最終章邪馬国編シーン37
「孤氷次さん!?」
俺たちの目には磔にされた孤氷次さんが見えている。
目は虚ろで口からは血を滲ませ氷壁に磔にされていた痛々しいその姿。
だが、俺たちの声に気がつくと、彼はゆっくり声を絞り出したんだ。
「お……お前…達…………………。」
力なくそう呟いた孤氷次さん。
しかも磔になっている彼は手も足も動かせない状態だった。
「孤氷次さんッ!?」
俺が一歩前に出ようとしたその時。
ブオンッと突然目の前を通り過ぎるなにか。
そちらに目を向けると飛んでいった兵士の一人が氷塊に激突しズシャッと潰れた音だった。
兵士は潰れ地にズルズルと崩れ落ちる。
「くっ!?金龍………お前。」
俺は拳を握り唇を噛み締める。
人をこうも簡単に……なんの躊躇もなく殺せるこの化け物に俺は震えが止まらなかったんだ。
『ほお!?怒りか?貴様は』
「俺は……クロノ……お前を孤氷次さんに変わって倒す者だ。」
◇
◇
◇
そして。
仲間達は孤氷次さんの元へ駆け寄り、そしてカルマが声をかける。
「だ……大丈夫ですか!?」
「うっ………ぐっ…………ふふ……すまない……どうやら…この俺では奴を止める事が出来なかったようだ。」
「いえ……少し…気づいたのですが…もしかして……孤氷次さんの魔神は………」
「ああ…今のこの九尾の狐は…後付けの力……元は『氷属性』の俺の力を強制的に『炎属性』へと変えたもの…まがい物の力では本物の強者には及ばなかった……それだけの事だ。」
孤氷次さんはそう告げると…ぐったりとしながらも…視線は金龍へと向けるのだった。
◇
金龍は俺達に向かい話し始める。
『ふぅ……あの男も…惜しい存在ではあった…この俺様に『氷』では勝てない……その為に『炎』を身につけたらしい……が……本物の力を持つ俺様の敵ではなかった。』
俺にそう告げたのは目の前に立ち尽くす金龍だった。
そして金龍は続ける。
『で!?その孤氷次を倒した俺様にお前は何を求める!?』
「お……俺は……孤氷次さんの代わりを務める……いく…………ぞ。」
カチャリと音を立て魔神具を抜き、俺は構える。
スーッと両手を構えていく金龍。
「タアアアアアーーーーーーーーーーッ!?」
俺は声を上げ斬りかかっていく。
ムッと目を見開く金龍。
その瞬間、掌底を向け構えていく。
ドガガガーーーーーーーーーーーーーーッっと俺は飛び上がり手にした魔神具は金龍の頭上を狙っていく。
「よし!!このまま寝てろっ!?」
ギュンッと更にスピードを上げ奴の頭部を加速し狙う。
俺の刃が斬りつけるその瞬間。
俺の目の前に現れた氷の壁…俺は身体に違和感を感じる………と。
次の瞬間。
ドンッと激しい衝撃が全身に響きわたる。
そのまま俺の身体は吹き飛ばされてしまう。
「うっ?なにっ!?うあああーーーーーっ!」
ギュンッと飛ばされた俺は。
「クロノちゃん!?危ないっ!?」
その声とともに俺の背後に庇うように現れた亀山!!
「亀山!?」
「「うあああーーーーーーーーーーっ!?」」
ドガーーーーーーーーーーーーーーンっと俺たちは近くの氷山にたたきつけられてしまう。
「ぐはっ!?」
「うぐっ!?」
「クロノ!?亀山くんっ!?」
俺たちは身体を氷山に激しく打ち付けられ、その衝撃に倒れていく。
「な……なんだ……今のは……ぐっ………………」
俺はそう声を上げると。
金龍は口を開く。
「クククッ……俺様の氷は防御にも秀でている……貴様らの攻撃すら……弾く。」
「なっ……………………なん………だ……と。」
俺の声に孤氷次さんは言葉にする。
「くっ…ヤツめ……確かにあの氷壁を破らなければ…奴にダメージを与える事も敵わない……のかもしれぬ……金龍……なんてやつだ。」
「そんな……攻撃が弾かれるなんて。」
孤氷次さんの言葉に震えるカルマ。
そしてカルマの視線の先には。
「くっ………奴は……こんな力を…………」
「あれだけの力を持つ孤氷次さんがあの状況になった理由が分かった……本当に…こいつは……悔しいが。」
「「強い…………………………」」
ニヤリと笑みを浮かべる金龍。
俺たちはこの時…改めて目の前の敵、金龍の強さを感じる。
だけど……だけど………この男を放っておく訳にはいかない……皆の泪は俺が止めてやるんだ。
俺は拳を強く握る。
すると俺の肩に手を添える誰かがいたんだ。
「亀山……………………」
「クロノちゃん……そして雷武……出てきなよ。」
すると……ドウっと爆炎が立ち上ると。
雷武は長い赤髪の人型になり登場したんだ。
『ああん!?貴様………俺様を名指しで呼ぶとは……どんな用件だ?』
「亀山………俺もお前の提案ってのを聞くぜ?」
「二人とも、ありがとう。」
亀山は微笑むと金龍を倒す為の秘策を語り始めたんだ。
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