最終章邪馬国編シーン25
俺達は狸の王により牢の中に入れられてしまう。
「これは!?」
すると…俺はこの牢になにかの違和感を感じる。
「クロノ……この檻なにかの匂いを感じるの。」
サキノがそう呟く。
「サキノ……どういう事だ?」
「うん……待ってて。」
サキノはそういうとクンクンと匂いを嗅いでいるようだ。
俺達はそんなサキノを見ていると、彼女は嗅ぐのを止め口を開く。
「クロノ……ここって……………」
「ん!?」
「もしかすると……あのたぬきの魔神の中なのかも!?」
「「なにーーーーーーーーーーーーっ!?」」
俺達は大声を上げてしまったんだ。
◇
◇
◇
サキノ曰く……あのたぬきから漂っていた魔神の匂いがこの牢の中に物凄く臭っていたらしい。
集中して嗅いでみると色濃く漂う匂いにそう判断せざるを得なかったらしい。
◇
「くそっ!?こんなのどうやったら出れるんだ!?」
俺はそう叫び焦ってしまう。
するとテンテンは魔神具『方天画戟』を手に構える。
「クロノさん!!私がやってみます!!」
『スタッグビートル………。』
ゴゴゴという音と共にテンテンの魔神具から飛び出す彼女の魔神。
ヒュンッと飛び回る大型のクワガタはシャキンっと鋏を鳴らすと…一直線に格子に向かっていく。
『ビートルカッターーー!!』
シャキンっと音を立てる。
格子を切ったかのように感じる………が。
にょきにょきと格子は再び元に戻っていく。
「えっ!?そんな。」
「テンテン!?気をつけろ!?」
次の瞬間……格子の一本が形を戻さず鋭く鋭利状に変形すると、キラリと輝く。
そして。
ぎゅんっと伸びテンテンの身体に迫る。
「テンテン!!???」
俺は叫び構える。
『空間支配………転地』
シュンっと転移し俺はテンテンを抱き抱える。
それは動き出した格子の攻撃を避けたんだ。
「大丈夫かテンテン!?」
「はい!!ありがとうございます!クロノさん♡」
「クロノ!?テンテンちゃん!?またくるよ!?」
俺達はサキノの声に我に返り格子の動きを見据える。
するとどこからともなく聞こえてくる声があった。
『クククッ………もう諦めるのだ……既にワシの魔神『白虎』の腹の中にいるお前達の運命は……『絶望』だ。』
「なんだと!?」
俺たちが構えると後ろから……か細い声が聞こえてくる。
『誕兎ちゃん………』
「えっ!?」
俺たちが振り返った先には数名の獣人の女の子達がいたんだ。
『皆ーーーーーっ!?!?』
誕兎は慌てその娘達の元へ駆け寄っていく。
誕兎は彼女達の傍に駆け寄り様子を見る。
その娘達はガリガリにやつれ今にも気を失ってしまいそうな程の見た目をしていたんだ。
『『未兎』ちゃん!?大丈夫!?』
誕兎がやつれた一人の彼女を抱き問いかける。
『ああ……誕兎ちゃん……おなかま…連れてきてくれたんだ…。』
にこりと微笑む彼女。
『未兎ちゃん!?もう……大丈夫だから……安心して………。』
誕兎のその声に安心したかの様に微笑むと再び気を失った彼女。
『!?ちゃん!?『未兎』ちゃーーーーーん!?』
泣きじゃくる誕兎。
その時。
立ち上がったのはサキノだった。
「サキノ………」
『クロノ……私をあの時助けてくれてありがとう……でも……私………私………こんなの………許せないよーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』
いつしか俺はサキノを抱きしめていた。
俺の胸で泣きじゃくるサキノ。
「クロノさん………サキノちゃんは大切な大親友なの……だから私も。」
すると。
ゲスな奴の声が聞こえる。
『クククッ……この俺はな……あの金龍様の直属の配下だ……俺へ逆らう事は金龍様への冒涜……分かるか?そしてこの俺様のこの力である魔神『白虎』の能力……『虎監獄』により、ここから出る事も叶わぬのだから……なあ?』
そんな恐るべき言葉を発し奴は言葉を終えたんだ。
「やってみなければ…………。」
「分からないんだから…………。」
サキノ……そして……テンテンはその手に魔神具を構える。
そして俺も。
「魔神『雷武』…………いくぞ。」
魔神具に手をかけた俺。
だがその時妙な違和感を感じる。
「これは!?」
するとサキノ……テンテンまでもが叫び出す。
「クロノさん!?ここなにかおかしいです!!さっきは魔神が出たのに…これって!?」
「カラーウルフ!!お願い!!???」
サキノ、そしてテンテンもそして俺の魔神具の返答も感じられない。
そして聞こえる奴の声。
『クククッ…無駄だ………無駄なんだよ…俺様の『虎監獄』の中ではどんな力も『無効化』される……さあ……絶望の中…………泣き叫ぶがいい…あーっはっはっはーーーーー!!!』
「くそっ!?もう一度……転……あ……あれっ!?」
俺の視界がブレる。
そして天の声を思い出す。
(何度も転地を繰り返したら……………)
(くっ………こんな時に………………)
俺たちは絶対絶命のピンチを迎えようとしていたんだ。
奴の笑い声が鳴り響く中。
俺の脳裏に亀山が浮かんだんだ。
(亀……山…………………………………。)
◇
◇
◇
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