最終章邪馬国編シーン36
「狐氷次さん!?」
すると…狐氷次は語りだす。
◇
俺は元々…この国の氷河地帯で生を受けた。
そう…雪狐の獣人として生まれた俺は元より「雪氷」の力を持っていた。
そんな俺はいつしか村一番の男に…そして俺はこの国の殿下の側近として下についたんだ。
若き日の俺はその力を過信していた部分もあったのかも知れない。
そんな俺の前に突然現れたのが……金龍だった。
そして。
突然我々の元に現れた奴はこの国の殿下の近衛である我々に対外試合を申し込んできたのだ。
当然のようにその声に代表として上がったのはこの俺だった。
俺は傲慢だったのかも知れない。
その結果は俺の……惨敗だった。
氷VS氷の戦い。
奴の大いなる力の前に俺は力尽き……俺の魔神は奴の魔神である青龍の一部となり…俺は魔神を失ったかに見えた。
俺は死ぬのか……そう思った。
その時……俺に声をかけてきたのが…この…魔神、九尾だった。
それから俺は隊を離れ…一人修行へと入り…苦しい業の末……この九尾を受け入れ……そして俺は…。
◇
「金龍よ……一度は貴様に負けた俺だが……もう負ける訳にはいかない!!今こそ。」
狐氷次さんはその手に握る小太刀。
「はあああああーーーーーーーーーーっ!?」
狐火を更に増やす狐氷次さん。
『ふん……では今度は貴様のその魔神を奪い尽くし…貴様の命までをも我が力としてやろうではないか!!???』
「そう簡単にはいかん……出てよ狐火……そして魔神『九尾の狐』よ!!!!!」
ドオオオオオオーーーーーーーーーンっと激しい炎をふきあげていく九尾の狐。
「ゆくぞ金龍!!???」
再び二人の戦いはヒートアップする!!
◇
そして…俺たちの眼前には氷の魔物の群れ。
「狐氷次さんはあの金龍とあれ程の戦いをしている……でも何かの違和感を狐氷次さんから感じるんだ。」
俺の感じた違和感。
それは簡単に口に出せるものではなかったんだ。
俺の神妙な顔に声をかけてくる亀山とカルマ。
「クロノ……それってもしかして…………。」
「カルマさん……きっと僕たちが考えうる事はきっと一緒かな……クロノちゃんも一度魔神を奪われかけたって言ってたもんね?」
その言葉に俺は頷く。
「俺も一度雷武を手放しかけた……でも…狐氷次さんは俺のそれとは違って他の魔神を手にしたんだよな。」
俺はその違和感が拭いきれなかったんだ。
だが……その時。
俺たちの思考を遮り襲いかかってくる氷の軍勢の姿。
ドオオオーーーーーーーーーーーーーッと勢いよく襲いかかってくる金龍の用意した軍勢。
吹雪を吐き出す氷の鳥達……雪から飛び出す雪ネズミ……はたまた、モコモコと雪をものともせず突っ走り突っ込んでくる雪を纏った大イノシシ。
「これは!?皆!?気をつけ…………」
ドンッと俺の背に体当たりしてきたのは『雪猪』だった。
「うあああっ!?」
「クロノちゃんっ!?」
亀山が吹き飛ばされた俺に気が付き駆け寄ろうとする。
しかし次々とワラワラ湧きだし襲いかかってくる氷の魔獣達。
その数の多さに俺たちは押され始める。
「くっ!?大丈夫だ!!たあああっ!?くそっ!!これでは中々前に出れないっ!?」
俺は溢れくる敵を体勢を整え斬っていく。
「こっちも!!倒しても倒してもどんどんきちゃう!?」
「サキノ!?こっちも!!やああっ!?」
「いい加減にしてよね……この数の多さ……たああああっ!?」
三人も敵を倒してはいくがその数の多さに押されつつある。
その時。
あの兎獣人、誕兎が並ぶ。
「僕も…………皆の為に……恩返しをするんだ。」
そう声を上げた誕兎は炎を纏い……そして。
『獣………化…………戦兎……『火地火地山ーーーーー』……!!!』
ドゴーーーーーーーーーーンッと炎を纏い地を跳ね飛ぶ誕兎。
誕兎は跳ね飛び敵をドガドガっと蹴り飛ばし、そして燃やしていく!!
「あれは凄い!!」
「さすが獣人さんだね!?」
「本当に凄い!!」
俺、亀山そしてカルマも彼女の凄さに感心してしまう。
「よし!!これなら!!私だって!!」
「僕もおおおーーーーーーーーーっ!?」
カルマ…そして亀山も敵を次々と殲滅させていく。
「よし!!」
俺は魔神具『真打ち刀…武神』を手に再び構える。
『いくぞ………!!!!!』
背後にいた雷武は巨大な炎に変わっていく。
そして俺の魔神具の刃にまとわりつく。
『クククッ……この極寒の冷気をなんとかしたかったんだ……いくぞクロノ。』
『ああ………。』
ダンっと地を蹴り俺は飛び出す。
そして目の前の数百の魔物の群れに構える。
ギギッと叫び襲いかかってくる魔物達。
だが炎を纏う俺の闘気に弾かれていく魔物達。
『武神流『炎流竜』!!!』
俺は流れるような抜刀から刀を振りかざしていく。
次の瞬間。
魔物達の身体は斬り裂かれ……肉片は炎で焼き尽くされ……消えていったんだ。
「ふうぅぅぅ………………なんとかこっちは……。」
「クロノちゃん!?」
「クロノ!?孤氷次さんは!?」
俺たちは……気になる孤氷次さんの元へと走る。
何故か嫌な予感が止まらない俺。
そして俺たちは彼の元へと辿り着いた。
すると…そこには。
俺たちの目の前には…ボロボロになり氷の十字架に磔になった狐氷次さんの姿があったんだ。
「「狐氷次さーーーーーーーんっ!!??」」
◇
◇
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