最終章邪馬国編シーン34
『さあ……この金龍の名のもとに……出てよ…『青龍』!!!』
その声が周囲に響いた瞬間………地面を突き破って現れたのは青くキラキラと光る龍が現れ空へと立ち上っていく。
「あれは……くっ………遂にその姿を見せたか!?……金龍…そして…その力……青龍め……………。」
グオオオオオオーーーーーーーーーンと煌めき空へ舞昇っていく青龍。
その姿はあまりにも美しく輝きその恐ろしさを忘れそうな程だった。
だが……次の瞬間。
その美しさとは裏腹に青龍はその恐るべき身体を対空させる。
空に蠢く美しくも恐ろしい龍。
その姿が見る者の視線を奪い……そして。
黒き空に対空する青く輝く龍が口を開く。
『我が名は……四聖獣が一人……『青龍』……我が主『金龍』様の命により………………』
ググーーーーーーーーっと首をもたげる青龍。
『滅べ……………。』
青龍の言葉に連動してゴーーーーーーーーーーッと吹き荒れはじめる周囲の雪。
やがてそれは激しい風雪へと変わっていく。
「うわっ!?」
「「これは……!!??」」
皆がそう叫び恐れおののく。
そして一人の兵士が絶叫する。
「か!?身体が凍っていくーーーーーーーーーーー!?」
その叫びと共に足元から凍りついていく兵士。
俺たちは瞬く間に全身が凍りついた兵士に戦慄が走る。
凍りつき動かなくなった兵士。
次の瞬間。
パリンっと粉々に砕け散る兵士。
「なにっ!?くっ。」
唇を噛み締める『狐氷次』。
すると…それを追うように次々と凍りつき壊されていく兵士達。
「うあああーーーーーーーーーーーっ!?」
「やめてくれーーーーーーーーーーっ!?」
そして叫び、次第に逃げ出し初める兵士達。
逃げ惑う兵士達に叫ぶ狐氷次。
「お前たちーーーーーー!!静まれーぃ!!」
だが恐怖に支配されつつある兵士達の混乱は簡単に止まるものではなかった。
「おのれ……ここは。」
狐氷次は何らかの武器を手にする。
そして。
「おお。」
「あれは狐氷次様の『魔神』か。」
兵士数名が狐氷次の変化に気づき叫ぶ。
ゴゴゴと狐氷次の体毛が増えていく。
狐氷次の手に握られていたのは輝きを放つ『小太刀』
『我が刃……朧月夜……発せよ魔神………はああああーーーーーーーーーっ。』
狐氷次の背後は闇に包まれていく。
その闇は雪と氷を包み込み消していく。
すると徐々に姿を現していく狐氷次。
『魔神『九尾の狐』!!』
すーーーーーーーーーっと小太刀を構える。
そして狐氷次の背後に九つの尾を持つ巨大な魔神が現れる。
口から炎を溢れさせる狐はギロリと青龍を見据える。
『九尾炎』
ごーーーーーーーーーーーっとその炎は青龍の風雪をも消し去っていく。
「これは…………………凄い。」
「これが狐氷次の魔神………九尾の狐か。」
俺も亀山もその力に驚きを隠せなかった。
すると狐氷次は答える。
「ふふ……俺はこの国随一の『魔神使い』なのでな。」
「確かに。」
「これは凄い!!」
すると九尾の狐は青龍をその目に止める。
そして前に一歩踏み出す狐氷次。
「さあ……君たちの力も貸しては貰えないか!?」
「ああ!!」
「任せてください!!」
俺たちは改めて各々………魔神具を構える。
そして兵士達の士気も上がる。
「狐氷次さんの魔神も登場だ!!」
「俺たち獣人兵達も気合いを入れ直せ!!」
「「うおおおおおおーーーーーーーっ!!」」
指揮官であろうか一人の男の声に皆々が歓声を上げる。
これは狐氷次さんの強さを知らしめるものであった事は言うまでもない。
狐氷次さんの魔神の登場に勢いを増す俺たち狐氷次軍。
すると。
あの空に浮いていた青龍が巨大な声を上げる。
『ぐおおおおおおーーーーーーーーーーっ。』
それは辺り一帯に間違いなく聞こえるであろう巨大な咆哮。
その巨大な声の後には。
ズザンッと地鳴り…そしてそれに呼応するかのように足音が鳴り響く。
ズザッ……ズザッとこちらに近づくであろう足音の主。
辺りにバチッバチッと聞こえるその者の力を誇示するかのような闘気の音。
ここにいる誰しもが感じるであろうその威圧感と常識を超えた力。
俺たちはその者の登場を息を飲みただ………。
じっと見つめる事しかできずにいたんだ。
その者は一人……こちらに歩いてくる。
「くっ!?化け物め!!!こっちは狐氷次さんの最強の軍勢だぞ!!そこに一人でくるなど………我々を……なめるなーーーーーーー!!??」
兵士の数名が各々に武器を携え斬りかかっていく。
その男は。
只………何事もなかったかのように止まる事なく前進していたんだ。
今にも届く兵士達の攻撃。
男はただ歩く。
そして息を吐く。
『ふううぅぅぅ…………………………随分…冷えるな。』
男はそう呟く。
すると。
襲いかかった男達はまるで時が止まったかのように凍りついていた。
そして。
氷はサラサラと風に乗り全ては消え去っていったんだ。
『か………金龍!!???』
◇
◇
◇
お読みくださりありがとうございました。




