最終章邪馬国編シーン52
誕兎の突然の申し出。
俺達は彼女の話を聞く事になったんだ。
「桃鬼丸の棲む鬼ヶ島に行くには海を越えなければ行けないんだけど……」
彼女はそう話しはじめたんだ。
「僕達の村の近くにある近くの港には実は昔から『うさぎジャンプ』と呼ばれる転移装置があるのです…それを使えばあの海も越えれるのです。」
「転移装置!?まさかそれが鬼ヶ島に繋がっているとでも?」
俺の問いかけに頷く誕兎。
「うん…そうなんだよ…あの海を渡るには、周辺の海域には大昔から鰐鮫と呼ばれる魔物がウヨウヨしてる為に船で渡るのは命とりなのです……その為に、昔から鬼達と仲が良かった僕達は友好の証として転移装置を作ったのです……ですが今その装置は…あの桃鬼丸達の管理下に置かれていて奴らが島を渡る為に使われているんです。」
「そうなのか……じゃあそこを解放すれば鬼ヶ島に渡れるって事か?」
誕兎は頷く。
「うん……でもね…装置を守っているのはあの桃鬼丸の部下……噂ではあの海に蠢く鰐鮫を自在に操る恐ろしい魔族らしいんだ。」
「なるほど……そいつらを倒せばいいという事だな。」
「うん…そいつらを倒せば僕がその装置を使って君達を鬼ヶ島まで送れるからさ。」
そう説明してくれた誕兎。
その表情は真剣そのものだった。
「そうか…やはりあの建物にはそんな仕掛けがあったのだな?」
「はい……人間下の人々には教える事はこれまでなかった為に今までは黙秘してきましたけどその装置を使えば鬼ヶ島には渡れるのです。」
沈黙し一時考えると孤氷次さんが口を開く。
「その装置を使う為に俺の友人はそこへは来なかったであろうか?」
「いえ……もしかしたら…可能性とすればあの装置を守っているその鰐鮫……魚獣人『邪鮫』との戦いになった可能性は高いかも知れません。」
「そうか……で……その鰐鮫獣人邪鮫とはどんな奴なのであろうか!?」
孤氷次さんの問いに誕兎は答える。
「はい……僕達もそいつがそこを守り出してからはもう近づく者もなく過ごしてきました…ですが噂によれば大海の力を持ってその力と能力は一体の鰐鮫の数百匹分とも言われています…あの鰐鮫自体を操れるのですからその力はもの凄いものなのでしょうね。」
「そうか。」
そう一言呟くと孤氷次さんは考えこんでいく。
すると我に返る孤氷次さん。
「よし……ならばいこう……我が部隊はこれより…クロノ殿達を無事にあの地『鬼ヶ島』へ渡す為に尽力しようではないか!?」
うおおおおおーーーーーーーーーっと叫ぶ孤氷次さんの部隊の面々。
この勢いで俺達も桃鬼丸の元にいく覚悟を決める。
◇
そして俺達は転移装置のある場所まで向かう事になったんだ。
◇
◇
◇
「クロノ…孤氷次さん…ずっとあの事気にしてるよね?」
そう声をかけてきたのはカルマだった。
「ああ……ずっと友の事を気にかけてきたんだ…それは仕方ねえだろ。」
「そうよね……早く皆が笑って暮らせる日をきっと。」
「ああ…そうだな。」
俺達はそんな話をしていると孤氷次さんが話かけてくる。
「クロノ殿…そしてカルマ殿も……これは拙者のわがままな話ではあるのだ…かたじけない。」
孤氷次さんはあれから心に何かを感じているのだろう…話し方も以前とは違っていた。
すると先頭を歩いていた誕兎が立ち止まり声を上げる。
「皆さん…アレです…………………。」
すると奥には巨大な海なのであろう景色が広がる……そして眼前には何かの建物が建っていたんだ。
「あれが………転移装置が置かれた小屋です。」
「あれが転移装置『うさぎジャンプ』か。」
誕兎に問いかけると彼女の表情は先程とは違い緊張の面持ちだった。
するとそこに見えたのは。
ザバアアアーーーーーーーーンッと湖面から這い上がってきた何者か。
なんと巨大すぎる鰐…………そう鰐鮫の全貌だったんだ。
「あれが…………」
「鰐鮫なの?……………なんて大きさなの……………………」
俺もカルマもその大きさに驚きを隠せなかった。
すると。
奴の肉体はモコモコと盛り上がっていく。
そして徐々に人型へと変化していく。
俺達に感じたのは奴の巨大な存在感。
そちらを振り返ると。
『クククッ…………そこにいるのは分かっているぞ………凡人どもがーーーーーーーーー!?』
叫び、襲いかかってくる鰐鮫獣人…邪鮫。
どおおおおーーーーーーーーーっと水を撒き散らし襲いかかってくるその姿はまさに鰐の攻撃そのものだった。
『うがああーーーーーーーーーーーーっ!?』
俺達の前に立っていたのは孤氷次だった。
「拙者は邪馬国『天草』様の近衛兵長『孤氷次』…我が君主……そして仲間達の為にこの力を振るう………」
孤氷次は、魔神具である小太刀を構える。
「魔物よ……我が君主の為……貴様を拙者が葬る事にしよう…………いざ…尋常に勝負!!」
◇
◇
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孤氷次の戦いを是非お楽しみくださいませ!
お読みくださりありがとうございました。




