最終章邪馬国編シーン22
「僕は兎の獣人『誕兎』っていいます!」
見るからに確かに兎の獣人だった…この人物。
その姿は金髪ロングヘアに長いうさぎの耳を頭につけ、彼女の衣装は赤っぽい着物を着ているというなんとも言い難い姿をしている。
和洋のアンバランス差はあるが可愛らしい……そして性格は素直さを真っ直ぐ地で行く様に見える。
「そうか……ところで、どうして誕兎は、この天空の里に迷い込んだのじゃ?」
「うん……さっき僕は足柄山から逃げてきたって言ったんたけど……うん………」
表情を暗く陰っていく彼女。
「天狗様…足柄山に棲む……金龍って人知っていますか?」
「金龍……ああ……少しは聞いておる?」
天の返答に彼女は続けたんだ。
◇
さっきも話した通り……僕のいた町にも金龍の声がかかりました。
そして選りすぐりの町の強者達は金龍の手によって連れ去られて行きました。
実は僕は両親が早くに亡くなっていて育てられたおじいちゃんがいたんだ。
両親を早くに亡くした僕の事をずっと父親のように育ててくれたおじいちゃん。
そんなおじいちゃんと仲良く暮らしていたある時。
僕が野いちごを詰みに山に行っていた時なんだけど。
◇
「うわあああ!今日はこんなに沢山とれたなあ……おじいちゃんも喜んでくれるかなあ。」
僕は気分よく家に帰っていたんだ。
すると村の入口に入った時。
村の様子に違和感を覚えたのです。
いつもは賑やかな笑い声が絶えない村の中。
シンっと静まり返っていたんだ。
僕が一歩足を踏み入れたその時。
視界の先には、なんと…僕のおじいちゃんが倒れていたんだ。
「おじいちゃん!?」
僕は叫びおじいちゃんの元に走っていく。
おじいちゃんをだき抱えた僕。
僕の腕の中には血だらけで冷たくなっていたおじいちゃんがいたんだ。
◇
「おじいちゃーーーーーーーーーーんっ!?」
僕は涙が止まらなかったの。
僕が泣きじゃくりながら他の村の人達に目を向けたんだ。
村のアチコチが荒らされ壊されてそして所々に血の海が広がっていたんだ。
その光景に身体を震わせていると。
村の奥の方から声が野太い声が聞こえてきたの。
「おいっ!?さっさとこい!?」
その声の方に目を向けると数人の屈強な男達が僕の友達達が男達に捕まり歩かされていたんだ。
僕はおじいちゃんをその手に涙を流しながら震えてみていた。
「おおっ!?まだこの村にいい女がいたのかあ?」
そういった男は目の周りが黒く太いシッポを着けた姿。
それは……狸の獣人だろう。
狸の獣人は僕を見ながらニヤニヤしていると。
「おう!!こいつも連れていくぞ!?」
「「はっ!!」」
その狸の獣人はこの男達のリーダーなのだろうか……手下に僕を捕らえろと命じると、僕はあっという間に捕まってしまったの。
連れていかれそうな僕の目の前に倒れているおじいちゃん。
「ククク……もしかしてお前はこのじいさんの孫なのか!?」
「そう!!それがどうしたっていうの!?」
するとニヤニヤし始める狸の獣人。
「いいか!?ワシらのバックにはあの『金龍』様がおられるのだ……ワシらに逆らうというのは金龍様に逆らうという事だ……このジジイはな……この村に来て女と食料を出せといったワシに逆らってきてなあ……なめた態度をとってきたんでな…見せつけとして痛めつけたらポックリいっちまったという訳だ。」
僕は悔しくて悔しくて震えていた。
そして力なき僕達は呆気なく捕まり…狸の居城という城に捕らえられてしまったの。
僕含め村の女子は十人。
ある時…僕達の中で天狗様の事を知っていた子がいてあなたに会う事ができたら仲間の皆をもしかしたら助けて貰えるかもしれないって。
僕達はなんとか狸達の隙をついて僕だけがこうして逃げ延びる事が出来たんです。
◇
「そうして長い道のりでしたけど良く村から出歩いていて村の外を一番知ってる僕が皆の代表としてこうしてここまできたんです。」
すると兎の獣人はがばっと頭を深々と下げる。
「どうか……どうか……無理難題を言っている事は承知でお願いしたいんです!」
兎の獣人は涙をこぼし、そう告げたんだ。
「偶然見ていた子から聞いた話では狸は僕に『変化』して僕のおじいちゃんを…騙して…痛めつけたって聞きました!!僕の…おじいちゃんにそんな酷い事…するなんて……僕の……おじいちゃんを返してよ!!」
そう叫んだ誕兎。
彼女の言葉に誰しもがそいつを許せないだろう。
「うっ!!グスッ…でも……狸の背後にはあの恐ろしい金龍がいます……無理にとは……言えませんけど……もし……もしも……僕のお願いを聞いてくれるのなら……どうか……どうか……お願いします!!」
すると天は俺の顔を見つめる。
俺は頷き応える。
「ああ…もちろんだ。」
天は笑みを浮かべ口を開く。
「誕兎よ…もう大丈夫だ……ワシらに任せるが良い。」
誕兎は頭を上げ長い耳を、ぴょこんと持ち上げる。
そして誕兎は号泣したんだ。
◇
◇
◇
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