せそうな彼女の笑みを見た俺は、微笑み返し鉄星の戦いに目を向ける。
『エレファモス………『アークエレットショック』!!!』
『うがあああーーーーーーーーーーーーっ!?』
ドドドと猿鬼を襲うエレファモスの巨体からの猛攻撃。
そして…猿鬼は絶叫し…その身を散らせ消えていったんだ。
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