最終章邪馬国編シーン46
これが竜人族の歴史の背景だったのか。
俺はこうして竜村の過去の歴史を知ったんだ。
すると目の前の霧が薄れて消えていったんだ。
そして目の前には。
辺りには蒼空の雲海、そして砕けた岩岩。
風が吹き付ける。
ここは山頂なのだろうか。
そこには一つの小屋が見えたんだ。
俺はそこへ誘われるように進んでいく。
扉の前に立つと扉が勝手に開いていく。
「おお……きたか……待っておったぞ?」
そう声をかけてきたのはあの時の声の主だった。
「アンタは!?」
「ああ…私はな………お前の前世の娘……とでも言おうか。」
「えっ?」
俺は先程まで見ていたあの出来事を思い出していた。
それでは…形的にはあの雷武の姪という事になるのだろうか。
そして俺の前世の娘……になるのか。
俺の頭にはそんな事が浮かんでいた。
「ふふ…それで……どうだ?歴史の背景にいたお前はあれで死んだのだ…そして………」
「あの後…お前は生きていた……という事なのか?」
すると女性は頷き被っていたフードを脱ぎ去る。
「ああ……そうだ……………。」
見ればまだ十代くらいの女性。
深紅の髪そして頭には龍の角の様なものが着いている。
すらっとした足を見せながら短めの着物を着ている、なんら普通に見える女子だった。
「先程話したが……私達を襲ったのは魔王と呼ばれる存在、だが私達竜族は簡単に負けるものではなかったのだ…前身であるお前がいない隙をつきなのか偶然なのかは知らぬが魔王はその時…現れた。」
すると女子は言葉を続ける。
「魔王は私達竜族の攻防をものともしなかったのだ…私達も覚悟を決めた……その時……長老は私に最後の望みをかけ小さな私に自分の生命をかけた結界を張ってくれる…何かを感じた魔王は長老を殺した。」
ぐっと噛み締め続ける彼女。
「その時……察した母は魔王に気づかれぬよう私を身を呈して庇う。」
「私の子には絶対に手は出させない!!」
それが最後に聞いた母の声だった。
魔王の大鎌に身体をさかれる母親……その顔を私は未だに忘れられないのだ。
「うおおおおおーーーーーーーーーーっ!?」
それは父親であるお前はそう叫び母親と私達に駆け寄ってくる。
そして父親もまた。
魔王の大鎌の餌食になった。
両親が倒れ私はもらった防壁に守られたままだった。
魔王が私の元に近づいてくる。
もう、絶体絶命かと思ったその時。
「てめえ…………………………………。」
そういい立っていたのは。
私の叔父である『雷武』の勇姿だったのだ。
◇
「最近よく名を聞く魔王ってのはお前の事か?」
『………………竜人族はな…我が野望の為に邪魔な存在だ…よって全滅させる事にする。』
「貴様ァァァーーーーーーーーーーーっ!?」
雷武の拳が魔王の頬にクリーンヒットする。
吹き飛ぶ魔王。
「魔王……てめえ…このまま無事に帰れると思うんじゃねえぞ。」
その戦いはいつまで続いたであろうか。
魔王は当然の様に強くその恐ろしさは常識を超えていた。
だけど我が叔父である雷武もまたその力はさすが竜人族最強とよぶには当然の強さ…魔王とほぼ互角ではないかといった強さだった。
そして二人は戦い続け……気がつくと魔王の姿はそこにはなかった。
そこにあるのは私を守る様に立ち尽くし気を失ってるかのように動かない叔父雷武の姿だけだった。
すると気がついたのか雷武は一言呟く。
「くう……次は……負けん。」
◇
そう、こうして叔父は私を守り……私をいつしかまで育て…修行にとどこかへ去ってここには私一人になったのだ。
◇
「そんな過去があったのか。」
「ああ…お前……父の転生のお前とそこにいる…叔父……雷武はそのような関係なのだ。」
「ん!?」
俺はその言葉に後ろを振り返るとなんとそこには人型の雷武…そして亀山の姿があった。
すると雷武が口を開く。
「フン……これでわかっただろう?貴様の前身は俺の妹の婚約者だった…そして…そこにいる姪である『竜衣』は前身の娘だった…俺はお前が目指している魔王ゼルドリスに俺は借りを返す為にお前と共に戦っているって事だ。」
雷武はそう告げる。
「そう…そしてどうやら転生してるとはいえ…竜人族の血は未だにお前の身体には流れているという事……竜人族の力をしんじるがよい。」
そこまで言ったルイは亀山をみる。
『ふむ……この男……なるほどのお…これは面白い過去をもっとるようじゃな…』
「僕の過去に何かあるのですか?」
『ふふ…お主がこの場所に来れたという事がお主にも我ら同様の血が流れてる…という事じゃ。』
「えっ!?それって?」
亀山の声を制止する彼女。
ルイは亀山に近づき手をかざすと光りが亀山に与えられる。
「これは…!?」
「なあに……ちょっとしたまじないじゃ。」
「まじない……それに……はい!ありがとうございます!」
亀山は何かを感じたのだろうルイに礼をする。
すると…ルイは口を開く。
「父の生まれ変わり…今はクロノ…という名じゃったの…我と同様…この竜人族の末裔として…叔父と共にあの魔王ゼルドリスを止めてほしい。」
ルイの表情は涙を堪え訴えかけてきていた。
俺は頭に手を添え答える。
「ああ…当たり前だ。」
すると、俺の手を握るルイ。
『竜の鍵…解放。』
次の瞬間…俺の中の何かが開いた気がした。
「これは?」
俺の問いにニコりと微笑む彼女。
「クロノ……世界を頼む。」
「ああ……任せろ。」
◇
◇
◇
こうして俺達はこの竜人族の村を後にする。
お読みくださりありがとうございました。




