最終章邪馬国編シーン45
『ルキ!?』
そう大声と共にこの教会内に入ってきたのは なんと俺の知る俺の相棒である魔神雷武だった。
そして今俺はどうやら雷武の妹と婚約しようとしていたんだ。
「お兄ちゃん!?」
「ルキ!!??」
そのままの勢いでこちらにスタスタと歩み寄ってくる雷武。
ルキの手をとる雷武。
「ルキ……さあいくぞ!?お前は婚約などせぬでも良いのだ!!」
「お兄ちゃんやめて!!???」
雷武の手をバッと離すと大声をあげるルキ。
その目には涙を溜めていた。
「くっ……ルキ……お前……本当にこの男を……。」
「お兄ちゃん……許嫁……お兄ちゃんはこの許嫁ってのが本当に嫌なんでしょ?」
「ああ……それがお前をずっと縛りつけているようでな……俺はそんな決められた何かで縛りつけられるような何かってのが本当に嫌いなんだ。」
すると神父が口を開く。
「雷武よ……これは神からの『助言』でもあるのだぞ!?お前の妹である『ルキ』とこの許嫁である『ルテン』の婚姻……そして二人の間の子には『未来』へ繋げる『竜の子』としてこの竜族の繁栄に繋がっていくのだ。」
「そんな話を聞かされるから俺は嫌だと言ってるじゃねえか!!???」
雷武はそう叫ぶ。
するとルキが口を開く。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんがそうして私の事を本当に考えてくれるのは本当に嬉しいよ……でもね……私の隣にいるこの人…『ルテン』さんは許嫁とはいえ……本当に素敵な人よ?私この人だから好きになれたし本当に幸せになれると思ってるの……」
「くっ………」
雷武はそういうと向き直り俺をじっと見ている。
「ちっ……貴様…確かに貴様も竜族なのは分かってはいる……だがな…そんな弱そうな貴様に本当にルキを守れるのか!?」
俺にそう問いを投げかけてくる雷武。
「ちょっとお兄ちゃん!?確かにお兄ちゃんは私達竜族の中では最強って言われてるけど彼は彼なりに私をずっと守ってきてくれたんだよ!?」
「うるせえ!!ルキ!!俺はコイツに聞いてるんだ!?お前は黙ってろ!?」
そして俺はこたえる。
「ああ……もちろんだよ……アンタの妹は必ず守る。」
この敷かれたレールの上にいる状況。
この時のセリフは訳の分かっていない俺の口から出たものではなかった。
これはこの今の俺が体感している男の心と声だったんだ。
じっと俺の目を見ている雷武。
すると踵を返し出ていこうとする雷武。
「お兄ちゃん!?」
ルキの声に立ち止まった雷武。
「ルキ………幸せにな。」
雷武は一言、そう言い残しその場を去っていったんだ。
◇
◇
◇
それから雷武はしばらくこの村には戻ってこなかった。
俺とルキはいつしか子をもうけ……幸せな時を過ごしていたんだ。
ルキと俺は我が子に『竜衣』と名付け親子三人幸せに暮らしていた。
そんなある時。
俺の仕事としてこの日はこの山を下山し下界の街で働いていた。
そしてこの日も仕事を終え帰ろうとしていた。
下界から見るあの竜の富士。
夕日にもうつるその山は物凄く美しかった。
「さあ……妻ルキと我が子『ルイ』の元へ帰るか。」
俺は背の翼を広げる。
そして飛び上がり空を飛ぶ俺の身体。
遥か下には夕日に染まる竜の富士。
俺は村を目指す。
すると。
明らかに村のある場所から炎が立ち上る。
「な!?なんだあれは!?」
俺は慌て村へと降下していく。
ただならない雰囲気に嫌な憶測を心に抱く俺。
スタっと燃える村の中心に降り立った俺は目の前の光景に愕然とする。
そこには恐るべき巨大な存在が立ち尽くしていた。
「ま……魔王………なのか!?」
俺の言葉にこちらを振り向く魔王らしき魔物。
その時。
「あなた!?」
そういったのはなんと我が妻ルキだった。
ルキは我が子であるルイを抱きしめ守るように庇っていたんだ。
「ルキーーーーーーーーーーっ!?」
俺はルキの元に走りよる。
彼女をだき抱え声をかける。
「ルキ!?ルキ!?大丈夫か!?」
「ええ…あなた……私達の子は大丈夫よ……。」
力無く…そう呟くルキ。
「あいつは何ものなんだ?」
「あれは魔王………私達竜族を滅ぼしにきたようね………もう神父である長老も…村の人達も……」
俺は何かをそれで悟ったんだ。
「ああ…俺はお前達が生きていてくれた事だけで十分さ…さあここから逃げよう。」
するとルキは涙を零す。
「ああ…貴方とルイと三人であのまま幸せに暮らしたかったなあ。」
「ルキ!?」
俺はルキの手をとる。
「あ…い…してる………よ……二人とも。」
ルキの最後の言葉。
「ルキーーーーーーーーーーーーーーー!?」
俺の叫んだ瞬間。
『うるさいぞ。』
魔王の恐ろしい声が聞こえた瞬間。
俺は身体の全ての感覚を失ったんだ。
隣りには愛する二人の家族が……いたはずなのに。
◇
◇
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