最終章邪馬国編シーン24
狸の居城といった城の門がこの街の最奥に見える。
「あそこが狸の城か……お前の仲間達が捕らえられているんだな?」
「そうなんだ……そして僕はあの城からなんとか逃げてきたって訳さ。」
兎の獣人『誕兎』は頷き、こたえる。
辺りを見回すも確かに獣人ばかりな気がする。
やたらと尻尾が隠せていない獣人ばかりが町中を歩いていたんだ。
「さて……どうやってあの城に潜入するかだが。」
すると一歩前に出る姿が。
「サキノ!?どうした!?」
「クロノ……彼女は大好きなおじいちゃんを失って……そして仲間達だって捕まってるの……私はそんな彼女を放っておけないの。」
「ああ……確かに……そうだよな。」
そう……サキノと出会った時も同じような事が起きたんだったよな。
俺はサキノの思いを深く受け取った。
だがここからどうやって行くのが一番いいのか。
「サキノ!クロノさん!待って!もちろん私も一緒だしここは正面からいっちゃおっか!?」
そう言ってきたテンテン。
彼女の含み笑いに俺達は作戦を立てることにした。
◇
◇
◇
正面からだけでは万が一の防御策を立てられてはどうしようもない……そして敵は狸の獣人。
どんな策を立ててくるかは分からない。
そんな相手には正面からだけではやはり不安だった。
そして俺達……いや……城の関係者であるテンテンの計画を実行する事になったんだ。
◇
数分後。
城の前に立っているのは女装をした俺だった。
そしてどうしてもと俺の使用人として立っている亀山と変装した兎の獣人誕兎の二人だ。
「こ……こんにちは……お城に用があって……。」
「なんだお前は!?女か?何用で城にきたのだ?」
俺の言葉にそう返す狸のしっぽが隠しきれない兵士達。
「あ……えっと……王様へ……お目通りを。」
「なんだ女?なんの用なのかを告げよ。」
一人の兵士がじっと俺を見ている。
しかもこの兵士の目が今の俺には怖く感じる。
男に迫られる女性の気持ちがこの時…実感出来た気がしていたんだ…それにより先程の作戦で言おうとしていた言葉をこの時すっかり忘れてしまったんだ。
「はい!!お嬢様は緊張してます…それでここ来たのは王様へ面白いものを持ってきましたのでお目通りをと思いここへ来ました。」
俺の代わりにそう言ってくれた亀山。
「ほお……ならば……ここは女のみ通す事を許可しようではないか。」
そういい亀山を押していく兵士達。
「くっ……分かりました……ここは僕以外は女性ですので彼女達の安全を第一優先でお願いします。」
亀山がそう言葉を残し兵士達に押され門外へと追われたんだ。
バタンっとしまる城門。
「亀山…………………くっ。」
「しっ……クロノ…………ここは我慢しなきゃ。」
俺にそう言ったのはサキノだった。
「いきましょう……クロノさん。」
テンテンの声の元……俺達は先へと向かったんだ。
◇
兵士達に案内されながらも俺達はこの城の狸の王の元へと向かう。
やがて薄暗い廊下へと入っていく。
どう見ても怪しくなっていく城の中の雰囲気。
すると俺達の前を歩く兵士達の足が止まる。
続けて一人の男は眼前の扉の鍵を開け始める。
格子状のその扉を開いていくと。
そこに居たのは誕兎の仲間達であろう獣人の女の子達の姿だった。
次の瞬間兵士は口を開く。
「おらっ!!入れ!!???」
俺達は一つの部屋の中に押し込まれる。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
俺にサキノ、テンテンに誕兎の四人は牢の中に入れられてしまう。
「何を!?」
俺がそう叫ぶ。
ガシャりと格子に鍵をかけ、ニヤリと笑みを浮かべる兵士。
すると。
突然ぼわーーーーーーーーーーーーーーんっと兵士は煙に包まれていく。
そしてそこから現れたのはなんと。
巨大な狸だったんだ。
『ククク………貴様ら………よくぞワシの城にきたのおお。』
「えっ!?」
「我輩がこの城の王『鉞狸』である……貴様らが、この町に入った時からおかしな力を感じてな、怪しんみ……貴様らの行動を監視しておったのだ……そしてこうしてホイホイと着いてきたお前達を捉えたという事だ。」
不快すぎるこの大タヌキ。
すると誕兎が叫ぶ。
『!!!!?僕のおじいちゃんにあんな酷い事して僕の仲間達もこの城に閉じ込めたんだろ!?酷いぞ!?』
泣き叫ぶ誕兎。
「誕兎ちゃん!?」
「誕兎ちゃんなの!?」
数名の声が聞こえる。
「ええっ!?みんな!?」
泣き叫ぶ誕兎の声に仲間達の声が聞こえる。
すると正面の牢からこちらに声を上げていた獣人達の姿が見える。
そして『鉞狸』はゲスい表情を見せ……告げる。
『お前達はもう……この『牢』から逃れる事は出来ぬ……逃れたければ…このワシに泣き叫び懇願しろ。』
そういった鉞狸は歩き出す。
その笑い声だけがこの地下牢に響き渡ったんだ。
◇
◇
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